スープを飲み干し、食器は商人に返却した。
……ふぅ。
ごちそうさまでしたと。
一食の量としては少々物足りない部分もあったが。
そもそも、馬車で揺られてる間から適当なものつまみつつずっと飲んだくれてた訳で。
空腹だった訳でもないのだ。
別段、腹の空きが気になるという事もない。
大した量ではなかったけど。
安い乗合馬車で出る軽食としてはこんな物なのだろう。
食事も終わり。
気がつけば、日も随分と落ちていた。
光源は焚き火ぐらいのもので。
周囲は真っ暗。
この光景もキャンプならではの景色だ。
まぁ、前世と違って。
この世界には眠らない街なんてものはほぼ存在しないと言ってよく。
街中でも夜がふければ真っ暗になるのだが。
これぐらいの時間だとね。
案外、明かりも多い。
飲み屋なんかはもうしばらく営業してるはずだし。
民家から漏れ出る光。
後は、街灯の類も大通りであれば数こそ少ないものの存在はしている。
ここは街の外。
そのどれもが存在しない。
あるとすれば、俺たちと同じような街の外で野営をしてる商人や冒険者。
他は、盗賊が持ち歩いている松明ぐらい。
前者はともかく、後者はお目にかかりたくはないかな。
日が落ちて仕舞えば、出来る事なんて皆無。
むしろ、明るい間に少しでも進みたいはずだからな。
朝は早いのだろう。
もうそろそろ就寝の時間である。
各自、テキパキと準備を進めて行く。
この馬車にベッドの様な快適を保証する物は積まれていない。
スペース的に当然である。
配られたのは麻布一枚。
ベッドどころか寝袋も無いらしい。
そういや……
この世界で見た事ないな。
実際のところ、あるのかないのかは知らない。
が些細な問題だ。
この場にないのだから、存在しないも同義である。
靴を脱ぎ、布一枚持ってテントの中へ。
ここが今日の寝室。
一旦、寝っ転がってみる。
地面が硬い。
布を下に引いてみたが、こりゃ誤差だな。
体を壊しそうな環境である。
そう思ったが。
各自、何やら用意があったらしい。
麻布よりは分厚そうなものを敷いている乗客が多数。
……慣れてますね。
それでも硬そうだが。
ま、無いよりはマシだな。
だから、あんな嵩張るものをわざわざ持ってきてるのだろうし。
なければ雑魚寝。
つまり、俺の雑魚寝が決定したっぽい。
チートさん。
今夜もお世話になります!
ちなみに、商人は馬車の方で寝るようだ。
一年の内の結構な日数を街の外で過ごす訳だからな。
それなりの環境を整えてるらしい。
そんな環境作れるなら、わざわざテント立てなくてもと思うかもしれないけど。
馬車はそんなに広くない。
座るのと寝るのじゃ使うスペース違うし。
仮に余裕あったとしても、空いてる部分には少しでも荷物を積んで商品を運びたいはずで。
俺らみたいな一般客を寝かすスペースは無いのだ。
馬車に就寝の設備まで求めたければ、ね。
食事と同じ。
それなりの金額掛けて。
富裕層向けの物を利用する以外ない。
テント内にて、各々自分の陣地をなんとなく確保した様子。
俺も角とは言わずも端をゲット。
特にやる事もない。
横になり、麻布にくるまって。
ちょっと物思い。
ここで寝るのって普通に危ないよな、と。
ふと思い立った。
この世界、馬車での居眠りすらかなり危険だと言うのに。
初対面の相手に、完全に隙を晒すのだ。
他の乗客はそこらへんどう思ってるのだろうか?
……あぁ、だからかな。
一緒に食事囲んで積極的に仲を深めようとしてたのは。
海外の方が日本よりフレンドリーな理由。
自分が無害だと、ちゃんと相手にアピールする必要があるからだっけか。
危険な人がいるかもしれない。
それ前提のコミュニケーションで、自然とフレンドリーに見える。
どこだったか、こんな話を聞いたことがある。
つまり、焚き火眺めて孤立した俺。
危険因子なのでは?
変な動きしたら躊躇いなく殺されそうな気がする。
街の中でも衛兵頼りないのに。
外の事件で、頼りになる訳ないからね。
自分の身は自分で守る必要がある。
そりゃ、敏感にもなるか。
まぁ、いい。
警戒しててもしょうがない。
過剰反応されても。
悪人に攻撃されても。
問題ない。
どうせ死にはしない。
ナイフだって、刺されたとて向こうが折れるだろうし。
ただ、俺への加害は痛くもないが。
荷物を盗まれると困る。
貴重品は元々アイテムボックスに入ってはいるけど。
それ以外も、全部回収した方が良さげ。
俺の荷物。
形だけで、中身はすっからかんになった。
他の街へ向かう馬車に乗っててこれ、見られたら要らぬ疑惑を持たれる気もする。
ま、その相手ってどうせ犯罪者だろうし。
何か言われる前に首を飛ばして仕舞えば何も喋れまいて。
んじゃ、おやすみなさい。