ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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徒然 3

 俺を見て、予想外とばかりに大袈裟に驚いて見せる店主。

 にしても珍しい客って……

 

「常連相手にそれは酷くね?」

 

 この街に住んで、ここの店に通い始めてもう長いってのに。

 まさかそんな扱いを受けるとは。

 

 素直にショックだ。

 

 これが俺のことを覚えてないとかならともかく。

 認知を求めるような客は流石に痛い。

 でも、認識された上で常連どころか珍しい扱いとは。

 何ゆえそうなった?

 

 思わず言い返してしまった。

 俺の言葉に店主が肩をすくめる。

 

「年に、腕の数来るか来ないかの奴を常連とは認めねぇよ」

「腕の数?」

「あんたの為にいちいち指を折ってまで数えてやるのなんて贅沢でしかないからな」

 

 ……

 

 確かに、前回来たの数ヶ月は前だからな。

 毎回こんな調子だ。

 均せば年に2回来るかどうか。

 

 それを常連とは認めない、と。

 なるほど、なるほど……

 

 この野郎!

 上手いこと言いやがって。

 何が腕の数だ。

 

 いや、これは上手いこと言えてるのか?

 

 まぁ、いい。

 俺は別にこの店主と駄弁りたくてここの床屋に来た訳じゃないのだ。

 いつまでもこんな押し問答を続けていても仕方がない。

 

「で、今日は何しに来たんだ?」

「そんなもん。一つに決まってんだろ」

 

 言いたいこと多々はあるが、さっさと仕事に取り掛かってもらおう。

 それに、どうせカット中も構わず絡んでくるしな。

 

 店内を見る限り、客は俺1人。

 珍しい。

 別に不人気店ということもないはずだけど。

 

 待ち時間が無いのは嬉しい。

 

 せっかくすぐ切ってもらえるのだ。

 それを延々とくだらないやり取りに費やすのも馬鹿馬鹿しい。

 

「そうかい、お好みは?」

「おまかせで」

「よし、瀉血だな。たっぷり抜いてやろう」

「んなもん誰がやるか!」

 

 どうやら一つには決まってなかったらしい。

 そうだった。

 この辺りの床屋って髪切るだけじゃ無いんだった。

 

 前世からの固定観念のせいか。

 その辺りの事情がすっかり抜け落ちていた。

 

 店主の言葉に、改めて周囲を見回す。

 石畳の床。

 それなりに清掃は行き届いているのだろう。

 不潔な感じはしない。

 

 それでも、タンパク質系統の汚れはそう簡単に落とせる物じゃない。

 よくよく見れば至る所に血痕がうっすらと染み付いていて。

 

 壁には、床屋には似つかわしくない道具がいくつもかけられている。

 正式名称のよくわからない。

 金属製の無骨なデザインをした品々。

 

 少なくとも、前世の床屋じゃまず見なかった。

 到底髪を切るのに使うとは思えないそれら。

 

 まだ夕方だというのに、油ランプに火が灯る。

 窓が小さいから。

 これぐらいの時間になるともう日の光が足りないのだろう。

 

 それに、鼻をつく独特な匂い。

 床屋ってのは元々髪の毛と整髪剤で独特な匂いを放ってるものだが。

 そこに鉄臭い人間の血の匂いが混じる。

 

 改めて、冷静になるととても床屋とは思えないな。

 

 初めて来た時は驚いた物だ。

 慣れってのは凄い。

 そんな光景をついさっき改めて見回すまで日常の一部として流していたのだから。

 

 この雰囲気、一番近いので言えば拷問部屋かな。

 王都で連れて行かれたあそこ。

 

 そう思うと、この店主もとんでもないサイコパスに見えてきた。

 

「あんた、本当に瀉血嫌いだよな。好き嫌いはよくないぞ」

 

 しかも吐いてる言葉がこれだ。

 お前、まさかとは思うが効果ないの知ってて瀉血勧めてる訳じゃねーだろうな?

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