嫌な予感しかしない。
この濃度だと、中級者の冒険者パーティー数個ぐらいなら余裕で殲滅出来る力はあるんじゃ……
この森にこんな危険生物が生息してたとは、初耳である。
ってか、このレベルになると森の中に敵とかいないだろうし。
さらに強くなる可能性。
あなた実はここのボスだったりします?
目を合わせるも、こちらの意図など伝わるはずもなく。
ただ首を傾げるトカゲ擬き。
さっきまで手足をジタバタ暴れていたのだが、押さえつけられて力の差を思い知ったのか。
今は、抵抗をやめだらりとしている。
力の差を思い知ってその態度なのか。
本当に大物である。
手術台代わりの木の板の上で、側から見る分には心底リラックスしてそう。
お気楽な奴め。
にしても、自分で言っておいてアレだが更に強くなる、ね。
ちょっと違和感があったというか。
魔力の濃度にしては、少し魔力量が少ない気が。
1メートル弱という体格も、そりゃ相対的に見ればでかいけど。
魔力の質に対しては不相応というか。
完成度があまり高くない気がした。
言い換えると、……かなりポテンシャルを感じる。
トカゲ擬き、もしかしてお前子供だったりするのか?
今の時点でも相当である。
これ、もし幼体だとすると下手すれば成体は上級冒険者でも複数人いないと対応の難しいレベルの魔物になるのでは……
いつからここは魔王城前のダンジョンみたいな危険度になったのだろうか。
雑魚モンスターしか出ない、比較的安全な場所だったはずなのに。
と言っても、別にやることは変わらない。
俺は別にトカゲっぽいから助けようと思ったわけじゃないし?
ただ、暇つぶしに餌あげて楽しんでたのに人側の不注意で針飲ませてそれを放置はいかがなものかっていう。
個人的な倫理観から行動してるってだけで。
相手がなんであれそこは変わらない。
たとえ、めちゃくちゃ強くなりそうなやつだったとしても。
……うん。
ふと、こいつが変に街の方とかに興味持ったりしたらどうなるんだろうか。
なーんて考えもよぎったが。
考えたら負けだ。
間違いなく大変なことになるような気がするが、多分気のせいである。
しゃーないやん。
一度助けるって決めちゃったのだ。
わざわざ手術台に乗せて。
そこから、やっぱりやめましたとか。
余計罪深い気がするし。
それに、釣りしてる間だけという短い時間だが、こっちに警戒心も見せずに近くに居座ってたわけだからね。
トカゲ擬きに愛着が湧いてしまったのだ。
今更、明確に危害を加えてくる様子もないのに殺すってのはちょっと気が引けるといいますか。
ってなわけで、行動の方針としては一応固まった。
問題は、予想外に濃密な魔力のせいで針の所在の断定がかなり難しいってこと。
魔眼の効果が弾かれてるとかってわけじゃないんだが。
単純に見にくい。
初めは飲み込んだのミスリルの針だしその魔力探って所在見つければ1発じゃん、楽勝! って感じだったのだが。
ここまで魔力が濃いと流石に、魔眼さんもお手上げ。
魔眼って別に万能じゃないからね。
魔力が視覚的に見えるようになってるってだけで、そのままだと普段見てる光景にプラス濃淡のあるノイズが乗ってるだけっていうか。
いや、多分上手いことやれば万能にも出来るんだろうけど。
それこそ普段薬草採取に使ってるみたいに条件付けしたりとか?
一応、普段の経験を元にミスリルで条件付けしたりとか逆にトカゲ擬きの魔力を除外設定したりとか色々やってはみたんだけどね。
ちょっと上手くいきそうにない。
普通に考えればこれで突破出来そうなものだが。
トカゲ擬き、なんかミスリルと似通った魔力してるというか。
上手く区別がつかないんだよね。
不思議な感じ。
体の中で魔力にグラデーションがついてるというか、その一部がミスリルに近くて魔眼が誤作動してる。
もっと細かく設定すれば区別つくのかもしれないけど、見ず知らずのトカゲ擬きのためにそこまでの手間をかけるのはちょっと。
助ける発言はどこいった!
矛盾してる?
それはそれ、これはこれ。
別に見捨てるわけじゃないよ。
見にくいだけで見えないわけじゃないしね。
最悪、細切れ作戦もあるし。
「ちょっ、暴れるなって」
俺の思考から危機感でも感じ取ったのか。
さっきまで大人しくしてたのに急に暴れ始めるトカゲ擬き。
冗談だって、最終手段だから。
俺もやりたくはない。
全く見えないわけじゃないし、釣り針も小さいとは言えそんな虫眼鏡が欲しくなるレベルじゃないし。
そして、多少時間はかかったが一応それっぽいのは見つかった。
ミスリルの釣り針、らしきもの。
なんでらしきかって?
なんか、形が崩れかけてるんよね。
これに関しては魔眼の方の問題ではない。
トカゲ擬きの魔力で歪んで見えるとかそういった話ではなく、本当にミスリルの針が崩れかかってる。
……なるほど?
これ、まさかだけどミスリル製の釣り針が消化されかかってます?
地元の書店で本作の書籍を発見しました!
本当に並んでる……と、なんというか感慨深かったです。
ちゃんと本になるんですね。
いや、書籍の発売に向けて色々と段取りあったんで理解はしていたんですけど。
手に持って、一瞬そのままレジに並ぼうかと迷いましたが。
それは流石に違う気がしたのでそっと元の場所に戻しておきました。