志村転弧:アナザー   作:如月SQ

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お久しぶりです
こっそり投稿


燈矢と転弧

 俺と轟……轟燈矢との出会いは、俺がまだ志村だった頃まで遡る。

 その頃俺は保護され……個性が暴走した末の()()で家族を()()()()()()()()()()として扱われていた。

 

 ……モンちゃんや華ちゃん、おじいちゃんにおばあちゃん、そして、お母さん。

 俺はみんなを壊そうとして壊した訳じゃない、確かにあの時はみんな嫌いだと思っていたし、生まれてきて一番痒かった。

 けど、死んじゃえば良いなんて、微塵も思ってもいなかった。

 

 だけど。

 だけどお父さんだけは。

 あの惨劇の中、全てが崩壊して、訳もわからず泣き喚いて助けを呼ぶ俺を拒絶したお父さんだけは。

 

『死ねェ!!!』

 

 自分の個性を朧気に理解した俺が、明確な殺意を持って触れた。

 そして壊した時に……俺は凄くスッキリしたんだ。

 途方もない快感を感じたんだ。

 そんな、まるでヴィランのような自分を、保護してくれた人達に伝える事が出来なかった。

 

 自分のそんな一面に気付きつつも、俺の胸に灯るのは捨てきれないヒーローへの憧れ。

 こんな俺を助けてくれた小さなヒーローみたいになりたいという、強い羨望。

 彼に、出久に、恥ずかしくないように生きたい。

 そんな思いで、俺は自分の破壊衝動を抑え込んでいた。

 

 それから俺は破壊衝動の昇華と、ヒーローになる為に、体を鍛え始めた。

 ただ、あまり自由時間は貰えなかった。

 個性があまりに危険過ぎるから、制御出来るまではと、学校には行かず、個人で勉強をする事になっていたから。

 それでも多少の自由時間、俺はまず走り込みを決行していた。

 先生役の人は最初は後ろをゆっくりと着いてきていたけど、ただランニングしてるだけとわかってからは帰る時間を指定するだけで頑張れ、と応援してくれるようになっていた。

 

 ……ヒーローになる努力を応援してくれることが、すごく、心強かった覚えがある。

 

 そんな日々を過ごしていたある日の事だ。

 ランニングコースになっていた瀬古杜岳……そこに通り掛かった時、焦げ臭さを感じたんだ。

 足を止めて何処からそれがきてるのか辺りを見回せば、山奥のほうで白煙が立ち上っているのが見えた。

 山火事だと判断して俺は……何故か山に突っ込んで行ったんだよな。

 

 子供が一人何の準備もなく山に突っ込んで山火事相手に何すんだって話だけど、当時の俺は気付けば走り出してたんだ。

 最低でも誰か大人に助けを呼ぶべきだったよなぁ。

 今思い出しても流石に無鉄砲過ぎたと思うけど……ま、若さ故の過ちって奴だな。

 焼死体が一人増えるだけの、最悪の愚行だった。

 

 ……けど……自惚れかもしれないけど、それが一人の迷い子を助ける事に繋がったんだと思う。

 そう思えば……これは俺のヒーローとしての第一歩でもあったのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハァッ……ハァッ……』

 

 俺がそこに辿り着いた時、既にいくつもの木々が燃え盛っていた。

 その中心にいたのは、白髪で蒼い炎を纏った、俺よりも幾分か年上の少年だった。

 何故か半裸で、何故か涙を流しながら、炎を滾らせていた。

 

『ッ……!なにッ……してんだよッ!』

 

 俺はそれを見て、外すなと強く言われていた手袋を脱ぎ捨てて、燃え盛る木の根元に手をついた。

 

ジュゥウウッ!

 

『ゥグッ……!』

 

 燃えていなくても、あまりにも高い温度に、触れた手が嫌な音をたてて焼ける。

 けど、同時に俺の個性が発動して、燃え盛る木はみるみるうちに崩れていく。

 俺は焼けた手のひらに涙目になりながらも、次の木を壊してしまおうと振り向いた。

 

『なッ……!何すんだ!邪魔すんじゃねぇよ!』

 

 その先にいた白髪の少年は、涙を流す少年は、俺に対して敵意を剥き出しにしてそう叫んできた。

 ……当時の轟は……轟燈矢は、その表情に怒りと焦燥を浮かべていた。

 後々になって聞けば一番余裕がない時で、精神的に限界だったって言ってたな。

 この時は自分に籠った熱と、明らかに今までとは違う炎を出した達成感と、それでも自分を見てくれないエンデヴァーへの怒りとで頭がぐちゃぐちゃになってて、俺が何をしたのかもちゃんとわかってなかったらしい。

 

 けどまぁ俺からしたら明らかにただの放火犯だからな、もう完全にヴィランだと思ってたよ。

 言ってる事も意味わかんねーし、熱いし暑いし危ないしで……。

 

『五月蝿いバカ!』

 

 俺も正直良くわからなくなってて、気付けば轟の事を殴ってた。

 

『うぐっ!?』

 

 後々思えば……久々に壊した快感でハイになって、熱に浮かされてたんだと思う。

 それでもまぁ、流石に轟を壊そうとまではしてなかったのだけは幸いだけど。

 

