ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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春風 11

 流石に、そろそろ時間だろう。

 日も暮れてきたし。

 解散かな?

 あまり拘束するのも悪い。

 

 こういうのは先輩側が言い出さないと、向こうも帰りにくいしな。

 

「おばちゃん、お会計」

「お、あんたが払うんかい?」

「俺を何だと思ってるんだ!」

「そりゃ、ねぇ……」

 

 胡散臭い物を見るかの様な視線を向けられる。

 何故?

 後輩にちょっと飲み代を奢るって言っただけでこの扱い。

 一応抗議してみたものの。

 効果無し。

 それどころか若干含みのある言葉が返ってきた。

 

 色々と言いたい事はありつつも。

 ま、長い付き合いだからね。

 受付嬢がギルドに就職する以前からの関係である。

 こうもなるか。

 

 俺が飲み代足りなくてノアから酒代巻き上げてたのとか。

 ほら、例のノートを売ったやつ。

 他にも心当たりがちらほらと。

 個別の事例を覚えてるかどうかは別として。

 見てはいるのだ。

 それは、こんなイメージにもなる。

 

「後輩の昇級の前祝いだからね」

「へぇー、成長したってこったな」

「……どっちが?」

「さぁね。どっちだろうか」

 

 そんなこんなで、多少不本意な扱いを受けるも。

 無事会計を済ませた。

 

「ロルフさん、ご馳走様です!」

「そんなのいいって」

 

 んな、お礼言われるほどの金額でも無いしな。

 

 ちなみに、パティーメンバーは自分の分は払ってったらしい。

 急に巻き込まれたのに……

 しっかりしてやがる。

 全然奢るつもりだったんだけどね。

 本当、俺はちょっと話しただけだけどいい仲間だと思う。

 

 信頼出来るかって大切だからね。

 冒険者のパーティーは強けりゃいいってもんじゃない。

 少人数。

 命懸けで共通の依頼に挑むのだ。

 完全に背中を預けられるかって結構重要。

 

 まぁ、強さに関しても。

 Bランク目前まで来てる訳だからな。

 そこは折り紙つきなのだろうが。

 

「次会うのは、多分依頼から帰ってきた後かな」

「頑張ります!」

「あぁ、上手くやれよ」

「はい!!」

 

 やる気十分と言ったところか。

 ちょっとでもプラスになったのなら良かった。

 絶対成功してくれとは言わないが。

 今日、一緒に飲んで。

 多少なりとも情が湧いてしまったらしい。

 あまり死んでほしくはないな。

 

 これは、口には出さないけどね。

 彼としてはBランクに上がる気満々だろうし。

 そもそもとして。

 仲間見捨てて逃げれるやつでも無いのだ。

 

 仲間じゃなかったとしても。

 確かこの依頼、村近くでのオーガの目撃情報があってどうこうって内容だったはず。

 仮に、村が襲われてたら。

 放っておけずにきっと助けに入ってしまう。

 そんなやつだ。

 だから、生きて英雄になってくれ。

 

 ……

 

 もう少し飲みたい様な気もするが。

 今から飲み直すのもな。

 それに、俺もそろそろ時間か。

 

「あ、おじさん帰るんですか?」

 

 青年を見送って一息。

 ギルドを出ようと席を立ったところで、受付嬢に声を掛けられた。

 

 いや、早くね?

 普段から帰る前に一言二言話すことも多いのだが。

 今日は。

 特に早かった気がする。

 

 俺の事をずっと監視してた訳じゃなかろうな。

 

 仕事中だったし、そんな訳ないのだけど。

 少し前からだ。

 今日ほどじゃ無いにしても。

 ギルド内での行動を大方把握されてる様な気が。

 

「何でそんな目で見るんですか?」

「やけに早いなと」

「おじさんが彼と話してたから……、って言わせないでくださいよ!」

 

 口には出していなかったのだけど。

 視線でバレたらしい。

 

 つまる所、嫉妬か。

 それだけ聞けば実に可愛らしい物なのだが。

 その内容よ。

 俺、後輩の冒険者と飲んでただけだぞ?

 これに嫉妬は。

 流石にいかがなものかと。

 

「何を勘違いしてるか知らないが、俺は男には興味無いからな」

「ノアさんとああなったのに勘違いだと?」

「あれは例外」

「私にその区別はつかないです!」

 

 勘違いだと訂正を試みたものの。

 逆に怒らせてしまった。

 確かに、この区別は俺以外にはつかないか。

 

 頬を膨らませて。

 分かりやすく怒ってますとアピールする受付嬢。

 

 俺に他にも相手がいることは知ってるし。

 これに関して、あまり怒ったりはしないのだが。

 言い訳が良くなかったらしい。

 

 ……ごめんって。

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