しかし、いざ始めてみると思った以上にハードな作業である。
軽い気持ちでグリルを作り始めたのだが。
早々にちょっと後悔。
日曜大工のレベルを超えて。
最早、やってることが仕事レベルなのでは?
難易度としては大した事ないのだ。
単純に負担の話。
レンガもあれだけじゃ足りなくなって、アイテムボックスから早々に2袋目を追加した。
なんでこんな事になってるのかと言えば、グリルのサイズが原因。
巨大猪でバーベキューしようってんだ。
その肉を焼く設備の方も、通常サイズって訳にはいかない。
結果、巨大猪のスケール感に合わせてグリルの方も肥大化してしまったって訳。
休日の朝っぱらから重労働である。
ま、体壊したりしないだけマシか。
前世の俺じゃ絶対にもたなかっただろうし……
デスクワーク中心のブラック企業勤務。
体力なんて常にデットラインな上、回復値も最大値も削られまくっているのだ。
数分でどこかぶっ壊して、そこから一週間ぐらい寝たきりになりそうなレベルのハードワーク。
なんなら、寿命の方も数年ぐらい持って行かれていたかも?
それが、今ならちょっと手間が掛かるだけ。
チート様様だな。
しばらく黙々と作業して、遂に完成!
……うん。
素人が作ったにしては結構いいんじゃないかな。
目の前にあるのは、例えるなら出来損ないのピザ釜。
こういうとちょっと言葉が悪いけど、多分イメージとしてはそれが一番分かりやすい。
四角いし、上も塞がって無いが。
そこら辺は勘弁してほしい。
このサイズ感で天井までレンガで作ろうなんてのは無理よ。
そもそも、このグリル単にレンガを重ねただけで別に固定はしてないしね。
ほぼ積み木である。
そんなんしようと思ったら肉焼き始める前に日が暮れるわ。
天井なんて、適当に上から金属板でも載せておけばいいのだ。
密閉はできていないが。
ま、別にそこまで神経質にならなくてもいい。
煙をある程度中に閉じ込めて置ければそれで十分、なはず。
アイテムボックスから適当な金属板を出し乗せるてみるも、ちょっと完成度が下がった気がする。
見てくれはね?
初心者の日曜大工なんてそんなもの。
結局、使えさえすればいいのだ!
グリルが出来たら、次はお肉の準備。
アイテムボックスから引っ張り出すのは、巨大猪の半身。
半身でもすごい重量感だ。
余裕で俺よりデカい、死体なのに圧すら感じる。
いや、ほんと贅沢だよな。
丸々1匹買ってバーベキューとか、本場の人間でもあんまりやらないんじゃないか?
しかも、死にたてほやほや。
鮮度抜群で、真っ二つにした切り口からは赤い滴がしたたる。
流石アイテムボックス。
瞬間冷凍もびっくりの保存能力である。
無理に欠点をあげるとすれば、熟成が一切進まないのが玉に瑕だろうか?
さて、俺は今からこれをカットしなければならない訳だが……
本当に真っ二つにされてるだけだからね。
このまま焼けばただの丸焼き。
ノースカロライナスタイルはまた今度。
まず分かりやすい内臓を取り出してアイテムボックスへしまう。
問題はここから。
どう進めたしたものか。
俺がほしい部位は決まっている。
ブリスケットだ。
バーベキューと言ったらこの部位だよね。
ここを丸ごと焼くのだ。
だから、グリルもそれに合わせてわざわざこのサイズに仕上げた。
体重の半分近くを支える筋肉。
前世の牛であの大きさだったのだ。
巨大猪。
かなり期待が持てる。
が、前世じゃ動物をおろした経験なんて皆無。
なんなら三枚おろしすら、小学校の時にうっすらやったような気がしなくもない程度。
そんな淡い記憶のみ。
転生してからも討伐依頼は避けてたしね。
塊肉を買う機会ぐらいはあったが、わざわざ一頭買いした事は無い。
一応、前足の付け根。
胸あたりの部位だった覚えはある。
ここ……かな?
よくわからないまま、肉の表面を探る。
幸い、半身になっているので分からないなりに肉が部位ごとにある程度分かれてるっぽいのは見て取れる。
大雑把。
適当に、当たりをつけて探っていく。
牛肉ならまだしも。
相手は猪。
それも異世界産だ。
正直、このうろ覚えの知識が仮に正解だったとてどこまで役に立つか。
そもそもブリスケットがあるのかすら不明である。
この、辺りでいいのかな?
まぁ悩んだ所で正解などわからないのだ。
これでいいとしよう。
この巨大猪を仕留める際の何倍も悪戦苦闘し、なんとか両手で抱えてやっとぐらいの肉塊を切り出す事に成功した。