ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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親子

 門をくぐり街の中へ。

 ざっと、数ヶ月ぶりの温泉街である。

 

 軽く伸びをして、深呼吸。

 馬車に乗ってるうちから感じてはいたが、温泉地特有の匂い。

 それが鼻腔を刺激する。

 この匂いを嗅ぐとここの街に来たなって実感が湧く。

 

 ……

 

 しかし、なんだろうか?

 通い慣れた。

 見慣れた街並みのはずが、景色に妙な新鮮味を感じる。

 

 王都じゃないのだ。

 そう短期間で街並みががらっと変わったりなんて、そんなことも当然なく。

 立ってる建物自体に変化は無い。

 うん。

 この前来た時と同じだ。

 

 そもそも、前回から半年経ってないしな。

 前世の都心だってこんなスパンで急激な変化などしないだろう。

 

 では何故か?

 普段との違いといえば雪ぐらいで……

 ん?

 それじゃね?

 

 例年、俺が温泉街来る時期ってほぼ雪が積もっているのだ。

 しかし、今はもう春。

 ウーヌの街より雪の多い地域ではあるのだが、すっかり化粧も落とされているご様子。

 

 それだけで、と思うかもしれないけど。

 雪の有無というのは受ける印象がかなり異なるのだ。

 同じ場所だったとしても。

 季節が変わると全く違う顔を見せてくれる。

 例えば夏のスキー場とか。

 びっくりする。

 通い慣れた場所でも、まるで見覚えがなさすぎて。

 ……雪化粧とはよく言ったものだな。

 

 まぁ、こう歩いてみると新鮮味があるだけで中身が変わってない事はすぐに実感するのだが。

 

 温泉街に入ってすぐのこの辺りもそう。

 相変わらず、土産物屋なんかが数軒並んでいる。

 見知ったお店ばかりだ。

 観光地だからね。

 この街以外じゃあまり見ない光景であり。

 通い慣れた俺には見慣れた景色である。

 

 ただ、この時間だといつもは閉まってたような気も……

 今は日の出から数刻といった所、昼時まではもうしばらく時間がかかる。

 道中の戦闘もなく、順調な旅路だったからね。

 予定よりかなり早く到着したのだ。

 

 強いて違いを挙げるとすればここだろうか?

 店自体は同じなのだから、新鮮味を感じるほどのものではないのだけど。

 

 理由は、歩いてる人々を見れば察しがつく。

 本格的なシーズンの前ではあるが、やはり観光客はいるらしく。

 それっぽいのがちらほら。

 街の住人と違い、結構裕福そうな格好をしている。

 

 他の街に遊びに来れるぐらいだからな。

 偏見ではなく。

 実際、金を持ってるのは間違いない。

 

 これからにかけて、稼ぎ時だもんな。

 冒険者ギルドが冒険者で溢れてたのと同じ理由だ。

 儲かるから、それ一択。

 張り切って店を開けない手はない。

 

 むしろ、冬期のやる気が無いのかもしれないな。

 あまり儲からないのは想像に難くないし。

 俺やらおっちゃんみたいな連中がいるから一応開けてくれてるのかもしれないが。

 人雇うと赤字になるし。

 それで、営業時間も短縮って事なのだろう。

 

 この街からすれば観光客は増えれば増えるほど良いのだろうが。

 俺的にはあまり喜ばしくはない。

 

 せっかく温泉入りに行くのだ。

 温泉自体は好きだが、あまり混雑してるとね。

 良さ半減。

 癒しを求めて行くのだから。

 理想としちゃ、空いてれば空いてるだけ良し。

 

 ま、観光客が増えてるとはいえ。

 今ならまだ許容範囲。

 そもそも、全くいないと潰れちゃうしね。

 流石にそれは望んでいない。

 

 歩き慣れたはずの街並み。

 新鮮に眺めて。

 そのまま中央の通りを進む。

 

 少し登ったところ、目的の宿に到着した。

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