ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

189 / 267
旅路 11

 この辺り着いた時に見つけた、良さげな石に軽く腰掛け。

 日の出を眺めつつ。

 感傷に浸ってる内に他の奴らも起き出してきた。

 

 眩しそうに空を見上げたり、腰に手を当てて伸びをしたりと。

 さっきまでの自分のリプレーを見ているかの様な行動。

 

 たまたま同じ馬車に乗り合わせただけの乗客。

 何か会話した訳でもないし。

 当然、考えてることなんて本来分かりようもないのだが。

 流石にね。

 察しぐらい付くものだ。

 人間、感じるものに大した差は無いらしい。

 

 それが何って事もないのだけれど。

 側から見ていて、その様がちょっと面白いなと。

 ほら、俺って普段チートにかまけて人と違うリズムで動いてるから。

 転生してからというもの。

 実はこの手の経験は希少だったり?

 

 乗客はそんな様子でのんびりとした空気が漂っているが。

 冒険者と商人は忙しそう。

 テキパキと、テントやらなんやらを片している。

 

 早々に出発する予定なのだろう。

 

 ここは街の外なのだ。

 んな場所に長居して良い事なんて皆無と言っていい。

 魔物にしても。

 盗賊にしても。

 最善は、出会わない事である。

 

 あっという間に撤収が完了した。

 流石プロ。

 昨日、設営を眺めてた時も思ったけど本当に手際がいいのな。

 

 ……アレだな。

 偶には今日みたいな体験も良いとか思っていたが。

 プロありき。

 素人のやるものじゃないのかもしれない。

 

 次やるとしても、ソロはやめておいた方が良さそうだ。

 俺だけだと。

 チートがある以上、前世の二の舞にはならない。

 が、片付けめんどくさくなって。

 テント丸ごと収納。

 二度とアイテムボックスから取り出さなくなって実質廃棄。

 

 うん、余裕であり得る未来だ。

 面倒ごとはプロにお金を払うのが一番コスパがいい。

 

 片した物の積み込みも終わり。

 馬を杭から外して馬車に繋ぎ直している様子。

 そろそろ時間か。

 

 周りもそれで察したのだろう。

 商人に声をかけられるでもなく、続々と馬車に乗り込んでいく。

 俺も昨日と同じ席を確保。

 またしばらく馬車に揺られる時間が続きそうだ。

 

 商人が乗客の人数を数え。

 それだけで点呼は良しとされたらしい。

 ゆっくりと馬車が動き出した。

 

 軽い慣性を感じつつ。

 揺れが伝わる。

 

 ふと、窓に肘をかけ外へ目を向けた。

 自然豊かな景色が横へと流れる。

 その中で、一点。

 焚き火の後に放置された、炭やら灰が随分と異質に見えた。

 

 前世と違って後処理の必要はない。

 そんな法律も無いのに。

 ゴミで馬車の重量を増やすのは愚かとしか言えないだろう。

 人間の絶対数も少ないしね。

 ただ、目には付く。

 なんと言うか、ちょっと悪いことでもしてる気分だ。

 

 いや、まぁ……

 バレなきゃ良いとか言って平気でそれ以上の犯罪行為も。

 結構やってはいるのだが。

 

 何故だろうか。

 

 前世で身近だった軽犯罪。

 この方が、罪悪感を刺激される気がする。

 我ながらこれ。

 中々に狂った倫理観だとは思う。

 

 多分、有名人のちょっとした不祥事。

 これが殺人以上に重大な事件かの様に扱われていた前世の価値観。

 今だに引きずっているのかも。

 

 つまり俺のせいではない。

 環境の責任、そう声高々に主張したい所。

 

 窓の外に視線を戻す。

 とっくに昨日のキャンプ地は通り過ぎていて。

 焚き火の後なんて見えもしない。

 

 トラブルがなければ。

 おそらく、この馬車は今日中には温泉街に到着する予定だろう。

 

 昨日の様に酒を飲むでもなく。

 ゆらゆらと。

 動きに身を任せたまま、ただただ時間を貪る。

 

 街の外で夜を明かしたのなんて。

 本当に久々。

 寝起きに予想外のトラブルこそ発生したものの。

 まぁ、なんだかんだ良かったのかな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。