ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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河岸 4

 チュンチュン、チュンチュン

 

 小鳥のさえずりが聞こえる。

 ぼんやりと瞳をあけると、窓から差し込んだ朝日がちょうど俺の目元に重なっていた。

 

 うっ、眩しい……

 

 時期としては夏に入りかけてるとはいえ、朝はまだ肌寒い。

 寝起きで伸びをしつつ布団に潜り込む。

 ベッドかどこかに布団の一部が挟まっているのだろうか、潜り込む際に少々の抵抗を感じた。

 

 が、確認する元気はまだない。

 今はぬくぬくとベッドでだらけたい気分である。

 

 目線だけを布団から出し、眩しい朝日から逃れて窓とは反対を向く。

 にしても、知らない天井。

 他も、壁も家具も見覚えのない内装である。

 

 ……なぜ俺はこんなとこで寝て、

 あ、そっか。

 そういえば昨夜は宿に泊まったんだっけ。

 

 横には受付嬢。

 すやすやと気持ちよさそうに眠っている。

 

 布団の上で。

 

 さっきの抵抗、どうやら彼女が重りになっていたらしい。

 しかし、寒くないのだろうか?

 布団をかぶってないだけならまだしも、生まれたままの姿である。

 

 軽く肩を揺らしてみるも、

 

「んー……」

 

 まだ眠そう。

 どうやら寒さで起きるという事はないらしい。

 まぁ、受付嬢がいいならいいけど。

 

 窓の外を見るにもうそこそこいい時間な気がするが、昨夜中途半端な時間に起きたせいだろうか?

 まるで起きそうにない。

 

 昨夜、酔っ払った受付嬢を背負ってこの宿に来た。

 初めは代金だけ支払って彼女を置いて帰ろうと思ったんだが、離してくれず。

 それどころか俺のことをベッドに引きこむ始末。

 

 送り狼を襲うとは、肉食傾向の強い羊もいたものである。

 

 酔っ払って、完全に出来上がってそうだったから遠慮していたんだが。

 どうやら無駄な気遣いだったらしい。

 

 俺が、目の前の据え膳をどうしてくれようかと思考してるうちに。

 いつの間にか服を脱ぎきっていた受付嬢。

 随分と思い切りのいい、漢らしい脱ぎっぷりである。

 

 ……そういや、この前酔っ払った時も脱いでいたような。

 

 ふと思い出した。

 彼女、脱ぎ癖でもあるのだろうか?

 

 んな事を考えてたら、顔に出てたっぽい。

 ポカリと一発、少々強めなのをもらってしまった。

 

 その状態で。

 当然、胸元が大きく揺れた。

 

 痴女かな?

 

 思わず口から漏れた。

 咄嗟に胸元を腕で押さえる受付嬢。

 流石に恥ずかしかったらしい。

 

 そもそも、この宿に連れ込んだのはおじさんだから私は痴女じゃないとの抗議を受けた。

 が、家を知らなかったから仕方ないと反論。

 そういう宿だったって?

 こんな時間だからそういう宿しか空いてなかったんだよ!

 

 そんなこんなで、軽く言い合いつつ楽しく過ごした。

 おかげで起きそうにないが。

 ……そういや、受付嬢の仕事はいいのだろうか?

 

「起きなくていいのか? 仕事は」

「大丈夫。もう少し寝てく……」

 

 そうかい。

 

「んじゃ、俺はお先に」

「冒険者ギルド行っても私いませんよ」

「分かっとるわ!」

 

 そりゃここで寝てるんだからな。

 居るわけない。

 んな自明な事をうわごとのように言って、まだ昨夜のアルコールが残っているのだろうか?

 

「昨日言ったじゃん、薬草の値段上がって最近金貯まってるって」

「?」

 

 覚えてなさそう。

 

 まぁ、結構酔っ払ってたからね。

 さもありなん。

 

 さて、どこ行きますか。

 旅先まで毎回馬車移動というのも芸がない。

 転移?

 あれは風情が、ね。

 ドラゴン便?

 いくら金が貯まってるとは言っても、そこまでの大金はない。

 

 宿を出て大通りを進み、そのまま街の外れへ。

 近くの川。

 

 森の中の小川ではなく、そこそこ川幅のあるとこ。

 船がいくつもとまっている。

 と言っても、港と呼べる規模じゃない。

 

 小川よりでかいとはいえ、運河として使うには狭いのだろう。

 ここの街はどちらかといえば陸路の方がメインだ。

 

 でも、船で運ばれる荷物もそこそこある。

 前世、鉄道や自動車が普及する前、水運は輸送の主役だった。

 この世界でもそれは同じ。

 

 これで行くか。

 夏の初め、舟に乗って川の風を感じながら他の街へ。

 気持ちよさそう。

 

 思いつきなので特に予約とかしてない。

 どこ行きがあるのだろう。

 

 まぁ、どこか目的地があるわけでもないのだし、適当な舟に乗せてもらおう。




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