ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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河岸 6

 男の声に促され、せかせかと舟に乗り込む。

 俺の席を空けるために後回しにした荷以外はすでに積み込み終わっていたのだろう。

 乗り込むなり舟を係留していたロープを外し岸を離れた。

 

 行くぞとかなんとか言っていたが、あの男はこの舟には乗らないらしい。

 

 まぁ、色々指示飛ばしてたしな。

 いくつかの舟を束ねるまとめ役なのだろう。

 下手にここを離れるわけにもいくまい。

 

 舟の同乗者は3人。

 船頭さんと、あとは俺の他にも1人客がいたらしい。

 

 目が合い、ぺこりと頭を下げる。

 

 水の流れに揺られ、ゆったりと川を下っていく。

 屋形船ってほど優雅ではないがそれほど揺れは大きくない。

 あんまりの濁流じゃ、そもそもこういう舟での水運自体が成り立たないだろうし。

 標高だってそう高いわけじゃないからね。

 

 初夏、比較的小さな舟での川下り。

 ぼんやりと風景を眺める。

 川に沿って、新緑の香りを乗せた風が抜けていく。

 

 なんて気持ちのいい体験だろうか。

 

 ……ん?

 そんな黄昏てて良いのかって?

 

 確かに、もうすっかり街の外に出ている。

 舟には船頭1人に乗客2人。

 このサイズの舟、一隻一隻に護衛を付けるわけにもいかないからね。

 護衛はいない。

 魔物に襲われたらひとたまりもなさそうな状況ではある。

 

 が、心配ご無用。

 川は大事な物流ライン、1日に何十隻も行き来するのだ。

 

 一隻一隻に護衛はつけないが、代わりに舟商人が費用を出し合って周囲の警備を雇っているとか。

 ギルドの掲示板でもそんな依頼を見かけた覚えがある。

 

「あのー」

 

 そうやってのんびりと黄昏ていると、横から声を掛けられた。

 同乗者の青年である。

 

「あなたもすぐ下の河岸までですよね、何かご用事が?」

「いや、ちょっとした気分転換にね」

 

 沈黙が気まずかったのだろうか?

 チラチラと視線を感じてはいたが、ノアとの一件以来ギルドの中じゃこんなの日常茶飯事だったのであまり気にしてなかった。

 

 目的地を知ってるのは、乗り込む前にすぐ横で男と話してたからな。

 結構な声量である。

 そりゃ、舟に乗ってれば耳に入るってものだ。

 

「あなたは?」

「僕は……、僕も同じようなものですかね」

 

 へぇ、珍しい。

 

 自分で気分転換とか言っておいてなんだが、気分転換に街を出て他のとこへ行こうなんて言うほど簡単じゃない。

 この舟も、乗るのに銀貨1枚ほど掛かってるしね。

 

 普通に相場通りだし、商人がぼってる訳じゃないのだが。

 それでも、おいそれと払えるほど安価なのかと問われると微妙。

 庶民には結構な出費である。

 

 この青年、服装的にあまり金銭に余裕があるようにも見えないし……

 若さゆえの無鉄砲さってやつかね?




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