『てめぇ……何すんだよ!俺は!お父さんに認められなきゃいけねェんだよ!』

 

 けどまぁ、俺は鍛え始めただけの付け焼き刃なヒョロヒョロの子供、対して轟は小柄なもののNo.2ヒーローに直々に鍛えられ、自発的に訓練も積んできたエリート。

 体勢を立て直した轟に、すぐに殴り飛ばされちまった。

 

『ギャッ!』

 

『邪魔すんなら!お前も燃やしてやる!』

 

『ッ……!わわわわわ……!』

 

 ゴロゴロと転がる俺に対して、蒼い炎で追撃までしやがる轟。

 俺は俺で必死に炎を避けながらも、一応は当初の目的の消火の為に木の根元に触れて崩壊させてたんだが……。

 

グラッ

 

『ッ……!っぶねェッ!この野郎!』

 

 そんな木の一つが、轟へ倒れていったのが切欠で、いよいよ轟の表情が怒りに染まり始めた。

 いや、ずっと怒ってたけどな?

 

 そんな蒼い炎を纏って睨み付けてくる轟に対して、俺は俺でもう、暑くて熱くて痛くて痒くて……まぁ、プッツンきちまったんだよな。

 気付けば俺も轟を睨み返してた。

 ……正直そん時にはもう、互いに正気じゃなかったと思う。

 もう完全に熱に浮かされた状態だった。

 そして、俺と轟は衝突した。

 

『いい加減にしろ!この炎ヤロー!』

 

『お前こそ邪魔すんじゃねぇ!俺は、お父さんに見て貰うんだ!』

 

『お父さんお父さんってうるさいんだよ!』

 

 身体能力には轟に分があったがまぁ……個性の凶悪さで轟にすがり付いて……。

 辺りを燃やし尽くして崩壊させて……最終的には殴りあってとっくみあいになった後……暑さに限界がきて互いに気絶しちまったんだよな。

 

 そんで目を覚ました後、気付けば病院にいた俺達は、大人達にこっぴどく怒られる事になった。

 それに加えて個性を無断使用した事で、俺の手には自分の意志では外せないグローブをつける事になっちまった。

 まぁ……瀬古杜岳の一部がハゲ山になっちまった原因の一つである自覚はあるし……仕方ない事だと納得するしかなかった。

 

 ……この出会いがなければ今の俺達はなかったかもしれないから、まぁ……結果的には良かったんだと思う。

 それからなんとなく交流を続けていって気付けば……まぁ親友と呼べるような間柄になってた。

 

 それが、俺と轟との……腐れ縁の始まりだった。

 

「……人一人焼いて、よく焼き肉食えるな」

 

「むぐ……ごくん。ふぅ、ゴミを燃やしただけだろ。それより、そっち焼けてんぞ」

 

「っと……まぁ、お前のお陰でうちの生徒は無事だった訳だし、礼としちゃなんだが、今日は奢ってやるよ」

 

「おっ、良いのか?すみませーん、特上ロース二人前ー」

 

「……加減は、しろよ……?」

 

「善処する。あぐ」

 

 ……はぁ、今月はもやしかもな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『へい先輩、助けにきたよ』

 

「……し……がら……」

 

 台に寄せられ、包帯でグルグル巻きにされた男から、掠れた声が漏れる。

 明らかに重傷な男へと、頭巾を被った男、死柄木はヘラヘラとした態度のまま、無遠慮に近付いていく。

 

『喋らなくていいよ。ま、先輩の仕事邪魔しちゃったみたいだし……これは詫びって事で』

 

 その火傷だらけの体を容易くひょいと持ち上げ、死柄木弔は笑う。

 

『にしても容赦ないね、蒼炎ヒーロー荼毘は……流石はNo.2の息子。災難だったね先輩?エンデヴァーすら先輩の啖呵には呆気に取られてたのにね』

 

 けらけらとくすくすと、何がおかしいのか肩を揺らす死柄木は、包帯だらけの男、ステインを抱えながら、車からゆったりとした足どりで降りてくる。

 ハイウェイのど真ん中、壁にぶつかって黒煙を上げている車両から出てきた死柄木は、それと同時に手から伸ばしていた黒鞭を解除する。

 

グシャッ、グシャッ

 

 同時に何かが落下した音と共に、道路上に赤の花が咲いた。

 それは、黒鞭によって電灯に吊り下げられていた、ステインを護送していた警察官とヒーローの変わり果てた姿だった……。

 それに僅かに見向きする事なく、死柄木は悠々と歩を進めた。

 

『ま、暫くは療養しててよ先輩、腕の良いドクターを紹介してあげるからさ』

 

 進む先には黒い空間、黒霧の開いたワープゲートだ。

 躊躇いなく進んでいく死柄木は、ふと、思い出した事を言葉にする。

 

『そうだ黒霧、ほうれんそう、ちゃんと頼むね』

 

 それは、ステインと協力関係になった事をちゃんと伝えなかった事等から、緑谷デクとして非常に動き辛かった事への苦言だったが……果たして黒霧にちゃんと伝わったかは定かではない。

 

『それじゃ先輩、今後とも宜しく』

 

 そう軽い態度でケラケラと笑う死柄木は、闇に包まれて消えていく。

 後に残ったのは無惨な死体と、黒煙をあげる移送車だけだった




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