船乗りが酒豪っての、アレはやはり偏見ではないらしい。
仕事終わりに合流してきた船頭だが、飲むペースが早いこと早いこと。
酒をぱかぱか空けやがる。
俺も、普段から飲んだくれてるんでペースは早めだと思うが、そう言うレベルじゃない。
誰かと早飲みでもしてるのかって感じ。
「遅れてきたから追いつかんとな」
なんて豪快に笑って言っていた。
実際、本人としてはそのつもりなのだろう。
が、同卓してるやつがこのペースで飲んでると引っ張られるというか。
俺と青年の酒の消費量も明確に増えた気がする。
幸いと言うか、俺はチートのおかげで泥酔とは無縁。
前世のままだったら間違いなく潰れてただろう。
問題は俺ではなく、そんな2人に囲まれたしかも飲みなれてなさそうな青年。
「師匠の分からずやーー!!」
あっという間に出来上がったよね。
さっきまでは自分の夢と師匠の言う現実の間でうじうじしてたというのに、いつの間にか師匠に大声で不満をぶつける若者の完成。
「技術は認めるが、今のままでは一人前の絵描きとは認められない? 技術があるならいいじゃん! 僕の絵は売れないって、僕は絵描きになりたいのであって商人になりたいわけじゃない!」
もし電話とかあったら、勢いのままに弟子までやめかない雰囲気である。
そして翌日後悔するという。
……青年よ、ここが異世界で良かったな。
「だいたい、客も僕の絵の価値を分かってない。絵が高価なのは認める、生活必需品じゃ無いのも分かってる。でも、それ以外に使う金もあるよね? 私達はお貴族様や商人とは違うからなんて顔しつつ、月一のご褒美だからって甘味買ったり、今夜は勝負をかけるって派手な下着買ったり……。お金あるじゃん! 買ってよ! 僕の絵の方がそんなんより絶対良い!!」
とても芸術家とは思えない仕上がり。
師匠に不満をぶつけていたと思ったら、いつの間にかその矛先が客に向いていた。
さっきまで絵描きがどうたら言ってのが嘘みたい。
こういうの、SNSに上げたら炎上するんだろうな。
この世界にそんなの無いけど。
まぁ、別にさっきまでも綺麗事を言ってたわけじゃ無いと思う。
どちらも本音。
都合の悪い部分をかくしてただけで。
金も評価も欲しいし自分も曲げたくない。
うん、正直すぎて聞いてて気持ちがいいよね。
「俺は買うって言ったろ? そこの船頭はまだだけど」
「おい、おま。こっちに矛先を向けるんじゃねぇ!」
そんな青年を眺めつつ、横から茶々を入れる。
俺の言葉に船頭の方を向く青年。
急に矢印を向けられた船頭が慌てていたが、元はと言えばお前がそう酒をぱかぱか空けるからこうなったのだ。
がんば。
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