流石に、そろそろ時間だろう。
日も暮れてきたし。
解散かな?
あまり拘束するのも悪い。
こういうのは先輩側が言い出さないと、向こうも帰りにくいしな。
「おばちゃん、お会計」
「お、あんたが払うんかい?」
「俺を何だと思ってるんだ!」
「そりゃ、ねぇ……」
胡散臭い物を見るかの様な視線を向けられる。
何故?
後輩にちょっと飲み代を奢るって言っただけでこの扱い。
一応抗議してみたものの。
効果無し。
それどころか若干含みのある言葉が返ってきた。
色々と言いたい事はありつつも。
ま、長い付き合いだからね。
受付嬢がギルドに就職する以前からの関係である。
こうもなるか。
俺が飲み代足りなくてノアから酒代巻き上げてたのとか。
ほら、例のノートを売ったやつ。
他にも心当たりがちらほらと。
個別の事例を覚えてるかどうかは別として。
見てはいるのだ。
それは、こんなイメージにもなる。
「後輩の昇級の前祝いだからね」
「へぇー、成長したってこったな」
「……どっちが?」
「さぁね。どっちだろうか」
そんなこんなで、多少不本意な扱いを受けるも。
無事会計を済ませた。
「ロルフさん、ご馳走様です!」
「そんなのいいって」
んな、お礼言われるほどの金額でも無いしな。
ちなみに、パティーメンバーは自分の分は払ってったらしい。
急に巻き込まれたのに……
しっかりしてやがる。
全然奢るつもりだったんだけどね。
本当、俺はちょっと話しただけだけどいい仲間だと思う。
信頼出来るかって大切だからね。
冒険者のパーティーは強けりゃいいってもんじゃない。
少人数。
命懸けで共通の依頼に挑むのだ。
完全に背中を預けられるかって結構重要。
まぁ、強さに関しても。
Bランク目前まで来てる訳だからな。
そこは折り紙つきなのだろうが。
「次会うのは、多分依頼から帰ってきた後かな」
「頑張ります!」
「あぁ、上手くやれよ」
「はい!!」
やる気十分と言ったところか。
ちょっとでもプラスになったのなら良かった。
絶対成功してくれとは言わないが。
今日、一緒に飲んで。
多少なりとも情が湧いてしまったらしい。
あまり死んでほしくはないな。
これは、口には出さないけどね。
彼としてはBランクに上がる気満々だろうし。
そもそもとして。
仲間見捨てて逃げれるやつでも無いのだ。
仲間じゃなかったとしても。
確かこの依頼、村近くでのオーガの目撃情報があってどうこうって内容だったはず。
仮に、村が襲われてたら。
放っておけずにきっと助けに入ってしまう。
そんなやつだ。
だから、生きて英雄になってくれ。
……
もう少し飲みたい様な気もするが。
今から飲み直すのもな。
それに、俺もそろそろ時間か。
「あ、おじさん帰るんですか?」
青年を見送って一息。
ギルドを出ようと席を立ったところで、受付嬢に声を掛けられた。
いや、早くね?
普段から帰る前に一言二言話すことも多いのだが。
今日は。
特に早かった気がする。
俺の事をずっと監視してた訳じゃなかろうな。
仕事中だったし、そんな訳ないのだけど。
少し前からだ。
今日ほどじゃ無いにしても。
ギルド内での行動を大方把握されてる様な気が。
「何でそんな目で見るんですか?」
「やけに早いなと」
「おじさんが彼と話してたから……、って言わせないでくださいよ!」
口には出していなかったのだけど。
視線でバレたらしい。
つまる所、嫉妬か。
それだけ聞けば実に可愛らしい物なのだが。
その内容よ。
俺、後輩の冒険者と飲んでただけだぞ?
これに嫉妬は。
流石にいかがなものかと。
「何を勘違いしてるか知らないが、俺は男には興味無いからな」
「ノアさんとああなったのに勘違いだと?」
「あれは例外」
「私にその区別はつかないです!」
勘違いだと訂正を試みたものの。
逆に怒らせてしまった。
確かに、この区別は俺以外にはつかないか。
頬を膨らませて。
分かりやすく怒ってますとアピールする受付嬢。
俺に他にも相手がいることは知ってるし。
これに関して、あまり怒ったりはしないのだが。
言い訳が良くなかったらしい。
……ごめんって。