ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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河岸 11

 舟を降りてすぐ、店を物色するでもなく適当に目についた店に入った。

 しばらく2人で歩こうって空気でもなかったしね。

 

 幸い、ここは舟乗りの街だ。

 海と川という違いはあれど、どちらも酒呑みなのは同じらしい。

 数分と歩くことなく店を見つけられた。

 

 しかし、この飲み屋。

 適当に入ったにしては雰囲気のある店構えである。

 

 そもそも街自体にかなりの歴史があるのだろう。

 横を流れる川は幅も広いく流れも緩やか、河岸とするにはもってこいの場所。

 古くから水運の要所だったはず。

 

 ウーヌのとこより何倍も大きな船がいくつか。

 ここより下流にはウーヌからの道中にあった流れの荒い部分もないのだろうな。

 

「いらっしゃい!」

「2人で」

「はいよ」

 

 石造りの店内。

 店員に人数を告げると、テーブル席に案内された。

 

 机と椅子は無垢な木製だ。

 装飾はない。

 どこか定食屋を思わせるようなシンプルなデザイン。

 

 船着場のすぐ横だしね。

 実際、扱いとしても似たようなものなのだろう。

 船乗りに酒は必須らしい。

 

「それで、無謀かだっけ」

「……はい」

 

 青年は俺の言葉に静かに頷く。

 

 舟を降りてから、彼は黙って俺に着いてきた。

 店に入り席についてもなお。

 何か考え事をしてるかの様だった。

 実際、頭の中ではいまも思考がぐるぐると回り続けているのだろう。

 

 俺が先に口を開いた。

 飲みに誘ったのだしな、マナーだろう。

 

「俺はただの冒険者だからな。正直、絵画の世界のこととかはよくわからん」

「……そう、ですよね」

 

 俺の言葉に下を向く青年。

 

「家出か?」

「え?」

「師匠に反対されたんだろ。それで、その勢いのままってとこか?」

 

 唾を飲み込む。

 どうやら図星らしい。

 

 まぁ、誰でも分かる話だ。

 青年も当てられたことがどうこうってより、自分の行動を改めて振り返ってって事だろう。

 この反応は。

 

「……僕には絵の才能があるらしいです。師匠が言ってました」

「ほう」

「絵を描いて生きていくなら師匠の言う通りにすべき、それは分かっています。でも、それは絵描きじゃない」

 

 なるほどなぁ。

 

「師匠にはここまでずっと絵を教わってきて、感謝もしています。恩を返したいとも思ってます。でも……」

 

 言葉に詰まる青年。

 なんと言うかまぁ、予想通りっちゃ予想通り。

 

「俺は冒険者をやってるんだ」

「……はい? 聞きました」

 

 何を改まってといった表情を浮かべる青年。

 

「これでも、昔は王都の学園に通っていた」

「貴族様なのですか?」

「いや、田舎の農村の生まれだ」

「それって」

「たまたま才能があったらしい」

 

 驚いた顔。

 それだけ予想外だったのだろう。

 

 絵描き、それで食っていこうと思ってるぐらいだ。

 貴族との繋がりもあるはず。

 本人はともかく、師匠は間違いなく持ってる。

 

 だから、学園がどういう場所か普通の庶民よりよく知っている。

 

「もったいないと思ったか?」

「……」

「師匠も同じ気持ちなのかもな」

「え?」

「弟子に取るくらいには認めているのだろう?」

 

 考え込む青年。

 

「一度きりの人生、好きに生きるのもそんなに悪くないと思う。でも、一度きりの人生、上手く生きるのも大事だ」

 

 綺麗事。

 何もいってないのと一緒だ。

 

 それに、これほど説得力のない言葉も珍しい。

 なんせ俺は人生二度目なのだから。

 

「お待たせしました」

 

 店員が酒とつまみを持ってきた。

 

 沈黙を誤魔化すように俺は酒を煽る。

 青年も釣られるように、一気に喉に流し込んだ。

 

 そんなに飲んで大丈夫か?

 まだ若い、あまり飲み慣れてる様には見えないが……

 まぁ、気分転換にはちょうどいいのかもな。




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