ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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騒動 5

 にしても、教師を辞めたねぇ……

 そこまで後悔するほとか?

 と思わんでもない。

 確かに、自分の教え子が冤罪かけられて停学。

 そのまま学校を去るってのは。

 これ、なかなかショッキングな出来事かもしれない。

 しかしだ。

 言うて、ただの一生徒である。

 少々入れ込み過ぎでは?

 

 でもまぁ、俺ってチート持ちだし。

 国の損失ってのも、あながち間違いでは無いのか。

 天才ではあった。

 それこそ、上手いこと有効に活かせさえすれば。

 この国を大きく発展させられた程度には。

 

 その教師には見る目があったって事だ。

 庶民相手に。

 一度戦ってるとはいえ、あれは入試での話だしな。

 初めから本気って訳でも無いだろう。

 それなのに。

 偏見なく判断するってのは。

 そう誰にでも出来る事ではないと思う。

 

 惜しむらくは、見抜けたのは才能だけって所だろうか。

 入試こそ真面目に挑んだものの。

 学園に入学した段階で違和感に気づき。

 すでにやる気を失っていたのだ。

 と言うか、学園に入学したのだって前世での常識を引きずってたのが原因で。

 大して熱意があった訳でもない。

 実際問題として、俺が学園を卒業したところで。

 騎士団の下っ端とかやって、ほどほどで暮らしてた可能性が高いし。

 国の損失なんて事はないのだが。

 そう分かれば辞めるほどでもないと思えたはず。

 

 まぁ、入学して数ヶ月しか経ってないタイミングだったし。

 しかも生徒は大勢居るのだ。

 その短期間で人の本質を見抜けってのは酷だな。

 

「ロルフくんは、今何をしてるんですか?」

「ん、俺?」

「はい、先生にも凄い評価されたし。だから、気になって」

「普通に冒険者やってるよ」

「……え」

「あれ、ノアに聞かなかった?」

「そういえば、ノアさん自分の師匠だって」

「そう言う事。ほら」

 

 冒険者カードを渡す。

 

「Dランク……」

 

 それをまじまじと見つめる。

 

「ごめんなさい」

 

 突然謝られた。

 え?

 何?

 どういう事??

 

「私のせいで」

 

 ……あぁ、なるほど。

 言わんとする所はなんとなく理解出来た。

 端的に言えば。

 俺が、冒険者なんてやってるのが情けなく映ったらしい。

 失礼な話だ。

 まぁ、これと言った反論はないのだが。

 

 人に自慢できるような生活はしてないしな。

 ノアのように、冒険者に真面目に打ち込んで上位でバリバリやってるならともかく。

 俺の今の生活を客観的にみれば。

 最低限の仕事だけして。

 いつまでもDランクで足踏みをしているのだ。

 俺としては満足なんだが。

 学園に通ってた人間が退学して今の生活をってなったら、転落人生も良いところ。

 特に彼女は貴族だし。

 そういう人間から見ればこんな捉え方にもなるか。

 俺の事買ってくれてたみたいだし。

 

 別に嫌がらせに関わってた相手じゃない。

 無いよね?

 何も覚えてないけど、これで関わってたらサイコパスもいい所である。

 だから謝罪なんて不要。

 そもそも、冤罪ふっかけてきた奴にも感謝してるぐらいだし。

 顔すら知らないが。

 辞めるきっかけがなかった俺の背中を押してくれただけなのだから。

 振り返って見ても後悔なんて全くない。

 だからそんな悲しそうな顔をするな。

 

 今にも泣きそう。

 流石に、泣かれるのはご勘弁。

 

「いや、君には関係のない話だろ?」

「そんな事、無いです」

「ん?」

「私、当時はクラス委員長だったから」

 

 はぇ〜。

 そんなのあったのか、全く記憶にない。

 責任感の強いこと。

 

 教師やってるならピッタリか。

 生きにくそうだが。

 人間としてはいい人だと思う。

 

「学費だって、親が必死に集めてくれたんですよね?」

 

 あぁ、それもあるのか。

 庶民だってのはみんな知ってたからな。

 普通に考えればそう。

 簡単に辞めれるような立場ではない。

 だから、余計に。

 いい娘だから、同情してしまったのか。

 

「親には頼ってないよ」

「え!?」

「学費は自分で稼いだし」

「それなら、尚更です」

 

 銀をミスリルに。

 これ売って稼いだからね。

 結構余裕ではあった。

 まぁ、面倒なことになったんだが。

 2度とやらない。

 

 これを聞いても、それなら良かったとはならないらしい。

 むしろ、ますます責任を感じてる様子。

 うん、これはね。

 ミスったわ。

 俺が悪かったかもしれない。

 常識的に考えて。

 親に払ってもらうより自分で払ってる方が苦労感増してる気がする。

 

「私に出来ることならなんでも言ってください」

「いや」

「仕事先とか、ロルフくんならいっぱい紹介できます」

「……」

「それこそノアさんと一緒に学園で働いたりとか」

 

 勧誘されるのは二度目である。

 こんな短期間に二度も学園進められるDランク冒険者とか。

 前代未聞ではなかろうか。

 前回と違うのは、ちょっと可能性ありそうなところ。

 十年戦士か。

 この話、ガチでやるってなればノアも協力してくれるだろうし。

 押し込むことも不可能ではなさそう。

 まぁ、やらないんだけどね。

 

 にしても、“なんでも”ね。

 そんなこと女性が言っていいのだろうか。

 自然と。

 胸に視線が引き寄せられる。

 

 見事なものだ。

 話に力がこもったせいだろうか。

 身を乗り出している。

 そのせいで机に実が乗って。

 羨ましい。

 おい、机さんや。

 そこ変われよ。

 

「なんでもって本当に?」

「はい、私に出来る範囲なら。それが贖罪だと思うので」

「じゃあたとえば……

 

「2人っきりはダメです!」

 

 エスパーかよ。

 俺の言葉に割り込むようにノアが言った。

 冗談だって。

 確かにそんなような事を言おうとはしたけど。

 本気じゃない。

 向こうもそんなつもりじゃないだろうし。

 断られるだけだ。

 

 空気が湿っぽくなりすぎたから、ちょっとしたジョークである。

 軽蔑される気もするが。

 別に、クラスメイトとは言っても今日会うまで忘れてた相手だからね。

 真剣に心配してくれてた彼女には悪いが。

 正味、大した思い入れもないのだ。

 それに。

 こんな相手の方が、馬鹿馬鹿しくて心配する気もなくなるだろう?

 

「ど、どうしてもって言うなら」

 

 言うなら?

 

「3人で」

 

「……へ?」

「あら」

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