ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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旅路 4

 ぼーっと、窓の外を眺める。

 

 見慣れた街並みが視線の先を流れていく。

 closedの看板のかかったあそこ。

 数日前に、受付嬢と飲みに行った店だ。

 他にも……

 馴染みのある店舗の前を何軒か通過。

 

 普段は基本徒歩だからね。

 馴染みのある景色でも、少しその見方が変わるだけで新鮮に見えたりするものらしい。

 

 ついさっき、その見慣れた街の中で迷子みたいな状態になってた訳だが。

 言い訳させてくれ。

 あれは滅多に行かないような、しかも住宅地に迷い込んでしまったせいであり。

 流石にね。

 馬車が利用するような大通りとなれば。

 俺のポンコツな頭脳にもインプット済みである。

 

 馬車はそのまま門をくぐり街を出た。

 景色が草原へと変わり、少し遠くの方には森も見える。

 

 俺が普段、薬草採取に行ってる場所だ。

 休日に職場を見るのはどうも。

 まぁ、今の仕事は大してキツくも無いので特段不快感は覚えないのだけど。

 多少微妙な気分にはなる。

 

 それに、今の時期以外ならこれ以外の感想は出ないのだろうが。

 まだまだ稼ぎ時。

 普段以上に、多くの人が街の外に出ている様子。

 

 全員が下を向き。

 四つん這いのような格好になり。

 地面と、一心不乱に睨めっこをしていて。

 ちょっと異様な光景だ。

 

 皆、生活がかかっているからな。

 人目など気にしてる場合ではないのだろう。

 

 それにこれだけ居るからこそ、他の事を気にせず地面を凝視出来てるとも言える。

 普段だと、草原でも魔物がうろついてるからね。

 頻繁に顔を上げるか。

 もしくは1人は見張りが必要だし。

 そもそも、咄嗟に動けるように四つん這いになるのは厳禁だ。

 

 奴らも生き物だからね。

 わざわざ、冒険者が大量に居る草原まで出てきて。

 自分から死にに行くバカはいない。

 

 スラムの子供らが出て来れるのもこれが理由。

 いくら稼げるとは言っても、リスクとリターンが釣り合ってないと意味がない。

 俺的には命の危険がある時点でリターンが多少高くてもって感じだが。

 それを判断するのは各々。

 少なくとも。

 よっぽどのことがない限り、魔物に襲われる事がないのは確か。

 

 よっぽどってのは、森に近づいたりとか。

 後は、モンスターが群れをなして出てきたりとか。

 スタンピードだっけ?

 まぁ、そうそうある事じゃ無い。

 

 ……そんな街のすぐ近くの景色も過ぎ去り。

 変わり映えがしなくなってきた。

 

 アイテムボックスを開く。

 同乗者は少ないとはいえ人目もあるので、懐を探るような形。

 取り出したのは酒瓶。

 

 気分じゃなかったんじゃ無いのかって?

 せっかくの今日という良き日。

 朝から飲んだくれて。

 それで、いつもと同じように潰してしまうのが不本意だったってだけ。

 

 別に酒を飲む事自体に思うところがあった訳ではない。

 むしろ、こういうとこで飲むのは非日常感も合わせて気分がいい。

 

 馬車の窓に肘をかけ。

 風を肌で感じつつ。

 ちょびちょびと酒を楽しむ。

 

 ほんのりと暖かい春の気候。

 変わり映えのない景色も、酒のあてにするなら話は別。

 単なる鑑賞に耐えるのは数分程度だが。

 酒と合わせるだけで。

 最高のつまみに変わるのだ。

 

 例えるなら花見で飲んでる様な感覚だろうか?

 花はほぼ見えないけど。

 感じる物としては同質と言っていい。

 

 スプリングも入ってない車体は地面の凹凸をダイレクトに伝えて来る。

 

 揺られつつ、たまにこぼしそうになり。

 慌てて口をつけ。

 普通じゃ二重の意味で酔いそうな飲み方ではあるが……

 本当にチートには感謝してもしきれないな。

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