ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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春風 12

 誠心誠意、しっかりと謝罪して。

 どうにかお許しを得た。

 

「んじゃ、そろそろいい時間だし。また……」

「何逃げようとしてるんですか?」

「いや、待って。別に逃げてはない」

 

 ちゃんと謝りはしたし。

 うん。

 あまり、人聞きの悪いことを言わないで欲しい。

 

 ただでさえ俺の評判は良くないのだ。

 

 ノアとの一件以来、俺の知名度はかなり上昇。

 この街じゃちょっとした有名人。

 ってな状態ではあるのだが。

 その知名度のほとんどが悪名と言いますか。

 

 まぁ、街の英雄相手にあんな形で噂になったのだ。

 歓迎されるはずもなく。

 まだ刺されてこそいないものの。

 いつそうなってもおかしくない。

 ……実際問題として。

 時折、危ない視線を感じることもあったりなかったり。

 

 ここは隅の方とはいえギルド内。

 別に個室なんかじゃないし、周囲から丸見え。

 現在進行形で視線を感じる。

 そりゃね。

 春になって冒険者も増えたし。

 ただ飲んでる時でさえ視線を集めがちなのだ。

 受付嬢に怒られてたら。

 当然の様に注目も集まっちゃうわな。

 

 そんな状況での受付嬢の発言。

 これ以上評判が悪化するのは本当にマズい。

 冗談じゃなく刺される。

 

「ふーん、本当ですか?」

「本当だって。単にもういい時間だから帰ろうかなってだけで」

「なら、どこか一緒に飲みいきましょうよ」

「うぐ」

「逃げたい訳じゃないなら良いですよね」

 

 何とか納得はしてくれたらしい。

 納得してくれたのか?

 まぁ、いいや。

 俺側が無駄に疑っても良いことなんて無いのだ。

 

 そして、飲みのお誘いである。

 以前とは異なる関係。

 なんだかんだ、飲む機会もずっと増えた気がする。

 誘い自体はいいのだ。

 いいんだけど。

 ただ、今日は時間も時間だからなぁ。

 

「いや〜、先約が……」

 

 そろそろ、娼館の方に顔出す時間なんよね。

 予約してる訳でも無いけど。

 ほら、毎回だし?

 俺のルーティーンでもあると言いますか。

 

 でも、謝った矢先である。

 これ断るのは誠意がないと言われそうな気も。

 

「知ってますよ、お姉様の所ですよね?」

 

 一応、ぼかしてはみたのだが。

 一瞬でバレた。

 

 ってか、何がお姉様だよ。

 ノアといい。

 いつの間に妹分になったのやら。

 そもそも、受付嬢の場合はほぼ年齢差もないよな?

 完全に悪ノリである。

 

 街の英雄様と未来の副ギルド長候補。

 そこ2人妹分にして。

 どんな娼婦だ。

 もしかしたらこの街、将来は彼女に支配される運命にあるのかもしれない。

 とんでもない成り上がりである。

 

 ……いや、末恐ろしいな。

 

「私も行きます!」

「仕事は?」

「バッチリ、終わらせました」

 

 軽く腕まくりし、力こぶを見せる受付嬢。

 別に力仕事でもない。

 しなやかな腕だ。

 どことなく間抜けに見えるが、実際仕事は出来るのだろう。

 責任ある立場だからな。

 流石に適当な事は言ってないと思う。

 

 多分。

 

 飲みに行こうだ何だと言ってたしな。

 うん。

 まぁ、たまにギルド長に見つかってドナドナしてるから。

 100%の信用は無いのだけど。

 

 元々、飲みに誘われることはあった。

 関係を持ってから、多少強引になった気がする。

 遠慮がなくなったのもあるだろうけど。

 パターンがバレたせい。

 他の知人も少ないし。

 俺が先約って言ったらそれぐらいだからな。

 

 行き先なんて全部バレているのだ。

 娼館か、行きつけの居酒屋数軒の内のどこかか。

 あとは自宅である。

 これを断って。

 例えば転移なんかで受付嬢のこと巻いて逃げたたとして。

 すぐ特定されるのがオチ。

 

 それでも、娼館に行くって時だけは。

 遠慮していたのだが。

 よくよく考えてみたのだろう。

 初めての時、あの飲み会の後のホテルで嬢とは一緒だったのだ。

 今更恥ずかしくもないと。

 

 向こうも拒否らないし。

 そんなこんなで遠慮する理由も消えたらしい。

 

 退勤するから待っててと言い残し何処かへ。

 これを置いてくほど鬼ではない。

 というか、後のことが怖い。

 酒場のおばちゃんも、娼館の嬢も、当然ノアも。

 みんな繋がっているのだ。

 

 俺の人間関係の狭さの弊害がこんな所に……

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