今回は短めになります
クーラーで涼しくなっているのに「暑いでござるな」と言いながら、何の躊躇いも無く服を脱ぎ捨てようとする忍野さんを止めていると自宅のインターホンが鳴った。
特に宅配などは頼んでいないので、来客の可能性が高いだろう。
「ちょっと先生は応対してきますから、忍野さんは服を脱がないでくださいね」
忍野さんにそう言い聞かせてから自宅の玄関にまで移動した私は、玄関の扉を開く。
「よお、久しぶりだな剣心。これは土産の水羊羹な。好きだったろ水羊羹」
片手に持つ紙袋を指差して玄関前に立っていた男性は、歳の離れた私の友人の1人である分倍河原仁さんだった。
どうやら私が自宅に帰ったことを燈矢くん経由で聞いて、手土産を用意して会いに来たらしい。
「お久しぶりですね仁さん。水羊羹をありがとうございます。玄関は暑いですから中に入ってください。今は教え子だった子が居間に居るので、来客用の部屋が良いでしょうか」
手土産として持ってきてくれた良いところの水羊羹が入った紙袋を仁さんから受け取りながら、玄関から自宅内に招き入れると、来客用の部屋が良いかを仁さんに聞いてみることにする。
「剣心の教え子がどんな子か見てみたいから居間で良いぜ」
親指を立ててグッドサインを見せてきた仁さんは、テンションが高い。
「クーラーが効いているのに服を脱ぎ捨てようとする子で良ければ、見てもらっても構いませんが」
「教え子って女子?」
「女子ですね」
「やっぱり来客用の部屋にしとくぜ!相変わらず変わった子に好かれてるな剣心!」
再びグッドサインを見せてきた仁さんのテンションが高いことは変わっていなかったが、若干苦笑いしていたりもした。
「そう言う仁さんも、付き合っている冬美さん以外の女性の裸を、絶対に見ようとしないところは変わっていないみたいですね」
「こんな俺が良いって言ってくれた冬美ちゃんを裏切る訳にはいかねぇからな」
2年前、轟冬美さんが20歳になった時、仁さんから告白して付き合うようになった2人。
冬美さんの父親であるエンデヴァーさんこと轟炎司さんには、事前に話を通してから告白した為、特に家族関係で問題が起こることもなかったらしい。
恋人関係も良好で、将来的には冬美さんとの結婚も考えている仁さんは、とても幸せそうだ。
そんな分倍河原仁さんと私が初めて出会ったのは、もう15年前にもなる。
15年前、近道でもしようと考えていたのか車道に飛び出そうとする男性を私が止めた時、止められたことに逆上した男性が個性を使って私に攻撃しようとしてきた。
ちょうど車道をバイクで通っていた仁さんがそれを見て、慌ててバイクを止めて私を助けようとしてくれたのが、私と仁さんの初対面。
まあ、相手が大人だろうと11歳だった頃の私で対処が可能だったので、そのことに仁さんは驚いていたな。
車道に飛び出そうとしていた男性は、とある会社の役員だったようだが、子どもに対して個性を使用した攻撃を行ったことは明らかな犯罪で、犯罪者として捕まる男性。
捕まった男性は仁さんが勤めていた会社のお得意様の役員だったらしく、何も悪いことをしていないのに会社に居づらくなっていた仁さん。
そのせいか2回目に公園で出会った時の仁さんは明らかに精神的に疲れきっていた。
「誰かを助けようと思った俺は、悪いことをしたのかな」
公園のベンチに座って、そんなことを言いながら項垂れていた仁さん。
「貴方は何も悪いことをしていませんよ。私を助けようとしてくれてありがとうございます分倍河原仁さん。見て見ぬふりをする人が多い中で誰かを助けようとする人は立派な人だと私は思います」
「きみには俺の助けなんてなくても大丈夫だっただろ」
「貴方が私を助けようと思ってくれたその気持ちが、嬉しかったんですよ。だから今度は、私が貴方を助ける番です」
仁さんが現在の職場で働き続けるのは良くないと判断した私は、ヒーローだった両親の助けも借りて、再就職先を探すまでの間は、両親の元で住み込みで働いてもらうことになった。
