そんなこんな、ホルモンの刺しと焼きを堪能しつつ。
合間でバーベキューの面倒を見て。
何度繰り返しただろうか?
いい時間。
お日様も頂点を通り過ぎ、もう昼過ぎだ。
なんなら、夕方と言っても過言ではないかも知れない。
日の出すぐ、まだ街も起きてないような早朝に家を出たというのに。
本当手間の掛かる料理である。
にしても、本来はここまで肉も酒も全部お預けで来るつもりだったとか。
正気か?
俺の当初の計画甘すぎだろ……
端っから10時間近くかかる事は分かり切っていたのだ。
なのに、ねぇ。
俺にそんな忍耐力などある訳がない。
確かに、ずっと我慢しての肉とエールは美味いだろう。
それはわかる。
……想像しただけで。
初夏の森。
朝早くから火を起こし。
肉の世話を焼いて。
炭の香りと肉の香りに食欲を刺激され。
火の熱で喉も乾き。
そこに流し込むエール。
焼きたての塊肉。
さいっこうだ。
間違いない。
が、完全に絵に描いた餅である。
その道中の誘惑に俺が耐えられるはずがないのだ。
計画って、立てる時いつの間にか自分がその通りに動ける前提で立ててるよね。
無理なことなんて分かり切ってるのにさ。
さて……、そろそろ。
金属板の上のホルモンも綺麗に無くなり、エールもちょうどからになった。
って、エールは使うからなくなっちゃダメなのだが。
アイテムボックスから新しく取り出す。
今日だけで、計何本開けたのだろうか?
つまみのホルモン、何より森の中でバーベキューしてるってこの環境。
やたら飲んだ自覚がある。
まだ前哨戦だってのに。
一応、全部俺が飲んでる訳ではないからセーフって事で。
肉に塗るのなんて少量?
ま、細かい事はいいじゃないか。
……うん。
そんな言い訳をしつつ。
グリルの上に乗せてある金属板を外す。
側にいるだけで、じんわりと熱されている感覚はあるのだが。
蓋を開けると一気に来るな。
これ、普通の人間がやったら体のあちこちが火傷待ったなしである。
中を見ると、一回りほど小さくなったであろうブリスケット。
何時間も世話してきたせいだろうか?
少し可愛く見えてきた。
表面は真っ黒。
知らずに見たら丸焦げになってるようにしか見えない。
しかし、焦る必要は皆無。
これで良いのだ。
この黒いのは焦げではなく、バーク。
バーベキューが成功した証だ。
スパイスと、煙と、肉汁。
それらがいい感じに混ざり合って出来る、らしい。
旨みを閉じ込められた証拠だとか。
語尾が怪しいって?
しゃーない。
元々うる覚えの知識の上、この世界には何処にも正解が無い以上これぐらいの曖昧な感じで行くしか無いのだ。
まぁ、バークについての細かい説明はともかく。
焦がしちゃった訳では無いとだけ。
そのはず。
プロじゃ無いからね。
失敗の可能性も無いことは無いが、多分大丈夫だろう。
肉を金属板の上に。
持った瞬間、やたらプルプルとしていた。
うん。
こんな長時間火を通したってのに全く固くなってない。
なんならこれ、焼く前より柔らかくなってるんじゃないか?
大袈裟じゃなく、ガチで。
ナイフを入れる。
うわ、めっちゃ柔らかい。
抵抗もなくすっと切れた。
閉じ込められていた蒸気が立ちのぼる。
肉をただ焼くのとは違う、濃厚で最早旨味すら感じるそれが鼻腔をくすぐり。
ナイフを持つ手を湿らせる。
それに、肉汁が断面から滲み出て……
めっちゃ水分持ってる。
かなり手間だったけど、数十分ごとにせっせとエールを塗った甲斐があった。
いいな、成功だ!
熟練者から見れば色々あるのかも知れないが。
素人にしては、これ結構上手く焼けてるんじゃないか?