ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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親子 26

 この温泉街自体、普段来てる冬の時期に比べ観光客は増加していて。

 風呂場の様子から見ても。

 宿に泊まってる人数が何倍にもなってるのは間違いない。

 

 その影響で部屋もいつもの角部屋じゃなかった訳だらかね。

 

 単純に考えても、隣室がふた部屋に倍増。

 クレームが入る可能性も上がっていると言えた。

 

 これまでこの宿に泊まっていて、周りの声とかほぼほぼ聞こえてなかったし。

 当然、クレームを貰ったとも無い。

 だからちょっとばかり防音性能を過信していたのかも。

 

 前世でも、騒音が原因となる近隣トラブルはあるあるなのだ。

 それが異世界になって。

 この世界の一般的な建築物の防音性能が前世よりずっと弱いのは想像に難くない。

 ……これは、マズったな。

 

 いや、一応気を使ってはいたんだけどね。

 声が漏れないように、口で塞いでみたりとか?

 言い訳だが。

 

 結局、かなり盛り上がっちゃったからな。

 獣っ娘は長いことお預けされてたし。

 俺も、ランジェリー身につけてセクシーな姿になった彼女のギャップにやられてしまった。

 こんな娘に誘惑されたらねぇ、我慢ならないって物よ。

 些細な気遣いとかはどこかへ吹っ飛んでしまった。

 

 結果、この有様である。

 どうしよ。

 

 ちなみに、もう1人の当事者である獣っ娘といえば。

 ドアのノックに一瞬動きを止めたものの。

 無視することにしたらしい。

 そのまま俺の息子に手を伸ばしてこようとして。

 

 ……おい!

 

「ちょ、ちょっと待て」

 

 流石にそれは無い。

 クレームにはさっさと対応したほうがまだ被害は少ない、はず。

 

 言うて、声出してたのは主に獣っ娘だし?

 責任をなすりつけるとかではなく。

 野郎の声ならあれだが、そこまで怒ってないという可能性もある。

 

 ただ、うるさくて眠れないから軽く苦情言いに来ただけとか。

 

 うん、有り得なくはないな。

 むしろその可能性が高い気がしてきた。

 現実逃避?

 うるせー、だまらっしゃい。

 

 何はともあれ、と。

 ベッドを降りたものの、このまま出るのは不味いか。

 俺は全裸だし。

 獣っ娘も、下着こそ着ているが大事な所は全部見えていて。

 裸よりエロティックな格好をしている。

 

「まず服を着ようか」

「えー……」

 

 文句を言うんじゃありません。

 

 不満げな表情を隠しもしないが。

 渋々と言った様子で、ベッドの横に放り出されている服を羽織る。

 

 俺は独占欲が比較的小さい人間だと思う。

 関係がある女性に対しても。

 それは、人の人生に責任を取りたくないし取るような立場になりたくもないって事に由来する。

 

 恋人なんて転生して以来作っていない。

 関係を持ってる相手も、基本はお店の娘かセフレばかり。

 独占する気はないし。

 むしろ、独占欲を発揮したらキモがられるだろう。

 

 ただ、獣っ娘は奴隷だからね。

 言っちゃえば俺の所有物なのだから、独占欲が湧くのは自然な話で。

 つまり。

 あんま他人に見られたくはない。

 

「……って。なんで俺の服着てんの?」

「ダメ、ですか?」

 

 大人しく服を着たと思ったら、俺の服を着ていた。

 

 いや、別にダメってことはないけど……

 ブカブカの服の中にすっぽり。

 彼シャツってやつだ。

 その上で、顔を出し切らずに半分服の中に潜り込んでいて。

 くんくんと匂いを嗅いでいるご様子。

 

 我慢させるならその代わりにって事なのだろう。

 まぁいいや。

 

 ただ、服を取られてしまった。

 当然俺が獣っ娘の服着るわけにもいかない。

 普通に入らんし。

 

 仕方なく、荷物に手をつっこみ。

 アイテムボックスから新しい服を取り出しさっと着替える。

 

 身だしなみを軽く整え、ドアを開けた。

 

「すいません。お待たせしてしまって」

「ロルフ様、夜分に失礼します」

 

 ドアの向こうにいたのは女将さんだった。

 なるほど?

 

 ひとまず、クレームを言いきにた隣室の客では無かったらしい。

 良かった。

 ……いや良かったのか?

 

「女将さん!」

 

 ベッドの上で、俺の服にくるまっていた獣っ娘であるが。

 相手が女将さんだと分かって真っ先に駆けてきた。

 

 さっきまでぶーたれてた癖に。

 抱きついて、尻尾もぶんぶんとふっている。

 よく懐いてる事で。

 

 って、お前……

 

 どうやら、上だけ羽織って下は何も着ていなかったらしい。

 ブカブカだから一応隠れてはいたのだけど。

 尻尾に持ち上げられたせいでお尻が丸見えである。

 

 本人はそんなこと気にもしていないのか、女将さんになでてもらってご満悦の様子だが。

 

「あのー。もしかして、クレーム入っちゃってたりとか」

「いえ? その様な話は聞いておりませんが」

 

 ……セーフ。

 ほら、直接文句言わずにスタッフ経由で女将さんにクレーム行く可能性も全然あったからさ。

 それが、ちょっと怖かったのだ。

 

 今日は早く仕事を終わらせるって話だったのに、俺が余計な面倒ごと増やしたりとかしたら。

 想像するだけで恐ろしい。

 

「ロルフ様?」

 

 ジト目、こんなこと聞いてきた時点でって話だ。

 

「今の私が言えた事ではないですけど。少し気をつけてくださいね」

「はい……」

 

 おっしゃる通り。

 返す言葉もございません。

 

 以前、獣っ娘と女将さんの初顔合わせの時だったか。

 連れ込むのに目くじらは立てないが。

 あまりうるさくはするなと釘を刺されているのだ。

 

 ひとまず、クレームとかじゃなくて良かった。

 

 ……と言うかだ。

 女将さん。

 この部屋に来たって事はそういう事で良いんだよね?

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