何やら話がありそうな様子。
用事もないのに先生の家に来たりしないだろうし。
いや、メスガキの場合。
ノア目当てとかそういう線もありえなくもないが。
それは邪推というものだ。
接した期間はそれほど長い訳ではないけど。
結構良い娘だったからね。
さっきの、間男という発言に言いたい事はありつつも。
ストーカーとか。
それこそ。
本人のいない間に自宅に侵入。
下着類を物色したりとか。
少なくとも、そういう事をする人間ではなさそう。
そもそも、生徒が学校の先生に恋するなんて。
青春の1ページみたいなものだからね。
こう言ったら怒るかもしれないが、ありふれた物だ。
極めて健全であり。
真っ当な思春期時代を過ごしていると言える。
このまま、外で話している方が不都合。
ここだと周囲の視線があるし。
メスガキ云々以前に、今はあまり話かけられたくないのだ。
仮に、門で待ち構えてたのがどこかの兵だったりしたらと思うと。
ちょっと恐ろしくなるレベル。
ノアも、今は生徒の手前抑えてる様だが。
声を掛けられた瞬間とか。
一瞬ではあったが、明らかに魔力が跳ね上がっていた。
危なっかしくて仕方がない。
とりあえず、一刻も早く家の中へ。
家主でもない俺が誘導するのもおかしな気もするけど。
人命がかかってるのだ。
多少のマナー違反は見逃してほしい。
後は、単純に。
学園の女子生徒と男性講師。
2人が学園外、それも自宅での密会ってのも外聞が悪いしね。
「外での立ち話も何だし……」
「え、何で先輩が」
「いいから。君も話があって来たんでしょ」
「……ま、まぁ。はい」
2人から訝しげな視線を受けつつ。
押し込む。
ただでさえ視線が冷たかったのに、さらにキツくなったような。
メスガキからも。
どちらかといえば、これは驚きの方が強そうだが。
似た様な視線を向けられる。
話があって来たってんだ。
ここが、誰の家かぐらい知ってるだろうし。
自宅も行き来する仲なのかって事か。
実態としては違うのだけど。
別に、勘違いされて困る事もない。
プラス材料を上げよう。
実は、メスガキと同じく俺も今日来たのが初めてなんだよね。
なんて変に希望持たせる意味もないしな。
勘違いしておいてくれ。
しかし、貴族街の家なだけある。
部屋自体が広いのはもちろんだけど。
内装も。
これ、家具とかも結構高級そうだな。
お高めのホテルの様な感じ。
……この形容詞。
俺が使うと、連れ込み宿なんかが連想れる気が。
一応、褒め言葉のつもりだ。
実際近くはある。
でも、何が違うんだろうな?
明らかに別物。
下品ではないというか、綺麗に纏まっている。
「実は、ノア先生に報告したいことがあって」
「あ、ちょっと待って貰ってもいい?」
「へ!? は、はい……。分かり、ました?」
どうした?
メスガキが何か話し始めたと思ったら。
ノアが遮った。
遮られるとは思わなかったのだろう。
明らかに動揺している。
まぁ、教師の家に押しかけたのは非常識な気もするけど。
門の前で待ってただけだ。
それだけ急用だったってことだろうし。
今は王都自体が混乱してるからね。
非常時って物。
別に話ぐらい聞いてやってもいいんじゃねと思うが。
ノアの表情を見るに、少し悩んでいるっぽい。
話を聞くかどうかそれ自体を。
もしかして、さっきの時点で追い返したかった感じ?
え、嫌ってはなかったよね。
むしろ、恋愛感情にこそ気づいてなかった様だけど。
生徒としては好ましく思ってたはず。
だから。
わざわざ俺に指導をお願いしたんだろうし。
俺が誘導したとはいえ、一旦家に入れたのは。
まぁ、また面倒ごとになっても敵わんって事だろうか?
