大体、子供ひとり分くらいはあるだろうか?
ずっしりと重い。
両腕に抱えたそれをとりあえずグリルの天井代わりにと設置した金属板の上に。
他に置く場所もないしね。
机兼まな板代わり。
どこで買ったかとか、そもそもなんて名目で売ってたかの記憶も定かではないが。
まぁ、見た感じ綺麗だったし大丈夫なはず。
少なくとも、地面に置くよりはね。
どうせ火も通すし。
都合の悪いものは全て熱で消毒され消え去ると信じよう。
……なんか、微妙に歪んでる気がする。
結構厚めのはずだが。
調理前に曲がっては困るので、もう一枚板を追加しておくか。
一応ね。
素人が即席で作った簡易グリルとはいえ、天板曲がってガバガバになるのは流石に困る。
んで、残りは適当な肉塊に分けてアイテムボックスの中へ。
ブリスケットだけでとんでもない量があるのに、流石に今日使う予定はない。
そのまま放り込んでおいてもいいんだけど。
巨大猪の解体とか、部屋の中でやるのはちょっとアレだからね。
バラしておかないと減らない気がする。
この後は、まず余分な脂身を切り落とすんだったか?
うろ覚えだが。
それも動画を見ただけ。
こっちに来てから何度かやってるけど、結局正解がわからないから毎回手探りという。
ま、なるようになる。
こういうの、磨くっていうんだっけか。
ショートを眺めてると、偶に流れてくる。
ASMR風の動画。
おそらくプロがやっているのだろう。
包丁を入れるたびに、ザクッ、シュルッと心地よい音を立てていた。
それに比べればずっとたどたどしいが、見様見真似でとりあえずある程度は落とせた。
しかし、どこまでやるのだろう?
確か、角があるとよくないとか言っていた気がする。
長時間火を通すから。
丸っこい形にしないと端が焦げるらしい。
楕円っぽくはなってるし、こんなもんでいっか。
磨いた後の肉をみるとアレだな。
動画で見るのより油の入りが大味の様な……
ま、猪肉だしな。
そんなものか。
牡丹肉にサシのイメージもないし、このバーベキュー自体赤身肉でやるもんだし。
むしろこれぐらいがちょうどいいのかも。
所詮は素人の仕事である。
食べるのも俺だけだし、そこそこ上手く出来てればそれで十分。
あ、別に不味くてもいいって話ではないぞ?
俺に繊細な味なんてわからんし。
豪快な料理だし。
多少の雑味があっても、それも味ってものだ。
そもそもジビエだからね。
肉自体にもある程度の癖はあって然るべきで、尚且つ手探りとなればある程度は仕方ない。
次は肉の下拵えを。
まずは、肉にオイルを塗り込む。
因みにどんな効果があってこれをしているのかは知らない。
わざわざ脂身を切り落として、その後オイルを塗りこんで。
二度手間な気はするが。
こうやってたような気がするからやってるだけ。
文句は受け付けない。
本当はオイル自体にも何を使う方がいいとかあるのかもしれないが。
覚えてない。
そもそも、異世界じゃ手に入る物もまるで別物だし。
一応、癖のないものを使っている。
豆油。
前世でいう、大豆油が近いのだろうか?
揚げ物とかによく使う油で。
確か、サラダ油にも入ってた気がする。
それぐらい癖のない油って事、こういうのにはもってこいだ。
続けてスパイスと塩で下味を付ける。
肉の下味は全体重量の1%弱が目安だったか。
ざっと計算して250gほど。
……え、こんなに?
マジ?
ちょっと怖い。
が、信じて塩を振りかける。
どっかの誰かも思った数倍は塩を振った方がいいって言ってた気がするし。
下準備が済んだら、一旦肉は天板ごと脇へ。
グリルに火を入れる。
昔作った炭を並べて着火。
薪って安い上に簡単に手に入るんだけど、何かと面倒だからね。
炭の方が火力が安定しやすくて温度管理が楽だし。
だから、気が向いた時にまとめて作ってアイテムボックスの中に放り込んであるのだ。
不完全燃焼の状態で温度上げればいいだけ。
魔法で簡単に量産出来る。
空気を遮断し、そこを高温にすれば一撃で炭化。
即席で大量の木炭の完成である。
あると何かと便利だからね。
こんな、大袈裟なバーベキューじゃなくとも。
晩酌のお供に。
こじんまりと何かを焼きながらなんてシチュエーションにも最適である。
炎がある程度落ち着いて安定したら炭を片側に寄せ、その横に肉を配置。
仕切りはない。
簡易グリルだからね。
単純な仕組み、広い一室の中で物理的に距離を置いて間接的に熱を当てようって戦法だ。
まんまピザ窯である。
天板を戻し、後は数時間かけて焼き上げるだけ。
まずは5時間。
……いや、この大きさならその倍は見ておいた方がいいか?
じっくりと弱火で火を通していく。