ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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親子 23

 あー、食った食った。

 ごちそうさま。

 

 温泉街ついてから、何だかんだほとんど食べてなかったからね。

 結構腹を空かせていたのだ。

 この鍋、かなり食べ応えもあって大満足である。

 

 窓枠に手を置いて軽く体重を預けた。

 外の景色が目に映る。

 日もすっかり落ちきった様子で、街も森も黒一色に染め上げられていた。

 かろうじて、いくつか蝋の光が漏れて見えるだろうか?

 

 ……春の夜風を感じる。

 鍋で熱った身体に、実に心地がいい。

 

 風呂上がりもそうだけど。

 体温が上がったところに当たる夜風は、ある種特別な力を持ってる気がする。

 涼しいから気持ちいいってのはもちろんなのだが。

 それだけでは無いんじゃないのかなって。

 

 春や、普段温泉街に来てる冬。

 この時期の夜風が良いのはどおりである。

 そこに疑問はない。

 

 ただ、これが夏だったらどうだろう。

 

 夜間はおそらく昼より気温が落ちているはずで。

 とは言え、吹くのは生暖かく湿った風。

 不快にしかならない様に思える。

 所がどっこい、これ何故かそうはならないんだよね。

 

 無論、その感覚がゼロとは言わないが。

 例え真夏日の夜風だったとしてもどこか心地よさを覚えてしまうのだ。

 

 不思議な物だ。

 まとわりつく熱気や、肌のベタつきも感じてはいるんだけどね。

 ある種、中毒性に近いものがあるのかもしれない。

 

 なーんて、窓の外を眺めながら思案してみたり?

 

 後ろでは獣っ娘が夕飯の片付けをしている。

 カチャカチャと、食器を重ねる音が静かな室内に響く。

 

 今は既に業務時間外。

 多分、俺も手伝ったほうがいいんだろうなと思いつつ。

 何も言わずにやってくれてたから。

 このまま、お願いしちゃいたいのが本音。

 

 まぁ、それをただじっと見てるのも気まずいし。

 部屋の隅に逃げて来たのだけど。

 俺が景色見て適当な事考えてるうちに全部終わらないかな、と。

 

「……何か手伝ったほうがいい?」

「え!? 大丈夫です。ご主人様はゆっくりしててください」

 

 我ながら、ちょっとアレな聞き方だったとは思うが。

 まず確認したことを褒めて欲しい。

 

 いや、ね。

 そりゃ全部やってくれるならそれに越した事はないんだけど。

 流石に罪悪感が……

 

 何というか、一応俺も人間である。

 獣っ娘1人働かせて。

 それを尻目にボケっと夜風に当たってるのも。

 少し、いかがなものかと。

 

 その結果、お断りされた訳だが。

 結果は結果である。

 黙って見てるよりは何倍も健全なはず。

 

 ……

 

 手伝いを断ったのって、俺に気を遣っての話だよね?

 奴隷だから、ご主人様を働かせるわけにはいかないとかそんな理屈。

 実際。

 俺の申し出に予想外な事言われたって顔してたし。

 

 邪魔になるからとか。

 別に、そんな理由ではないよね?

 

 ま、考えても仕方ない。

 どちらにせよ、これで大義名分も手に入ったことだし。

 獣っ娘の言う様に堂々とゆっくりさせて貰おう。

 

 床に寝っ転がる。

 自然と、天井の方へと視線が向く。

 

 普段から泊まってる部屋ではないのだが。

 作りは一緒。

 見慣れた天井だ。

 天然の木材を使ってる訳だし、本当は違いもあるのかもしれないけど。

 そこまで細かいところは覚えていない。

 

 さっきまでも獣っ娘に片付け押しつけて、客観的に見れば散々休んでいたのだけれど。

 寝っ転がるのは違うかって。

 俺なりに微々たるものではあるが遠慮していたりもしたのだ。

 

 これ、やっぱりいいな。

 

 腹一杯美味い飯食べて、満腹のまま横になって。

 硬いが、ひんやりとした床を背中に感じながら何をするでもなくぼーっと天井を眺めるだけ。

 宿の特権である。

 自宅でも飲食店でもこうはいかない。

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