ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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清算 3

 さて、隊長相手に責任とるなんて啖呵切ったは良いものの。

 どうしたものか。

 

 出頭でもすれば良いんか?

 お前らが探してる人間、拷問中に間違えて殺しちゃったんだよねとでも言って。

 で、捕まるわけにもいかないし。

 そこから逃走すると。

 

 ……意味が分からん。

 

 自首すればそうなることぐらい目に見えているのに。

 自分からゲロって逃走。

 冷静に、行動として破綻してる気がする。

 

 何か隠したいことはあると言ってるような物では?

 結構な確率で裏を疑われる予感。

 そのための身代わり。

 例えば、ここの隊自体が今回の暴動の黒幕と繋がっていて。

 犯人を庇うために拷問中に事故で殺した事にして何処かへ逃したとか。

 そう捉えられてもおかしくはない気もする。

 

 要は、拷問官は生贄なのだ。

 自首しないと殺される。

 けど、自首してもどうせ殺されるから。

 こんな意味不明な言動になった。

 無理やりだが。

 こうとも考えられてしまう。

 

 少し、考えすぎだろうか?

 しかし、拷問官やらここの詰所の兵士がどう疑われても関係ないが。

 俺の方まで容疑がかかるとなると。

 話が変わってくる。

 これ以上の面倒ごとは勘弁してほしい。

 ここまでやったのだ。

 死を偽装して。

 拷問官を乗っ取って。

 せめて、俺自身への容疑ははまっさらにしてしまいたい所。

 

 その上で。

 今回の諸々を解消して、疑いが晴れたところに。

 姿を表す予定なのだ。

 余計な疑惑が増えるのは困る。

 

 逆に、実は生きてましたとするのはどうだろうか?

 そうすればこのまま助けてもらえる気も……

 いや、既に手遅れか。

 さっき隊長が誤魔化したのは、それこそ手柄を焦ったとか評価を独占したかったとかどうとでも言い訳出来る。

 殺したって報告も別に大勢が聞いていた訳でもないし。

 そもそも、勘違いだったという線も。

 まぁ苦しいが通らなくはない。

 拷問のせいで仮死状態に陥っていたけど、実は生きてましたなんてのも可能っちゃ可能。

 ただ、死体をそのまま放置してしまっているのが。

 

 どれだけの人数が俺の死体を目撃したのか。

 全く把握出来ていない。

 新人くんは部屋に入ってないし、俺が把握してる限りは0人。

 あの辺りはあまり兵士はいなさそうだったし。

 誰も見てない説もある。

 

 でも、それに賭けるのは博打が過ぎる。

 そもそも。

 冤罪ふっかけられてここ連れてこられた時点で、かなりの不運。

 この確率を考えてみろ。

 そのうっすいところ引いて今があるのだ。

 今の俺なら、目撃者がいましたなんて予想出来る不運。

 引き当てたとて、正直何の驚きも無い。

 

 拷問官はどうするのか問題もあるし。

 俺の体は一つしかないのだ。

 目撃者おらず、うまく誤魔化して生きてることにしたとして。

 彼が突然消えるのはいかがなものか。

 

 ついさっき隊長に自首して来たばかりなのに……

 いや、おかしくはないのか?

 隊長が、身内に甘いこと知っていれば。

 許される前提。

 逆に本部に知られれば罰則は免れないだろうし。

 それを嫌っての逃走。

 

 ……分からん。

 普段、楽な薬草採取だけこなして昼間っから飲んだくれてるせいだろうか。

 脳を使っていないのだ。

 頭が全然回らない。

 

 一応、分身魔法なんてウルトラcもありはするが。

 同上の理由でマルチタスクは無謀。

 この魔法、分身に裏切られたり本体乗っ取られる心配がない代わりに全部マニュアル操作って言う。

 変身魔法と同じで、魔法の腕前以外に色々と要求されるタイプなのだ。

 チートの癖にところどころで使い勝手が悪い。

 

 このまま進むしかない……、か。

 

 誰も言葉を発しない。

 隊長室。

 沈黙が続く。

 

 気まずい。

 でも、その時間はあまり長くは続かなかった。

 幸運と言っていいのか。

 不運なのか。

 

 と言うのも、ほぼ時間を置かずに例の一団が戻ってきたらしい。

 こんなに早く戻ってくるとは思っていなかったのだろう。

 その知らせを聞き。

 特に誰かが口を開いたってわけでもなく、にわかに室内が騒がしくなる。

 隊長なんて側から見て分かるぐらい顔色が悪い。

 

 そしてその騒ぎが収まる前に隊長室へ乗り込んで来た。

 流れで俺も同席。

 訝しげな視線を向けられたが。

 無視だ無視。

 どうせ自白するのだ、ここで変に気を遣っても仕方ない。

 

 何やら書類を持って来た様子。

 さっきとは違う。

 お願いベースではなく、もっと強制力のあるやつだ。

 詰所への立ち入り検査。

 ゴリゴリに疑惑を向けられてるのだろう。

 ってか。

 詰所を出て戻ってきたぐらいの時間しか経ってないが。

 本部に戻ってたにしては、早すぎる。

 元々準備してたってことか?

