始末
「そ、それより暴徒の方はどうだったんだ?」
話を逸らそうと聞いてみるも。
返事はない。
……これ、本格的にヤバいのでは?
別に不自然な質問ではなかったはずだ。
実際気になっては居るし。
こんな距離で、聞こえてないって事もないだろう。
もしかしなくても。
これ、結構怒ってらっしゃる?
酒瓶の事も合わせて、このまま放置なんて事も。
そう覚悟したが、どうもそのつもりはなさそう。
返事はくれなかったが、ノアがスルスルと縄を解いてくれた。
そこは一安心。
おのれ、クソガキ……
今度あったらしっかり罰を与えなければ。
おかげでえらい目に遭いかけた。
ふと気がつくと、ノアの手が途中で止まっていた。
井戸からは外してくれたのだけど。
手は縛られたまま。
あれ?
視線を向けるもこれ以上何かするつもりはなさそう。
「あのー」
「……」
「まだこっちが縛られたままで」
ノアの方に縛られたままの手を差し出す。
いや、自分で解けるんだけど。
流石に今の状況で、ねぇ。
その勇気はない。
俺と視線が合うもノアは笑みを浮かべるだけ。
何もおかしな所はない。
ここ数ヶ月で見慣れた笑顔だ。
でも、俺の言葉に答えてはくれなかった。
……え?
それどころか、縄の端を手に持ち。
グイグイと引っ張られる。
解くつもりはない、と?
俺のことを縛ったままどこかに連れてくつもりらしい。
まるでペットの散歩である。
女教師もさっきのアイコンタクトで何か伝わってるのか。
この状況を見ておっとりとした笑顔を浮かべている。
逆に怖い。
ちょっと頼れそうにないな。
メスガキに目で助けを求めるが。
冷めた視線を向けられ、助けてくれそうにない。
そういや、学園行った時も飲んでたからな。
あの時は助けてもらえたが。
そのせいか。
信じてもらえてないらしい。
俺が飲んでたと思われてるのだろう。
自分たちが大変だったのに。
いや、主犯探しに行った後どうなったのか聞けてないから。
実際の所どうだったのかは知らないけど。
罰で縛って置いてった人間が飲んだくれてたら。
そりゃ、良い気はしない。
自業自得?
まぁ、強く否定は出来ない。
日頃の行いってやつか。
でも、こればっかりは本当に冤罪なのだが……
そのまま、貴族街の方へ。
縄を引かれて。
完全に見せ物である。
やめちくれ。
俺はそこまで羞恥耐性が高くないのだ。
昼間かっから飲んだくれてるのは平気なのに?
それはそれ、これはこれ。
普段の行動も視線を集めてる自覚はあるが。
別種の恥ずかしさがある。
ノアはいい。
いや、良くはないが。
嬢も含め。
色々あった仲だし。
恥ずかしいと言っても。
今更感がある。
そして、他人からの視線も。
知らない相手だ。
気にならないって訳ではないが。
どんな事を思われてたとて。
最悪、困りはしない。
王都だしね。
ノームと違って住んでる訳でもないし。
被害で言えば。
まぁ、たかが知れてる。
ただ、メスガキと女教師。
2人とも微妙に関わりのある相手だ。
過去も知ってるし。
見直してくれた雰囲気もあったし。
だから余計に。
俺の心が揺さぶられる。
「僕はこれからやらなきゃいけない事があるから、エリスもゆっくり休んで」
「……はい」
そして、学園の近くでメスガキとお別れ。
やらなきゃいけない事て。
それ、俺への何かですよね?
怖いんだが。
メスガキは何か言いたそうにしていたが、女教師にももう遅いからと言われ。
引っ込めたらしい。
チラチラとこちらを見ながらではあったけど。
そのまま、帰って行った。
……帰って行ってしまった。
一応、心配してくれているのだろうか?
学園で助けてくれた事といい、ほんと優しい娘である。
まぁ、信頼がないのか。
酒の事とか。
心配はした上で信じてくれてなさそうだったけど。
衛兵に引っ捕らえられたのといい。
今回の件といい。
なんか俺、冤罪かけられ過ぎじゃね?