俺の立場だけでなくノアの立場からしても。
衛兵に声かけられたりとか。
さっきの、ただでさえ大事になって。
自体が拗れたのだ。
ノアとしても繰り返したくはないのだろう。
それはそれとして、彼女の話もなんか面倒そうと。
いや、気持ちは分からんでもないが。
俺が死んだふりしたせいもあって心身ともに疲れてるだろうし。
早く休みたいのかも。
とは言え。
好きな相手にこうも邪気にされるの。
流石にメスガキがかわいそうな気がしないでもない。
そんな、自分勝手な妄想を広げつつ。
観察してたからだろうか。
メスガキから目を逸らして何やら考え事をしていたタイミングで。
ふと、目が合った。
頷く。
いや、何が?
アイコンタクト的なものを送ったつもりかもしれないけど。
全く伝わってないからね?
まぁ、俺が考えてることは筒抜けかもしれないが。
さっき余計なことを考えて、実行に移す前に捕まったからね。
この思考も。
もしかしたらバレてるのかも。
でも、こっちにも同じ能力を求めるのは勘弁してほしい。
「フィオナ先生」
「はい」
「ちょっとエリスのことお願いしていいですか?」
「……はい?」
何かと思えば、突然。
ノアがそんなことを言い出した。
え、なんのつもり?
「先輩、行きましょうか」
腕を引かれる。
どゆこと?
メスガキの事を放置して、何処に連れてくおつもりで。
進行方向には扉。
とりあえず、この部屋から出ようとしてるのは間違いない。
メスガキを置いて。
何故だろう、ちょっと嫌な予感がする。
このドア。
当然この家に来るのは初めて。
間取りなど知りようもないのだが。
見なくてもわかる。
多分……
寝室な気がする。
それに、続きをするとか何とか言ってこの家まで帰ってきた様な。
え?
……マジで!?
本気で抵抗すれば全然振り払えるんだけど。
それもちょっと。
後ろめたいと言いますか。
助けに来てもらったわけで。
ついでに死んだと勘違いさせちゃったし。
色々と借りがあるのだ。
かといって、メスガキがいるのにそういうことになるのも。
抵抗あると言いますか。
結果。
微妙な反抗をしてズルズル引きずられるという。
ただ、無意味な反抗では無かった。
メスガキを突然任されて。
そのまま、停止していた女教師が再起動。
ノアに駆け寄る。
いいぞ!
この暴走を止めてくれ。
(私だけお預けは酷くないです?)
(……お願い!)
(まぁ、ロルフくんノアさんの彼氏ですもんね)
(ありがとう)
(その代わり、色々と落ち着いたら)
(もちろん分かってますって)
と思ったら、2人のヒソヒソ話。
全部ではないが、うっすらとその内容が聞こえてくる。
話を聞く限り、どうも俺が期待した流れではなさそうな予感。
止める気はなさそう。
お前ら……
すぐ横に生徒がいるのに、なんつう会話してるんだ。
俺と違って聴力普通だろうし。
距離あるからほぼ聞こえてないだろうが。
証拠に、完全にポカンとしている。
これ、何となく読めてきたぞ。
俺も溜まってたが。
どうも、こいつらも結構溜まってたらしい。
俺以上に。
まぁ、ノアが続きなんて言い出した時点で察してはいたけどね。
ノアの性欲の強さは身をもって知ってるのだ。
若者だし。
直前でおあずけくらってるし。
女教師も。
彼女は淫乱女教師なのだ。
そりゃ、性欲が強くない訳ないわな。
俺的にかなり感謝してたんだけど。
もしかして。
早くヤリたいから無理してでも助けに来たとか。
無いよね?
無いと信じたい、うん。
ちょっと怪しいところある気がするが。
いや、だからどうってことないんだけどね。
ただ……うむ。
多分、深く考えない方が吉だな。
しかし、2人の間で合意が取れたとなると。
抵抗は悪手。
まぁ、しゃーないか。
そのまま寝室に引きずり込まれる。
「あのー、ノアさん?」
「何でしょうか?」
「隣の部屋に生徒いる中、一体何をするおつもりで?」
「フィオナ先生に任せたから大丈夫です!」
……本当かいな。