 立ち入りを渋られる可能性はそりゃあるだろうけど。

 可能性あるからって。

 そのために、事前に書類書かせたのか。

 

 お前、学園の教師だよな?

 どんだけ影響力あるねん。

 

 隊長も初めはどうにか言い訳しようとしていたっぽいが。

 書類を見て。

 数行読んだ段階で早々に諦めたらしい。

 

 俺に視線を向ける。

 今にも泣き出しそう。

 いや、大の大人がこんなとこで泣くなや。

 まぁ、気持ちは分からんでもないけど。

 ここで裏切ったりはしないって。

 どうせ逃げるがな。

 

 ……あれ?

 

 俺が逃げ出したら、結局その責任追及されて隊長はお先真っ暗な様な気も。

 ま、まぁ。

 先のことは自分で頑張って貰うって事で。

 

 ここで自白しても良かったのだが。

 向こうの要求は俺の身柄。

 変に犯人を庇ってると思われて話を拗れさせる意味もない。

 俺に容疑が来ても困るしな。

 会わせてやると。

 彼らを連れ、この部屋を出た。

 

 俺を見張りたいのか、最後まで保身をしたいのか。

 そこは知らないが。

 軽くよろめきながらも。

 隊長もついてくるつもりらしい。

 

 詰所の内部ほぼ知らない。

 当然である。

 今日初めてきたのだ。

 しかし、流石に少し前に新人くんに案内してもらったばかり。

 拷問部屋への経路だけなら。

 まだ、ギリ記憶にある。

 

 何となく、フィオナのことを盗み見た。

 本部の連中を連れていつつも。

 国の思惑ってより、個人的なものが強いのは間違いない。

 案内に初めは表情が緩んでいた様子。

 何十年も前。

 一瞬同じクラスだっただけなのに。

 やたら心配してくれるな。

 しかし、進むにつれ表情が曇っていく。

 

 多分、ここがどんな場所か当たりがついているのだろう。

 拷問による捜査は合法ではない。

 でも、予算は上から出てるだろうし。

 大体の詰所が採用している。

 この法律はほぼ形骸化していて、ただの建前でしかない。

 

 ここまでの強権を振るえるのだ。

 ただ貴族ってだけではなく、兵組織にもある程度は食い込んではず。

 だから、その現状も把握自体はしているのだろう。

 それが急いだ理由説もある。

 知らなければ、直前まで一緒にいたのだ。

 自分の証言さえあれば十分。

 そう思って、わざわざここまでする必要も皆無。

 

 実際、審判の場においてはその方法が間違いって事も無いだろうし。

 それ以前のことを心配していた可能性が高い。

 拷問による自白の強要。

 証言自体は権力で覆せても、傷まで治るとは限らない。

 

 記憶を頼りに拷問部屋の前へ到着。

 俺を押し除けるように、彼女が真っ先に足を踏み入れる。

 駆け足気味。

 そのまま。

 周りの兵士を入れずにドアを閉めてしまった。

 

 部屋の中には彼女が1人。

 貴族がそんなことしていいんか?

 容疑者は死んでるけど、それは当然知りようがない訳で。

 客観的に。

 犯罪者と2人っきりなのだが……

 

 周りは驚きつつも、特に行動はしない。

 逆らえないって感じか。

 心配しての行動すら許される立場にないと。

 本当に強権発動して連れて来たっぽいな。

 指揮系統が完全に死んでやがる。

 

 しかし、ここまで連れて来てしまったけど。

 どうしたものか。

 これ、このまま計画通り行けるのか?

 

 ……って言うか、あれ?

 

 これ、面倒事を自分で増やしてるだけだったり?

 こんなことしなくても。

 何もしなければ、ただ拷問されるふりして待ってれば。

 彼女が助けに来てくれた訳で……

 勝手に解決してくれてたんだよな、これって。

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