ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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死闘 19

 ……死ぬかと思った。

 いや、マジで。

 

 色々と言葉に言い表せない感情が脳裏を渦巻いてはいるものの、真っ先に思った感想としては。

 偽物と本物は違うらしいって事。

 ま、これは偽物に対して使う言葉じゃない気もするが。

 

 どっちがいいとかじゃ無くてね。

 

 って、この言い方は語弊があるか?

 まずだ。

 決して俺はそのどちらもいい物だとは思ってないと宣言しておく。

 うん。

 ちょっとした言葉の綾だ。

 

 ノアはあくまで例外。

 俺にそっちのけはないし、仮にあったとしても間違いなくタチである。

 はず……

 

 話が逸れた。

 我ながら少々苦しい言い訳に聞こえるが、あまり深く考えない事にして元に戻す。

 

 あの尻尾に、ひと段落ついたら柔らかくなる機能なんて物が付いているはずもなく。

 強いて言うなら、女将さんが満足するまでずっと。

 その結果。

 何度かブラックアウトしかけ、というか実際軽くしていた気もする。

 

 そんな困難を乗り越え、なんとか生き残った。

 

 窓の外はすっかり夕焼け。

 日も傾き、徐々に薄暗くなってくる時間帯である。

 

 横を見るとスッキリとした笑みを浮かべた女将さん。

 俺のことを散々責め、どうやら昨夜の事は許してくれる気になったらしい。

 ひとまず危機は去った。

 

 彼女の膝の上では獣っ娘が丸まっていて。

 まるで、本当の猫みたいに気持ちよさそうに撫でられている。

 

 絵になるよな。

 窓辺、夕方の空を背景にゆったりとした空気の流れるこの光景。

 精魂尽き果てたせいか。

 はだけた姿の2人を相手にそんな感想を抱く。

 

 ……

 

 と言うか、なんでここに獣っ娘が居るのかって話で。

 初めは俺と女将さんの2人だったのだが。

 途中で乱入してきたのだ。

 高度なプレイのせいで一対一でも結構戦況怪しかったのに、ここまで追い込まれたのは間違いなくこの追撃のせい。

 クエスト終えたところに緊急クエスト、しかも強制である。

 

 HP溶かすのは必然。

 むしろ、よく1乙もせずに乗り越えられた物だ。

 

 獣っ娘の証言によると、どうやら匂いを辿ってこの部屋までやって来たらしい。

 流石獣人。

 俺の立場からすると別に褒めたくはないのだけれど。

 

 気持ちよさそうにお昼寝していたから、気を遣って置いて来たのだが。

 それがご不満の様子。

 起きたら周りに誰もいなくてパニックになり。

 必死に、嗅覚を頼りに走って来たのだとかなんとか。

 

 盛大に八つ当たりされた。

 

 帰っちゃったかと思った、とか。

 怒って何処か行っちゃったのかと思った、とか。

 捨てられたかと思った、とか。

 また売られちゃうのかと思った、とか。

 

 それはもう大量に……

 最後に至っては、俺が居ないにしても起きて普通に宿の中にいるのは変わらないはずなのにどうしてそこまでって感じだが。

 それだけ混乱したって事なのだろう。

 

 普段、別に1人で寝起き出来てるらしいのだが。

 急に居なくなったのが良くなかったのかね。

 

 トラウマ。

 自分が売られるって感覚は俺には理解し難い物だし。

 明るいように見える獣っ娘も、心に相当なダメージを負っているのだろう。

 

 それは悪かったけど、そもそも俺の事部屋から連れ出したのは女将さんな訳で。

 かと言ってさっきの状況で擦りつける事も出来ず。

 手詰まりに。

 結果、2人から徹底的に責められてめちゃくちゃにされてしまった。

 

 ……何故だ。

 俺は鬼畜じゃないのに、獣っ娘が眠ってる姿にちょっとそそられたのをそっとしておくぐらいには善良だったのに。

 獣っ娘と女将さんは鬼畜だったらしい。

 

 自業自得?

 それは、そう。

 

 元々昨夜俺が調子に乗ったのが原因で、そんなの重々理解しているのだが。

 だとしても。

 別に、心の中で嘆くぐらいいいじゃん。

 

 でもまぁ、良しとするか。

 あんまりうだうだ考えててそれがついうっかり口をついたりしたら大変だ。

 ここから第二ラウンドはマズい。

 

 それに、なんだかんだ楽しかったしね。

 別に初めてでもないのだ。

 

 いや、おもちゃは初めてだけどね?

 ノアのせいというか、ノアのおかげというか。

 

 とりあえず、死闘だった。

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