ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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河岸 10

 どう答えたものか……

 青年の問いにそう思案しているうち、川の流れが徐々に激しさを増してきた。

 濁流ってほどではないが、白波が目立つ。

 

「あんたら、しっかり舟に捕まってろよ!」

 

 船頭が声を上げる。

 どうやらこの先はさっきまでの緩やかな川とは違うらしい。

 

 青年への返答は一旦後回し。

 絵が濡れたら大変なので、慌てて彼に絵を返却。

 キャンバスを布に包むのを軽く手伝った。

 

 舟が激しく揺れる。

 

 幸い、この揺れだけで積荷が振り落とされたり乗客が投げ足されたりすることはなさそう。

 でも、勢いのまま岩やら河岸にぶつかったら大惨事である。

 船頭も真剣な表情になり、竿(船頭がよく持ってる棒みたいなやつ)を手に舟を操る。

 

 とてもじゃないが、しんみりとした話をする雰囲気じゃない。

 俺は青年への返しを先延ばしにしたまま、急に表情を変えた川の先をぼんやりと眺める。

 

 船頭も舵にかかりきり、青年の方も口を開き難いのか。

 たまに飛んでくる船頭からの指示以外、会話もほぼ無いまま川を下っていく。

 自然の音に包まれ舟に揺られる。

 

 白波の目立つ所は思ったより早く抜けた。

 少し拍子抜け。

 まぁ、あれが長く続く様な川だと水運に不向きだろうしこんなもんなのかね。

 と言っても、ウーヌの街から上流にいく舟もあったし……

 そういう川でも舟は使われるのだろうが。

 

 ただ、一度会話が途切れてしまったから。

 川の流れが穏やかになってもなんとなく話し難い雰囲気のまま時が流れる。

 

 無謀かって聞かれても、ね。

 俺はこの青年のことをよく知らないのだ。

 ついさっきあったばかり。

 

 彼はきっと出来ると言って欲しいのだろう。

 それは分かる。

 でも、その道は修羅だ。

 何も知らない俺が彼をその道に導くなんて、あまり気の進む選択肢じゃない。

 

 かと言って、反対するのもね。

 そんなの分かってるはず。

 理屈の上では師匠の方が正しいって、じゃなきゃあんな言葉出てこない。

 俺みたいな旅先で出会っただけの他人に言われるまでもない。

 

 心との相談、どちらを選ぶにしても己で決める話だ。

 

 そんなこんなで目的地に到着。

 河岸、ウーヌの街の船着場は港と呼ぶには小規模だったがここはかなりの規模。

 

 水路が街中に何本も通っていて。

 その周囲には、蔵がいくつも建てられている。

 舟で運んだ荷は一旦蔵に入れられ、そこから順次店に運ぶのだろう。

 

 水路に入ってすぐ鳥飼を見かけた。

 今は準備中といったところだろうか?

 本番は夜。

 篝火を頼りに鳥を操り魚を獲るのだ。

 

 いわゆる鵜飼ってやつ。

 まぁ、ここは異世界だしあの鳥は鵜じゃないのだろうが。

 

 そんな街並みを眺めつつ、穏やかな水路を舟で進む。

 

 屋形船みたい。

 ってか、ここの水路だと多分屋形船もあるだろうな。

 それぐらい水の流れが穏やかだ。

 

 船頭が舟を止め、岸に縄をかける

 ここがこの舟の積み下ろし場所らしい。

 

 舟を降りる。

 不思議な感覚、足元が少しふらふらする。

 陸地なのだから揺れているわけじゃないのに。

 

「なぁ、ちょっと飲みに行かないか?」

 

 一緒に降りた青年。

 声をかけた。

 

 このままさよならってのもね。

 決断は自分でするべきだが、愚痴を聞くぐらいはいいだろう。

 

 船頭も着いてきたそうだったが、仕事が残ってるらしい。

 彼はこのまま積荷を下ろして積み込みまで。

 高給な分、大変な仕事である。

 

 日もかなり傾いてきた。

 青年と2人、近くの適当な飲み屋に入る。




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