ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

252 / 267
徒然 13

 焼き上がったブリスケットの塊肉を前に、よだれがとまらない。

 

 何時間も誘惑されてはお預けのループをくらってきた訳だが、最早その必要も皆無。

 濃厚な香りに誘われるまま。

 己が欲望を満たすべく、切り分けた肉にナイフを突き刺し。

 

「いただきます」

 

 大きめにカットした肉塊を口元に運ぶ。

 やろうと思えば手でほろほろと崩せてしまいそうなほど柔らかい肉質、刃で切れて落としてしまわないよう慎重にナイフの腹で重さを支え。

 

 そのまま、豪快にかぶりついた。

 

「……うっま」

 

 噛みしめた瞬間、思わず声が漏れた。

 鼻を抜ける香ばしさ。

 口内を満たす長時間のローストで凝縮された肉の旨み。

 溢れ出すたっぷりの肉汁。

 

 いやぁ、美味い。

 マジで美味い。

 

 バーベキューと言ったらこれだろ、と。

 1切れってよりは1枚の言葉が似合う程度には大きくカットしたブリスケット。

 それを口一杯に頬張った。

 

 正解だったな。

 

 時間を掛け柔らかく仕上げただけあって、こんな詰め込んでも簡単に噛み切れる。

 でも、溶けてしまう訳じゃない。

 しっかりと食べ応えもある少し不思議な感覚。

 

 そして、大量の肉汁。

 溶ける訳じゃないのに飲めるんじゃないかと錯覚さえ覚える。

 

 和牛のステーキとかとはまた違うけど。

 でも、甲乙つけ難い。

 

 至福である。

 やっぱり良いな、バーベキューって。

 普段の食事とは満足度が段違いだ。

 

 肉を完全に飲み込む前に、エールを流し込む。

 少々下品かな?

 

 だが、関係ない。

 

 エールで口内がさっぱりしたところに。

 お肉をもう一口。

 

 この下品さもバーベキューと豪快って単語の前には許される様な気分になる。

 実際は知らない。

 冷静になれば不快に思う人も居そうだが。

 まぁ、俺は現状1人なので誰に気を使うでもなく楽しませてもらおう。

 

 大人数でパーティーみたいにってのも、ちょっとした憧れは覚えるものの。

 色々考えるとね。

 1人でやるのもなかなかどうして悪くない。

 

 しっかし、こりゃ止まらんな。

 エールと肉の無限ループ。

 

 口内を肉の旨みでいっぱいにして。

 エールでさっぱりと流し込み。

 また、肉を口一杯に頬張ってエールを飲んでの繰り返し。

 

 バーベキューなんて。

 時間かかるし、コスパも悪い。

 

 けど、どのみち俺の時間なんて大した価値はないのだ。

 普段から無為に過ごし。

 飲んだくれてて気がついたら日が暮れていたなんて事もしょっちゅう。

 

 まぁ、だからと言って頻繁にやろうともならないのだが。

 回数増やすのはね。

 ほら俺の気力の問題で、ちょっと。

 

 でも、これからも偶に食べたくなったらやろうかな。

 そう思わせてくれるだけの魅力がある。

 

 無気力で怠惰な俺に、この手間のかかる仕込みをまたしようと思わせる程度には。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。