ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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徒然 7

 森に入ってしばらく、少し開けた場所に出た。

 ここでいいかな?

 

 あまり浅い場所で始めて他の冒険者に見つかっても面倒だし……

 チートのおかげで俺からすればこの森って大してリスクのない場所なものの、魔物が出る時点で他の人間からすればかなりの危険地帯でははあるのだ。

 そこでがっつり料理してる姿とか、あまり見られたくはない。

 

 どんな感想を抱かれるか。

 

 愚か者だと笑われるだけならまだマシ。

 ってか、全く問題はない。

 でも、それだけ余裕があると捉えられるとちょっと困る。

 

 俺は冴えない万年Dランクのおっさん冒険者って事で通ってるんだ。

 変に強いと思われても面倒ごとが増えるだけ。

 

 毎日薬草採取の依頼のみを受け続けてる変なやつ。

 ランクも上げようとしない。

 それどころか、魔物を恐れて討伐依頼すら受けたことがないらしい。

 しかも、蓄えを作るでもなくいつもギルドで飲んだくれてる。

 そういう認識であり、それが一番都合がいい。

 

 ……え、ノアとの件で目立ってたって?

 あれも不本意ではあるが。

 どっちかといえばノアの趣味がどうたらって方向で話題になっていたから別にいいのだ。

 

 うん……

 

 数ヶ月経って、今だに街で変な視線を向けられることもあるが。

 別に声をかけてくるわけでもないので気にしない事に決めた。

 

 その点、ここは都合良さげだ。

 ある程度歩いたし、こんな奥まで入ってくる冒険者も少ないだろう。

 多分。

 

 地面の起伏も少なめ。

 森の中だから当然ではあるが、木々のおかげで風も穏やか。

 

 それに、魔眼を発動。

 

 近くに盗賊のねぐらがあったりとか。

 ゴブリンが巣を作ってたりとか。

 そんなのもないと。

 

 ちょこちょこ魔力のこそ反応はあるが。

 まぁ、森の中なのだ。

 近くに魔物が全くいない場所がいいってのは流石に贅沢がすぎる。

 

 別に大した手間でもない。

 寄ってきたら魔力ぶつけて追い払うでも、巨大猪よろしく真っ二つにするでも。

 どちらにせよ一瞬だ。

 

 ……さて、

 

 場所も決まった事だし、さっさと設営を始めなくては。

 順調にいっても半日近くかかる見込みなのだ。

 

 別にここで野営をする気はないので、日没前には撤収したい。

 それに。

 昨日からずっとバーベキューの口なのだ。

 早く食べたくて仕方がない。

 

 整地は、特に必要はないかな。

 そんな真っ平じゃなきゃ困るってこともないし、ある程度水平ならそれで十分。

 

 アイテムボックスから、どさっとレンガの入った麻袋を取り出す。

 

 昔、投げ売りされていたのをまとめ買いしたのだ。

 おそらく家を建てるのに使って、その余りを処分代わりにとかそんなところだと思う。

 重いし運んでも大した値もつかないからね。

 近場で処理しちゃうのが手っ取り早かったのだろう。

 

 それを適当に積み重ねていく。

 イメージとしては、大きめの箱って感じ。

 

 天井を作ろうと思うと難易度が上がるので、そこは開いたままだ。

 

 魔法でぱっと作っちゃってもいんだけどね。

 何となく。

 こういうのは手を動かした方が雰囲気出るかなって。

 

 アナログのロマンと言いますか……

 キャンプとかバーベキューってそういうとこあるじゃん?

 

 便利な街中を離れて。

 わざわざ、自然の中で不便な生活を行う。

 

 バーベキューも、冷房の効いた室内でやった方が快適ではあると思う。

 それをわざわざ炎天下の下で火を起こして。

 後半の方にはクーラーボックスの氷も溶けぬるくなったビールを喉に流し込む事に。

 

 でも、なんだかんだ楽しいのだ。

 

 この世界、便利な家電やらなんやらはないのだが。

 その代わりが魔法かなって。

 だからなんとなく手作業で行こうかと。

 

 え?

 の割には、アイテムボックスは思いっきり使ってるって?

 

 ……

 

 キャンプ場には車で行くもんだ。

 それに、何千何万円かけて不便なキャンプが便利になるギアを揃えるものだし。

 

 矛盾?

 確かにそうかもしれない。

 でも、そういう矛盾って俺は嫌いじゃない。

 

 んで、そもそも何を作ってるのかというと。

 グリルだ。

 この世界にはないからね。

 探せばあるのかもしれないけど、絶対高いし。

 

 アメリカ式、テキサススタイルのバーベキューでは燻製が肝。

 バークがないとね。

 最早バーベキューじゃない。

 

 その都合上、丸焼きみたいに火の上にドーンって訳にはいかないのだ。

 

 弱火で……

 こう、長時間じっくりとスモークして仕上げる料理である。

 

 アメリカ料理のくせに繊細?

 それはそう。

 俺も思った。

 

 でも見た目はちゃんと豪快だから。

 それに、豪快さの裏にある繊細さって結構男心をくすぐらない?

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