ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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旅路 5

 時間が過ぎるのはあっという間だ。

 春の空気を感じつつ。

 馬車に揺られ。

 心地よく飲んでるうちに、気がつけば日も傾き始めていた。

 

 酒瓶がまた空になり。

 もう一本飲もうかなんて迷っていた所。

 馬車が徐々にスピードを落とす。

 

 ……

 

 何かあったのだろうか?

 一瞬、嫌な予感が。

 

 咄嗟に魔眼を使うも、それらしき反応は皆無。

 馬車が停まったことでここに類する音こそ聞こえなくなったものの。

 それ以外は何も変わらない。

 少なくとも、魔物や盗賊の類ではなさそう。

 

 護衛は付いてるはずだからね。

 仮に襲われたとして。

 戦闘音は勿論、騒ぎすら聞こえないって事は無い。

 

 ドアが開き、何者かが車内へ入って来た。

 

「お客さん。すんませんね」

 

 誰かと思えば……

 商人?

 

「今日はここらで野営入るって事になりましたので、手間掛けますが一度お降り願います」

 

 あぁ、なるほど。

 日を跨いで移動する馬車に乗るのが久々だったから。

 忘れていた。

 確かにこれぐらいの時間だったな。

 今日はここで夜を越すらしい。

 

 日が傾きかけてきたとは言え、まだまだ明るい時間帯。

 もうしばらく馬車を走らせても何の問題もなさそうな物だが。

 真っ暗になったらおしまいだからね。

 

 これは前世の話にはなるけど。

 確か、キャンプブームが始まりかけてたぐらいの時期。

 数少ない休日。

 癒しを求めてソロキャンプに行った事がある。

 

 結論から言えば酷い目に遭った。

 

 安月給ではあったが、使う暇もないので勝手に溜まっていた貯金。

 ウキウキでキャンプ用品を揃えて。

 キャンプ場を予約して。

 就職して以来珍しく充実した数日だったかもしれない。

 

 無事、キャンプ場に到着。

 当日の天気も、そこそこ良かった気がする。

 

 自然を全身で感じ。

 コンクリートジャングルで荒んだ心が癒されていく感覚があった。

 椅子を広げてコーヒーを飲む。

 最高の時間。

 

 日も傾き、そろそろテントでも立てようなんて考え。

 普通に間に合うと思っていた。

 しかし、初めての事で想像以上に手間取ってしまったのもあり。

 テントが立つ前に辺りは真っ暗。

 

 初心者に夜の設営は厳しい。

 強いライトでも持ってれば話は違ったのかもしれないが。

 当然そんな物も無く。

 

 初めてのソロキャンは車中泊へと早変わり。

 車中泊を想定した車でもないので、翌日は体中バキバキで出勤。

 連休?

 ブラック企業にそんな物は存在しない。

 

 結局、癒されるどころか。

 貯金を無駄に減らし、心身へ共にダメージを与え。

 今振り返ると。

 過労死。

 これの一旦を担ったまである。

 

 何事も、街の外じゃ早め早めの行動が大切って事だ。

 港町行きの馬車とかなら、多少無理してでも進むのかもしれないけどね。

 この馬車はどうせ1日じゃつきっこないし。

 

「ん、んん〜〜」

 

 馬車を降りる。

 軽く腕を上げ体を伸ばす。

 

 別に、不快感があったわけでもないのだが。

 開放感はある。

 うん。

 やっぱり地面っていいよね。

 

 そのまま街道の脇にあった石に軽く腰を掛けた。

 ほら、俺って客だからさ。

 特に何か手伝いを頼まれる様な事も無い。

 ただ暇ではある。

 ぼーっとしてる間も、淡々と時間が流れる。

 

 視線の先では護衛であろう冒険者と、後は商人らが忙しなく動いていた。

 その道のプロ。

 当然、手際がいい。

 いつかの俺なんかとは比べるのも失礼なレベル。

 その様を見守る。

 痛い目を見た後も、変わらずキャンプ動画とかは好きだったからね。

 似た様な物。

 むしろ、より原始的で見てる分にはこっちの方が面白いかも。

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