「相変わらず仕事が適当ですよね」
俺が置いた麻袋をひっくり返す。
採取して来た薬草が一通りカウンター上に並べられた。
土が付いていたり。
多少大きさが不揃いだったり。
葉が不自然に切れてたり。
確かに、こう見るとバラッバラだ。
大きさが不揃いな理由。
おそらく、薬草それ自体の成長度の差ではない。
無いとは言わないが。
それならこんな小言飛んで来ないだろうし。
採取の際。
刈り取る場所が全然固定化されてないんだよね。
多分、こっちの影響の方がデカそう。
土が付いてるのは。
まぁ、当然か。
だって落としてないし。
葉が切れてるのがちょこちょこあるのは何だろ。
あんま意識した事ない。
これ、虫食いとかじゃ無いよね。
こうはならないだろうし。
心当たりは皆無。
が、採取する時無意識に千切っちゃってるんだろうな。
うん、これは酷い……
受付嬢が小言言いたくなる理由も分かる。
改善出来ない訳でもない。
けど、これをいちいち気にしながら採取するの面倒くさいんよね。
どうせ買い取ってはくれるんだし。
やむを得ない犠牲、コラテラルダメージって奴?
「いや、ほら。そこは俺の味って事で」
「何を良い風に言ってるんでしょうね、このおじさんは」
「喧嘩売られてます?」
「買うならそろそろ討伐依頼の一つでも受けてください」
「……やっぱ、喧嘩買う軍資金が無かったわ」
薬草採取専門の俺に喧嘩を買う資格は無いらしい。
そう言うこと言い出すなら、せめて討伐依頼の一つでも受けろと。
ごもっともである。
一生、Dランクでチンタラやってるやつの面倒なこだわりとか。
んな事言われても、鼻で笑う以外の選択肢無いわな。
そんな適当な軽口を叩きつつ。
まぁ、だいぶ本音も混じってたような気もするが。
受付嬢の目線は下、薬草の束に向けられたまま。
テキパキと仕事を片付けていく。
……
ほんの数週間前。
手はやたら早く動くのに、そのほぼ無駄な動作で仕事が全然進まない。
なんて面白い状態だったのだが。
いつの間にか回復した様子。
なんだかんだいって、この受付嬢根本が図太いからな。
まだ多少は恥ずかしがりつつも。
慣れたらしい。
不特定多数にバレるのは避けてる様だけど。
とりあえず、同僚相手に隠すのは諦めたっぽいしね。
そうでもなきゃ。
座ってる人間どかして受付し始めるとかいう。
暴挙働くはずないだろうし。
良いのか悪いのかは知らん。
嫌われそうな気もするが、完全に自己責任である。
仕事早く終わる分には文句は無い。
無いのだが。
まぁ、受付嬢を揶揄う材料が減ったのは残念でもある。
そういや、前もあったな。
受付嬢なりたての頃。
俺が依頼終えるの早すぎてびっくりしてた気がする。
数回で慣れちゃったけど。
元々そういう奴だし、予想は付いてた。
しかし、改めて見ると他の職員とは明らかに違うのな。
ここ数年はずっと彼女に担当して貰っていたから気づいてなかったけど。
周囲と比べ明らかに手際がいい。
普段混んでないからね。
他と比べることも無かった。
何年も同じだし。
徐々に成長してたから、本当にいつの間にか。
ベテラン、ってほど年もいっていないが。
入ったのが若かったもんな。
なんだかんだ歴も長い方になって来ているのかもしれない。
役職も順調に上がってるし。
いわゆる、期待の若手ポジションなのかも。
まぁ、流石にギルド長とかになるって事はないだろうけど。
あの役職って上級冒険者がなるもんだし。
ちなみに上級冒険者に組織運営の素質があるかどうかは察して欲しい。
一応、試験的なのはあるらしいが。
それより冒険者時代の実績が重視される。
これだけ聞くとあれだが、別にそこまで悪い話じゃない。
冒険者を、荒くれ者共をまとめるのだ。
トップの腕っぷしは大事な要素である。
そこを補助するのは職員の役目で、秘書とか副ギルド長とか。
そのあたりに何だかんだ結構な権限が与えられる。
もしかしたら将来そうなってくのかもなと。
何となく、このルートに乗ってる様な気がしないでもない。
ギルド長にも信頼されてるっぽいし。
あの酒の席以来、より顕著。
酒の席で仲良くなって出世とか昭和かよって感じだが。
ここは異世界。
そもそも、文明的にはもっと古いのだ。
とすれば未来に生きてると言えなくもない、かも?
受付嬢がギルドの実質トップか。
既に、さっきパワハラみたいな事してた訳だが。
ギルド長との組み合わせ。
十中八九アルハラも増えそうな予感。
……受付嬢の将来は明るい。
が、ギルドの将来は多少怪しいかもしれない。
ファイトだ職員さん達。