それから家族で仁さんと一緒に生活することになり、しばらく共同生活を続けている内に打ち解けて、私と仁さんが互いに名前で呼ぶようになった頃に、仁さんの再就職先が決まる。
再就職先が決まる前の間に、公の場での個性使用許可を得る為の免許を手に入れていた仁さんは、個性である2倍を様々な場所で使えるようになっていた。
医療の現場で血液が足りない時に、患者を2倍で増やして、分身から輸血することも可能となる個性、2倍。
そんな2倍の個性が様々な場面で役立つ個性だった為、分倍河原さんは忙しく働くことになっていたようだ。
その後、燈矢くん関係でエンデヴァーさんと知り合っていた私を通じて、轟家と交流することになった仁さんは冬美さんと少しずつ親しくなっていったらしい。
ちなみに仁さんと冬美さんの2人が更に仲良くなっていった理由は、血が足りなくなっていた燈矢くんを仁さんが個性で助けたからだったな。
そんなことを思い出しながら客間に仁さんを案内した私は、客間のクーラーをつけておき「今、お茶を持ってきますね。冷たいお茶で良いなら麦茶と緑茶がありますが、どちらが良いですか?」と聞いておく。
「じゃあ麦茶で」
「麦茶ですね」
麦茶を用意する為、居間に戻るとソファーで寝ている忍野さんを発見。
「ふふっ、そんなところを引っ張っちゃ駄目でござるよ先生。もう少し右を引っ張っらないと駄目でござる」
なんて寝言を言いながら寝ている忍野さんの顔は笑顔だった。
楽しそうな忍野さんは、このまま寝かせておいても良さそうだ。
貰った水羊羹を冷蔵庫にしまった私は、クーラーで冷えた部屋で何もかけずに寝ている忍野さんにタオルケットをかけておき、麦茶をいれたコップに氷も入れて客間に持っていく。
「お待たせしました」
「おう、ありがとな」
客間の机に麦茶を置いておくと、直ぐに麦茶を飲み始めた仁さんは喉が渇いていたみたいだ。
「それで、今日のご用件は」
「実は来年、冬美ちゃんと結婚することが決まってな」
「おめでとうございます。結婚式をするなら是非とも呼んでもらいたいですね」
「勿論呼ぶさ。それで、その、結婚式での友人代表の言葉を剣心に頼みたいんだ」
「私に、ですか」
「俺の1番の友人が誰かなって考えたら、剣心しか居ないなって思ったんだ」
「そうですか、1番の友人とまで言ってくれてありがとうございます。友人代表となると責任重大ですね。何を言うか今から考えておきますよ」
「ああ、任せたぜ」
それからは仁さんと互いの近況を話すことになり、久しぶりの友人との会話は、とても話が弾んだ。
仁さんを玄関まで見送ってから居間に戻ると、まだ寝ていた忍野さんが「逃げるな。拙者を性的に興奮させた責任から逃げるなでござるよ」と寝言を言っていた。
忍野さんはどんな夢を見ているんだろうかとは思ったが、聞かない方が良さそうな気がするので、内容を聞くのは止めておこう。
忍野さんの最初の寝言の元ネタは鷹の爪団の吉田くんです
2回目の寝言は鬼滅の主人公の台詞が元ネタですが、さすがに性的に興奮させた責任から逃げるな、とは鬼滅の主人公は言っていません
そこは忍野さんのオリジナルですね
ちなみに分倍河原仁の額には傷が無く、自分を増やすことにも特にトラウマはありません
見たい番外編があれば選んでください
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志村菜奈世代に転生
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オールマイト世代に転生
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緑谷くん世代に転生
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最終話の続き