ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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清算 10

 何やら話がありそうな様子。

 用事もないのに先生の家に来たりしないだろうし。

 いや、メスガキの場合。

 ノア目当てとかそういう線もありえなくもないが。

 それは邪推というものだ。

 

 接した期間はそれほど長い訳ではないけど。

 結構良い娘だったからね。

 さっきの、間男という発言に言いたい事はありつつも。

 ストーカーとか。

 それこそ。

 本人のいない間に自宅に侵入。

 下着類を物色したりとか。

 少なくとも、そういう事をする人間ではなさそう。

 

 そもそも、生徒が学校の先生に恋するなんて。

 青春の1ページみたいなものだからね。

 こう言ったら怒るかもしれないが、ありふれた物だ。

 極めて健全であり。

 真っ当な思春期時代を過ごしていると言える。

 

 このまま、外で話している方が不都合。

 ここだと周囲の視線があるし。

 メスガキ云々以前に、今はあまり話かけられたくないのだ。

 

 仮に、門で待ち構えてたのがどこかの兵だったりしたらと思うと。

 ちょっと恐ろしくなるレベル。

 ノアも、今は生徒の手前抑えてる様だが。

 声を掛けられた瞬間とか。

 一瞬ではあったが、明らかに魔力が跳ね上がっていた。

 危なっかしくて仕方がない。

 とりあえず、一刻も早く家の中へ。

 

 家主でもない俺が誘導するのもおかしな気もするけど。

 人命がかかってるのだ。

 多少のマナー違反は見逃してほしい。

 後は、単純に。

 学園の女子生徒と男性講師。

 2人が学園外、それも自宅での密会ってのも外聞が悪いしね。

 

「外での立ち話も何だし……」

「え、何で先輩が」

「いいから。君も話があって来たんでしょ」

「……ま、まぁ。はい」

 

 2人から訝しげな視線を受けつつ。

 押し込む。

 

 ただでさえ視線が冷たかったのに、さらにキツくなったような。

 メスガキからも。

 どちらかといえば、これは驚きの方が強そうだが。

 似た様な視線を向けられる。

 

 話があって来たってんだ。

 ここが、誰の家かぐらい知ってるだろうし。

 自宅も行き来する仲なのかって事か。

 実態としては違うのだけど。

 別に、勘違いされて困る事もない。

 

 プラス材料を上げよう。

 実は、メスガキと同じく俺も今日来たのが初めてなんだよね。

 なんて変に希望持たせる意味もないしな。

 勘違いしておいてくれ。

 

 しかし、貴族街の家なだけある。

 部屋自体が広いのはもちろんだけど。

 内装も。

 これ、家具とかも結構高級そうだな。

 お高めのホテルの様な感じ。

 

 ……この形容詞。

 俺が使うと、連れ込み宿なんかが連想れる気が。

 一応、褒め言葉のつもりだ。

 実際近くはある。

 でも、何が違うんだろうな?

 明らかに別物。

 下品ではないというか、綺麗に纏まっている。

 

「実は、ノア先生に報告したいことがあって」

「あ、ちょっと待って貰ってもいい?」

「へ!? は、はい……。分かり、ました?」

 

 どうした?

 メスガキが何か話し始めたと思ったら。

 ノアが遮った。

 

 遮られるとは思わなかったのだろう。

 明らかに動揺している。

 

 まぁ、教師の家に押しかけたのは非常識な気もするけど。

 門の前で待ってただけだ。

 それだけ急用だったってことだろうし。

 今は王都自体が混乱してるからね。

 非常時って物。

 別に話ぐらい聞いてやってもいいんじゃねと思うが。

 

 ノアの表情を見るに、少し悩んでいるっぽい。

 話を聞くかどうかそれ自体を。

 もしかして、さっきの時点で追い返したかった感じ?

 

 え、嫌ってはなかったよね。

 むしろ、恋愛感情にこそ気づいてなかった様だけど。

 生徒としては好ましく思ってたはず。

 だから。

 わざわざ俺に指導をお願いしたんだろうし。

 

 俺が誘導したとはいえ、一旦家に入れたのは。

 まぁ、また面倒ごとになっても敵わんって事だろうか?

