ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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二巻発売記念SS
河岸


 すっかり日も傾き、街が赤く照らされる今日この頃。

 いつの間にやら雪解けの季節も過ぎ去り、そろそろ初夏といってもいいだろうか。

 少し強めの、それでいて心地の良い風にどことなく気分も上がる。

 

「よ、やってる?」

 

 行きつけの居酒屋の扉をくぐる。

 

 肉の焼ける匂いと酒の香り。

 床や壁は年季が入り、ところどころ傷みや補修したであろう跡もある。

 

 店内は結構賑わってるご様子。

 

 仕事終わりだろう冒険者や職人。

 飲み始めたばかりらしく、店主から受け取った酒を机に置くまでもなくそのまま豪快に喉に流し込んでいる。

 

 一方、店の奥。

 いつから飲んでるんだか、フォークに刺したつまみをほんの少しだけ齧っては酒をちびちびと飲むのんべえ。

 顔も真っ赤だし、ただ座ってるだけなのに体幹が怪しい。

 

 なんとも雑多な空間である。

 

 苦手な人間もいるだろうが、俺は嫌いじゃない。

 むしろかなり好きだ。

 これでこそ大衆居酒屋ってもの。

 

 ま、俺も雑多側の人間だしね。

 仮にこの空気を嫌って別のとこ行ったとして、そんなとこ場違いで浮く姿がありありと想像できる。

 

「いらっしゃい! って、旦那かよ」

 

 来客に気づいた店主が笑顔で話しかけて来たと思ったら、俺を見るなり営業スマイルを引っ込める。

 

 俺に気遣いするのは無駄だってか?

 失礼なやつめ。

 

「俺で悪かったな」

「冗談だって、旦那。空いてるとこ適当に座ってくれや」

「はいはい」

 

 軽口。

 

 本当に否定する気があるのか、さらさら疑問である。

 俺と店主の関係なんてそんなものか。

 雑なのがデフォルト。

 実際、冗談だと否定したそばから接客を放棄して適当に座れとのこと。

 

「テーブル席使っていいか?」

「あ、すまないが一人でテーブルは……。って、ん?」

 

 店主が改めて俺を見て、それから視線が左右に。

 言葉にこそしないが意外とでもいいたげ。

 

 今日は一人じゃないからね。

 

 ……こう言うと寂しいやつみたいだな。

 違うぞ?

 確かに普段この店には一人で来ることも多いが、別に毎回って訳じゃないし。

 そもそも、一人が好きだから一人な事が多いのであって。

 人間関係が皆無な訳ではない。

 

 店主の偏見である。

 俺みたいなおっさんは大抵一人だろうという。

 俺は被害者だ。

 

 そう、この前ノアと来たし?

 いい歳して、ノア様とか年下の冒険者を様付けするムーブしてたじゃん。

 忘れたのか?

 

 え、ノアと来たのなんてかなり前の話だろって?

 前でも一緒に来たものは来たのだ。

 

 決して俺はぼっちではない!

 

「両手に花か?」

「うっさい」

 

 俺の無言の訴えが通じたのだろうか。

 視線を一通り彷徨わせた後、何を言うかと思えば核心には触れずにくだらないことを口走る店主。

 

 空気を読んだことに良しと言いたい所だが。

 そのチョイスが……

 店主の言葉に受付嬢が反応する。

 

 あ、そうそう。

 今日はギルドの受付嬢を連れて飲みに来たのだ。

 後ギルドに併設されてる酒場のおばちゃんも。

 

「花って、いいこと言いますね! おじさんも私のこともっと大事にしてくれてもいいんですよ? 花はお世話しないと枯れちゃうんですからね」

 

 店主が余計なこと言うから。

 受付嬢に変なスイッチが入ってしまったらしい。

 

 いや、スイッチは入りっぱなしか?

 いつもこんなんだし。

 センサーに触れて起動しちゃったの方が近いか。

 

 って、んな些細な表現の差はどうでもいいんだが。

 まだ酒も入ってないのにめんどくさいやつである。

 

 おばちゃんもおばちゃんで、両手となると私も花って事かい? と嬉々として反応する。

 

「そういうのじゃない。単に職場の人間と飲みに来ただけだ」

「おじさん冷たいです! まるでこの飲み会が仕事みたいな、渋々参加したみたいな……」

 

 俺が店主の言葉を否定すると、受付嬢が間髪入れずに文句をつける。

 

 お前が飲みに連れてけうるさいから連れてきたんだろ。

 十分お世話してるに入るって。

 それに、構い過ぎとか栄養あげ過ぎても逆に枯れちゃうからね。

 うん。

 ……いや、別に嫌とかでもないんだが。

 

 これくらいの軽口は良いだろ、許して。

 ちゃんと奢るから。

 

 ちなみに、おばちゃんは受付嬢が俺に飲み連れてけとたかってきた時、たまたま近くにいたのでついでに誘ったのだ。

 いつもお世話になってるからね。

 

 まぁ、たまたまってか。

 ギルドで飲んでたんだから、そりゃ当然近くにいるのだが。

 本当おばちゃんにはいつもお世話になってます!




ってことで、第二巻の発売を記念して連載を再開します!
……お察しの通り前回と同じく書籍の宣伝です。

予定では10話ほど投稿するつもりです。
まぁ、現状はプロットという名の落書きが大雑把にあるだけなので、予定は未定なのですが……
前回のSSも数話だけ投稿するつもりが、気づけば二桁に乗っていましたし。
作者の予定は信頼度が低い可能性大?

しかし、まさか続刊が出せるとは。
もちろんそのつもりで書いてはいたのですが、商売ですからね。
単巻でさよならなんて可能性も十分にあったわけで。
正直ほっとしました。

『ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者2』

6/10頃には書店に並ぶそうで、通販サイトなどではすでに予約も始まっているみたいです。
ご予約いただけると、作者がとても喜びます。

-追記-
コミカライズ企画も進行中です!!
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