ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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温泉 5

 今更だけど、こっちも雪降ってたんだなと。

 転移したのが森の中だったから。

 木々に遮られていたせいか、直ぐには気が付かなかった。

 ま、おかしくはない。

 山ってほどでは無いけど。

 少なくとも、ウーヌの街よりは標高も高いからね。

 気温も大抵の場合低いし。

 

 向こうで降ってたのだ。

 そりゃ、こっちでも降ってますよねって。

 当然の話だ。

 雪国ってほどではなかったと思うが。

 それでも年間の降雪量は多いのだろう。

 あくまで、比べればって話だけど。

 

 門をくぐり街の中に入る。

 あちこちから煙が上がっているのが見える。

 別に火事とかではない。

 いや、多分だけど。

 もしかしたら、あれのうち一個は実は火事でしたなんて可能性もあるが。

 その可能性は一旦放置。

 あれは湯気なのだ。

 来る途中に見かけはしなかったが。

 確か、外の森の中にもいくつかあったはず。

 源泉。

 あそこから温泉が噴き出しているのだ。

 

 硫黄の匂いとでも言えばいいのか、卵を茹でたときに感じるそれ。

 温泉地に行くと毎回鼻をつく。

 臭いんだけど不快ではない匂い。

 ただ、ここはそれとは違う。

 と言うか、こっちの世界に来てから硫黄の香りのする温泉は見た事ないかもしれない。

 でも、独特な匂いがすることに変わりはない。

 結局は同じ地下からの噴出物だからね。

 おそらく、この世界特有の鉱物の影響だろう。

 詳しくないから種類なんかは分からんが。

 ミスリル的な?

 もっと価値は低そうだけど。

 それ系のファンタジー金属が地下に眠っているのだろう。

 魔力なんてものがあるからね。

 魚や動物が変質している様に、色々変化してくるのだ。

 

 不思議なことに、それでも落ち着くことに変わりはない。

 前世で温泉街に行った時の気分。

 それと似た様なものを感じられるのだ。

 理由はよく分からない。

 単に温泉に対するイメージの問題なのか。

 もしくは、異世界に来てからも何度も温泉に来てるからなのか。

 この匂いと温泉でのリラックス効果が条件付けされ、言わばパブロフの犬の様な状態になってる的な?

 後は、この体が異世界生まれだからって説。

 元々持っている性質。

 そう遺伝子に書き込まれてるという可能性も、なくはない。

 

 まぁ、正直そこら辺はどうでもいい。

 理由が分かった所で、ね。

 だから何以外の感想が浮かばない自信がある。

 重要なのは異世界でも変わらず温泉を楽しめてるってこと。

 それだけだ。

 

 この街に来たのもざっと一年振り。

 去年の冬以来だ。

 別にそれ以外の季節に来てもいいんだけど。

 温泉と言えば冬というイメージ。

 これが強い。

 それに、雪が降ってないと普通に馬車で来れちゃうからね。

 問題ないと思うかもしれないが。

 ここ、馬車でくるにはちょっと遠いのだ。

 別に転移で来てもいいんだけど。

 今回みたいに仕方なく転移で来るのとじゃ意味が違うっていうか。

 まぁ、個人的なこだわりである。

 そこに意味なんてない。

 実際、港町には最近よく転移で行っちゃってるしね。

 本当にただの感覚的な話だ。

 

 久々の温泉街である。

 一年程度で街並みが大きく変わるはずもなく。

 よく見慣れた光景。

 ただ、ここは港町やウーヌと比べると少し違う所がある。

 街並みが違うと言えばそこまでだが。

 その理由。

 ここ、実はしっかり観光地なのだ。

 

 異世界では珍しく、門を入ってすぐの所には土産物屋なんかも並んでいる。

 まぁ、大規模ではないけど。

 そもそも、交通の安定した前世と比べるのは間違いな気もするが。

 観光っていう産業自体の規模が桁違いだし。

 でも、テンションが上がることに変わりはない。

 これでこそ観光地って感じで。

 色々と散策したい気分。

 が、その前にひとまず宿を取ってからだな。

 

 普段の旅先では大抵娼館に泊まってるんだけど。

 ここでそれはないでしょって事で。

 せっかく温泉入りに来てるのに、温泉宿に泊まらない理由がない。

 お風呂で済ますのはナンセンスもいい所。

 まぁ、もしかしたら源泉掛け流しなんて変なコンセプトのお店もあるのかもしれないけど。

 どちらにしてもだ。

 それ、どう考えても温泉の方に集中出来ないし。

 別に女の子を楽しみに来てる訳じゃないからね。

 目的がブレるってものだ。

 

 やっぱり、温泉を楽しむならそれに特化しないとだよね。

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