ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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春風 7

 依頼の報告を済ませ。

 報酬もゲット。

 

 後ろ、他にも冒険者たちが並んでたのだけど。

 少々長居してしまった。

 振り返るまでもなく視線を感じる。

 すまんな。

 別に悪意があった訳では無いのだが、ついつい話し込んでしまって。

 無意識の行動ってやつ?

 怒ってくれるな。

 俺は悪くない。

 強いて言うなら元いた職員押し退けて座った受付嬢が悪い。

 彼女じゃなければ話し込むことも無かったはず。

 

 え、責任転嫁?

 悪気なくやってる方がたちが悪い?

 まぁまぁ。

 細かいことは良いじゃないか。

 

 確かに、余分な時間をとってしまったかもしれない。

 その代わり受付嬢は手際が良かったから。

 それでプラマイゼロって事で。

 許してクレメンス。

 多分、鑑定やらの作業自体は他の職員よりよほど早く終わってただろうし。

 合わせての時間としちゃ。

 実際の所、そんなもんな気がしている。

 

 ってな言い訳をしつつ、絡まれる前にそそくさと撤退。

 無論心の中で。

 仮に、多少思うところがあったとて。

 わざわざ列を離れてまで文句を言いにくる奴もいないだろ。

 

 今日のお仕事はこれにて終了!

 よしっ、酒だ酒。

 労働から解放されたのだ。

 今すぐにでも喉へと流し込みたい気分。

 まず席を確保し。

 ギルドの隅、俺の指定席である。

 

 今の時期、ギルド自体は混んでいるのだが。

 皆、受付に並んでるのだ。

 そして依頼を受注するなり冒険者達はまっすぐ外へ。

 稼ぎ時だからね。

 席に座ってのんびりしてる奴はいない。

 混雑に反して楽に確保出来た。

 

 当然、併設の酒場も空いている。

 日も落ちてくれば今日の稼ぎで一杯って奴も増えそうだけど。

 まだ先。

 明るい間は目一杯稼ぐ奴がほとんどだ。

 

 まぁ、人が多いのは変わらないし。

 別に外の飲み屋に行ってもいいんだけどね。

 ちょっとした楽しみもあって。

 

「よ、おばちゃん」

「いらっしゃい」

「いつものお願いね」

「はいよ」

 

 注文すると、すぐにエールが出て来た。

 受け取り。

 そのままの勢いで喉に流し込む。

 

 カッー、やっぱり労働の後の一杯は最高だね。

 特に働いてる奴ら。

 あいつらを肴に飲むのは別格。

 

「いつにも増して、いい飲みっぷりだ事で」

「あ、バレた? 何と言うか久々にギルドで飲んでるって感じがしてさ」

「来るたびに飲んでるじゃないか」

「分かって無いなぁ。今日はちょっと違うんだって」

「酔っ払いの理屈なんて知らないよ」

「酷い。あ、おばちゃんもう一杯おかわり」

 

 俺の飲みっぷりを見て、先に用意してくれてたらしい。

 注文すると同時に二杯目が出て来た。

 受け取り。

 今度は一気には行かないが、それでも景気よく。

 ゴクゴクと半分ほど飲み干す。

 

「ほら、雪が溶けると新しい年が始まったって感じしない?」

「ま、言わんとしてることは分かるけど。それがどうして酒に繋がるんだか」

「新鮮な気持ちで酒も美味い!」

「そんなもんかい」

「そう。そういうもの」

「なるほどねぇ」

「ってか、おばちゃんだってお酒好きでしょ?」

「そりゃ酒は好きだが、お前さんみたいのと一緒にされたくはない」

 

 どうやらあまり受け入れては貰えなかったらしい。

 おばちゃん酒飲みだし。

 ハマると思うんだけどな。

 まぁ、昼間っから飲んだくれてる奴と一緒にされたくない気持ちは分かる。

 そもそも現在進行形で仕事中だしね。

 

 ちなみに、俺がテンション高い理由はそれだけじゃない。

 無論その気持ちが無いとは言わないが。

 ついこないだまで冬だったからね。

 冒険者があまりいなかったのだ。

 ギルドではおばちゃんの言うようにしょっちゅう飲んでいたのだけど。

 冒険者を肴に飲むの、実は結構久しぶりだったり。

 

 全く居ないことは無いのだ。

 無いのだが。

 その時期に居る冒険者って、何と言うか死相が出てて。

 餓死するか、依頼で死ぬかの選択。

 流石にそれ肴にするのは。

 ちょっと俺にはレベルが高い。

 

 それに比べて、今日ギルドに居る奴ら。

 確かに大変だろうが。

 リターンは見えてるからね。

 表情も明るいし。

 肴にするなら断然こっちの方がいい。

 

 まぁ、欠点を上げるとすれば無駄に数が多い気もするけど。

 この密度。

 熱気やら匂いが気にならない訳もなく。

 が、列から離れりゃ緩和されるし。

 汗水垂らして働いてる証拠。

 それを肴に飲めると思えば、ね。

 言うほど忌避する物じゃない。

 そもそも、この世界で日本ほど臭いやら何やら避けて生きるのは不可能だしね。

 汗の臭いぐらい死臭とかに比べればずっとマシだ。

 

 冒険者を肴にしつつ酒をゴクリ。

 視線を感じる。

 相手は言うまでもなく彼ら。

 昼間っから飲んだくれていれば、そりゃ注目もされる。

 いつも通りの事だ。

 

 ただ、以前とは変わったことが一つ。

 前までは見下す様な視線が多かったのだけど。

 今日は羨ましげな物も増えた。

 一瞬疑問に思ったが……

 多分、知名度増したせいだろうな。

 

 ノアと俺の噂話、あれ一通り話題になったっぽいし。

 ヒモだとでも思われてるのかもしれない。

 Dランクのおっさんが昼間っから飲んだくれられてる理由としちゃ。

 本人が稼いでるってより納得か。

 何を持って納得してるのかは不明。

 冷静に考えればその方が確率低い様に思えるが。

 納得感は何よりも優先される。

 人は噂話を現実と結びつけるのが好きなのだ。

 

 そして、この理由だと。

 人生に疲れたおっさんが飲んだくれてるのとは話が違う。

 その生活には保証があるのだ。

 となると。

 一転してその光景が羨ましく見えるらしい。

 

「おばちゃんもう一杯お願い」

「昼間からこんな飲んで、新しい年始まったてんなら心機一転って気はないのかい?」

「ないね」

「悪びれる事もなく。ま、あんたらしいか」

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