まっすぐ大通りを抜けて、門を出た。
草原が広がる。
雪も解け、まだ一面緑の絨毯って程では無いが。
それなりに生えてはいるらしい。
自然ってのは季節の変わり目に一瞬で姿を変える。
前世のコンクリートジャングルに囲まれた社会ではその片鱗しか味わうことがなかったけれど。
この世界ではそれを全身で味わえる。
人の手が及んで無いってことだから幸か不幸か判断に迷う所なのだろうが。
チートってセーフティーのある俺からすりゃ。
両手をあげて歓迎できるこの世界の魅力の一つだ。
青い空に、広大な草原……
この景色も例に漏れず絶景ではあるのだろう。
要素だけ抜き出せば。
ただ、台無しにしてる事象が一つ。
すでに街を囲う壁の外に出たと言うのにやたらと人が多い。
皆が皆、ギルドで見かけた様な格好。
俺と同じ下級冒険者、もしくはスラムの住民。
後は、小銭稼ぎに来た中級以上の冒険者もちらほらとって所か。
中腰になったり四つん這いだったり。
一心不乱に地面を凝視している。
異様な光景だ。
絶景への感動も簡単に打ち消すというもの。
ま、ギルドにあれだけ並んでいたのだ。
そりゃ、単純に考えりゃ街の外もこんな状況にもなるわな。
ちなみに、中級以上の冒険者が少ないのには理由がある。
無論、絶対数として少ないのもあるが。
それとは別に。
普段彼らが薬草採取の依頼を受けないのは、普通に効率が悪いからなのだけど。
流石にこの時期は話が違う。
適正ランクの依頼をこなすより稼げる可能性も全然あるし。
何より圧倒的に楽。
これだけ聞くとやらない理由が無い様な気もするが。
この時期の稼ぎは、下級冒険者やらスラムの住民らの命綱でもあるから。
心優しい彼らはあえて手を出さないと、こう言う理屈らしい。
……ってのは表向きの綺麗な理由。
冒険者なんて半分は荒くれ者みたいなもんだし、こんな良識を持ち合わせてるのは少数派。
どちらかといえばカルマ値マイナスに偏ってる連中である。
この仕事って英雄に憧れたりなんだり。
そんなんで志した人間も多い。
常識的に考えて、物語の主人公がそっちの方が楽だからと流れるだろうか?
つまりはそう言う事。
下級冒険者やらスラムの奴らなんてどうでもよくて。
単純にダサいからやらないのだ。
じゃあちらほらいる奴らはなんだって話ではあるが。
楽なものは楽だからね。
当然多少は居るさ、将来の俺予備軍である。
ほんの数日前まで人っ子1人居なかったと言うのに。
活動しやすい次期になったらこれだ
徐々に増え続け、いつの間にか人で溢れかえる。
俺の場合、魔眼があるからね。
一年を通して仕事にかかる手間はほとんど変わらない。
ギルドは混むし。
なんなら、今の時期が一番面倒って説もある。
雪解けでテンションは上がるんだけどね。
仕事は真逆という……
なかなか、ままならない物だ。
この辺りでも当然薬草の採取自体は可能。
数日もすれば全て狩り尽くされてしまいそうな勢いではあるが。
今はまだセーフ。
ただ、ライバルも多いし。
魔眼のおかげで圧倒的なアドバンテージがあるとは言え。
ここでそいつらと一緒に競争する必要も無い。
ちょっと歩くことになるが。
普段通り、森で取った方が面倒がなくていい。
絡まれてもあれだしな。
森の外周、新しいの生えて来てるからね。
奥まで行かなくてもそこで十分。
この辺りはさっきの光景が嘘の様に人が居ない。
草原はバカみたいに人がいたが。
壁を立ててる理由を考えれば、当然。
魔物がいるのは変わらないからね。
森には近づかないのだ。
そこ行ける人間は、この時期に限らず普段から稼げる人間である。
当然のように、薬草採取なんて仕事も卒業済み。
まぁ、毎年欲かいて犠牲になる奴も居るが。
知ったこっちゃない。
冬の間に餓死やら凍死してる人間の方がずっと多いだろうし。
最早その程度の人数は誤差である。
魔眼を起動。
ちょっと範囲内に人が多いな。
鬱陶しい。
さっさと除外して、と。
いつも通りのフィルターを設定する。
背が低く。
魔力を持っていて。
動かない物。
これで、薬草だけが光って見える。
後は、適当に回収するだけ。
これにて依頼達成。
あっという間だったな。
春になって数が増えてくれたおかげだ。
移動する手間もほとんど省けて。
採取自体は楽ちんである。
本当、ギルドの混雑が無ければ最高なんだけどね。