ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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河岸 7

「へぇ、お二人とも気分転換かい」

 

 船頭が会話に混じる。

 

 気分転換なんて珍しい理由で乗ってきたのが2人もいたら、そりゃ気にもなるか。

 そもそもこの舟3人しか乗ってないしな。

 興味がなかったとしても自然と話が耳に入る距離感にいるわけで。

 

「みたいですね」

「その目的なら、この時期はピッタリだな」

 

 確かに、舟に乗るならこの時期だ。

 冬が論外なのは当然ではあるが、春先もまだまだ寒い。

 真夏となると流石に暑いしね。

 

 気温に限った話じゃなく、冬だと仮に舟が転覆なんてしたら一大事である。

 川舟である以上、岸まで何キロなんて話にはならないが。

 冬の川なんて数十秒入るだけでも危ないのだ。

 乗客からしたら恐怖もあって気分転換なんて呑気なこと言ってられまい。

 

「……そうなんですね」

 

 青年がぽつりとつぶやいた。

 俺と船頭の話を聞いて初耳といった様子。

 

 少し呆れたように船頭が返す。

 

「そりゃ、そうだろ。寒い時期は水も冷たいし風も強いし、暑い時期は水に飛び込めるのはいいが遮るものもねぇからな」

「なるほど」

 

 ん?

 

 青年、この言いぶりを見るに今の時期を狙って乗ったわけじゃないのか。

 なのに気分転換、ねぇ。

 

「運がいいな。今以外じゃ、多分気分転換にならねぇぞ」

 

 間違いない。

 客舟とか、もっと下流で広い河川なら別だが。

 

 ここで荷舟にのって気分転換になるのなんて今かあとは秋口ぐらいだろう。

 

「そうだったんですね。いつも動く前によく考えてからにしろって言われてるんですが、なかなか……」

 

 あ、そういう感じなんだ。

 ぱっと見、あんまりそうは見えなかったけど。

 どちらかといえば文学系のイメージ。

 線も細いし。

 

 って、これは偏見か。

 

 でもまぁ、荷舟に乗って他の町まで行こうとしてる時点でよな。

 おとなしそうに見えて結構ヤンチャな性格である。

 

「へぇ、人は見た目によらねぇな」

 

 船頭も似たような事を思ったらしい。

 

「しっかし、気分転換で舟で他の街までって。あんたらどんな仕事してるんだ?」

「俺はただの冒険者だよ」

 

 初めからこれが気になっていたのだろう。

 隠すようなことでもないので俺はすっと答えた。

 

「……」

 

 ただ、青年は少し言い淀み口をつぐむ。

 

「冒険者? 意外と儲かるんだな」

「いや、低ランクだから全然。でも、最近薬草の値段が上がりっぱなしだからね。その臨時収入で思い切ってって感じ」

「なるほどなぁ」

 

 船頭も青年の事は気になっていそうだが、無理に聞き出すつもりはないらしい。

 俺の方に話を振ってくる。

 

 ウーヌの街で薬草が高騰してるなんて、運送業やってる船頭には自明の話だろう。

 なるほどなんて言いつつ。

 やはり気になるらしく青年の方に視線を向けている。

 

 人に尋ねておいてその態度はどうかと思うが、仕方ない。

 俺も気になるし。

 

 その視線に耐えかねたってわけでもないだろうが、なにやら踏ん切りをつけたらしい。

 

「……実は、絵描きをしてて」

 

 少し言いづらそうにしながら、青年はそう口にした。




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