ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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釣り 5

「……釣れない」

 

 仕掛けを川の中にたらしてしばらく、一向に反応がない。

 

 おかしい。

 流石に、魚がいないってことはないと思うのだが。

 

 釣り糸をたらす前にもそれらしき影は見えたし。

 ほら、今も!

 水面が日の光を反射してちょっと見にくくはあるが、水中をそれらしき影が泳ぐのが見えた。

 

 うーん、やっぱ糸が少し太いのだろうか?

 馬の毛をゆって作られているので、やはり前世の物と比較するといささか目立つ気はする。

 もっと細いものもあるのだけど、値段が高かったり強度がさらに落ちたりと一長一短。

 

 でも、この世界の人々はこの糸で釣ってるんだから無理ってことはないはず。

 

 枝を上げ、仕掛けを回収する。

 餌がついていない。

 ちゃんと針に刺したし、落ちたってよりは取られたのだろう。

 

 やはり魚がいない訳じゃないらしい。

 

 まぁ、たった一投で何を愚痴ってるんだって話か。

 さっさと餌をつけて次だ次。

 

 さっき辺りをざっと掘り返した時に見つけた虫、奴らを木箱にストックしておいたのだ。

 そこから生きの良さそうなのをチョイス。

 

 ちなみに、この木箱はアイテムボックスの中を適当に弄ったら出てきた。

 買った覚えはない。

 多分、盗賊の拠点から物資を丸ごと頂いた時とか。

 そういうタイミングで色々まとめて収納した際に一緒にアイテムボックスの中に突っ込んでいたのだろう。

 

 じゃないと虫のストックになんか使わない。

 別に潔癖って訳じゃないけどね。

 わざわざ気に入って買った箱の中に虫をぶち込めるほど無頓着でもない。

 

 外れにくいよう比較的硬い幼虫の口側から針を刺し、うまいこと針の全体をその体内に隠す。

 そのまま、再度川の方へと放る。

 

 水に濡れて多少くせが抜けたのか。

 うまいこと振り子の要領で勢いがつき、さっきよりは川の中腹に近いとこまで飛んでくれた。

 

 ……

 

 ここからはまた待ちの時間。

 ルアーじゃないので下手にアクションをつけたりはしない方がいい。

 ひたすらじっと獲物が食いつくのを待つ。

 

 そんなおり。

 ふと、視線を感じ振り返った。

 

 こちらを見つめるつぶらな瞳。

 ゴブリンか何かが寄ってきたのかと思ったが、幸い違ったらしい。

 トカゲ、だろうか?

 

 そう呼ぶにはいささかデカい気もするけど、まぁ前世にも人並みにデカいやつとかいたしな。

 こいつはそこまでじゃない。

 ちょっと距離あるが、多分1m弱とかそんなもんだ。

 

 にしても、随分とリラックスしてるご様子。

 このトカゲらしき生物。

 思いっきり俺と目合ってるし、向こうも認識されてるのに気がついてるとは思うのだが。

 一向に逃げる気配がない。

 かと言って、逆に襲ってくる様子もない。

 

 ……はて?

 

 人ってのは案外強い。

 武器がなきゃクソ雑魚だなんて認識を持ってる人も多いらしいが、そもそもサイズの問題として比較的デカいのだ。

 人サイズの動物って実は結構少ない。

 

 質量は単純に強さに繋がる。

 

 その上、二足歩行なんで他の生物からすると更にデカく見える。

 威嚇で立ち上がる動物ってそこそこいるだろ?

 人はデフォルトでその状態って事だ。

 実際以上にデカく見えるってことは、実際以上に強く見えるってこととほぼ同義。

 

 この世界、人が頂点じゃない。

 魔物やらなんら天敵も多い。

 

 でも、街を国を築ける程度には生態系の上位にいるのも確か。

 

 こちらをじっと見つめるトカゲ擬き……

 この慣れよう。

 生物として云々ってよりは、どっかの釣り人に餌付けでもされたのだろうか?




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