 俺の立場だけでなくノアの立場からしても。

 衛兵に声かけられたりとか。

 さっきの、ただでさえ大事になって。

 自体が拗れたのだ。

 ノアとしても繰り返したくはないのだろう。

 

 それはそれとして、彼女の話もなんか面倒そうと。

 

 いや、気持ちは分からんでもないが。

 俺が死んだふりしたせいもあって心身ともに疲れてるだろうし。

 早く休みたいのかも。

 とは言え。

 好きな相手にこうも邪気にされるの。

 流石にメスガキがかわいそうな気がしないでもない。

 

 そんな、自分勝手な妄想を広げつつ。

 観察してたからだろうか。

 メスガキから目を逸らして何やら考え事をしていたタイミングで。

 ふと、目が合った。

 頷く。

 いや、何が?

 アイコンタクト的なものを送ったつもりかもしれないけど。

 全く伝わってないからね?

 

 まぁ、俺が考えてることは筒抜けかもしれないが。

 さっき余計なことを考えて、実行に移す前に捕まったからね。

 この思考も。

 もしかしたらバレてるのかも。

 でも、こっちにも同じ能力を求めるのは勘弁してほしい。

 

「フィオナ先生」

「はい」

「ちょっとエリスのことお願いしていいですか?」

「……はい?」

 

 何かと思えば、突然。

 ノアがそんなことを言い出した。

 え、なんのつもり?

 

「先輩、行きましょうか」

 

 腕を引かれる。

 どゆこと?

 

 メスガキの事を放置して、何処に連れてくおつもりで。

 進行方向には扉。

 とりあえず、この部屋から出ようとしてるのは間違いない。

 メスガキを置いて。

 何故だろう、ちょっと嫌な予感がする。

 

 このドア。

 当然この家に来るのは初めて。

 間取りなど知りようもないのだが。

 見なくてもわかる。

 多分……

 寝室な気がする。

 

 それに、続きをするとか何とか言ってこの家まで帰ってきた様な。

 え?

 ……マジで!?

 

 本気で抵抗すれば全然振り払えるんだけど。

 それもちょっと。

 後ろめたいと言いますか。

 助けに来てもらったわけで。

 ついでに死んだと勘違いさせちゃったし。

 色々と借りがあるのだ。

 かといって、メスガキがいるのにそういうことになるのも。

 抵抗あると言いますか。

 結果。

 微妙な反抗をしてズルズル引きずられるという。

 

 ただ、無意味な反抗では無かった。

 メスガキを突然任されて。

 そのまま、停止していた女教師が再起動。

 ノアに駆け寄る。

 いいぞ!

 この暴走を止めてくれ。

 

(私だけお預けは酷くないです?)

(……お願い!)

(まぁ、ロルフくんノアさんの彼氏ですもんね)

(ありがとう)

(その代わり、色々と落ち着いたら)

(もちろん分かってますって)

 

 と思ったら、2人のヒソヒソ話。

 全部ではないが、うっすらとその内容が聞こえてくる。

 

 話を聞く限り、どうも俺が期待した流れではなさそうな予感。

 止める気はなさそう。

 お前ら……

 すぐ横に生徒がいるのに、なんつう会話してるんだ。

 俺と違って聴力普通だろうし。

 距離あるからほぼ聞こえてないだろうが。

 

 証拠に、完全にポカンとしている。

 

 これ、何となく読めてきたぞ。

 俺も溜まってたが。

 どうも、こいつらも結構溜まってたらしい。

 俺以上に。

 

 まぁ、ノアが続きなんて言い出した時点で察してはいたけどね。

 ノアの性欲の強さは身をもって知ってるのだ。

 若者だし。

 直前でおあずけくらってるし。

 女教師も。

 彼女は淫乱女教師なのだ。

 そりゃ、性欲が強くない訳ないわな。

 

 俺的にかなり感謝してたんだけど。

 もしかして。

 早くヤリたいから無理してでも助けに来たとか。

 無いよね?

 無いと信じたい、うん。

 

 ちょっと怪しいところある気がするが。

 いや、だからどうってことないんだけどね。

 ただ……うむ。

 多分、深く考えない方が吉だな。

 

 しかし、2人の間で合意が取れたとなると。

 抵抗は悪手。

 まぁ、しゃーないか。

 そのまま寝室に引きずり込まれる。

 

「あのー、ノアさん?」

「何でしょうか?」

「隣の部屋に生徒いる中、一体何をするおつもりで?」

「フィオナ先生に任せたから大丈夫です!」

 

 ……本当かいな。

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