ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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奴隷 7

「……」

 

 謎に視線を感じた。

 別にスラムの奴らじゃない。

 もっと近く。

 普通に奴隷から。

 獣人の女の子。

 彼女からジトーっとした視線が向けられる。

 背が低いのもあって自然と俺を見上げる形。

 かなりの上目遣いだ。

 可愛らしい。

 

 いや、そんな話ではなく。

 何か言いたげなご様子。

 商人から買ってそのまま連れ歩いてたからね。

 そりゃそうなるよなって。

 まず会話がないし。

 あまり現状を理解してなさそうだ。

 

 なら俺から話しかけろよって事になるんだが。

 勢いで買ってしまったのだ。

 なんと言うか、どう話しかけていいか。

 初対面特有の雰囲気。

 それでいて上下関係だけははっきりしている関係。

 ちょっと気まずい。

 まぁ、向こうはさらにそうなのだろうけど。

 

 突然来て、何も言わずに買ってった訳だし。

 奴隷と一切会話せずに買うと言うのも珍しいだろう。

 技能とかもまともに聞かなかった。

 ま、俺としては見た目に惚れ込んだわけで。

 他のことは二の次。

 その時点で買うことは確定してたのだが。

 

 そういう目的で買われたのは理解しているんだろうか?

 微妙な年齢だ。

 分かっていそうな分かってなさそうな。

 だから、余計に。

 そっち方面の話をして引かれても困るし。

 娼婦とは違うのだ。

 いや、奴隷だからどう扱おうと俺の自由なんだけどね。

 

 しばらく沈黙が続いた。

 そして、恐る恐ると言った様子で奴隷が口を開いた。

 

「あ、あの……」

「なんだ?」

「ご主人様とお呼びしても?」

「好きにしていいぞ」

 

 また会話が止まった。

 

 この微妙な距離感、なんと言えばいいのか。

 ペットを飼った時の様な感覚。

 甘えてこられたら上手く出来るが。

 構ってやればいいだけだし。

 でも、距離が出来ちゃうとね。

 どうしていいか分からない。

 こっちから詰めて良いかも良く知らないし。

 

 あと汚い。

 今はあんまり近寄りたくない。

 酷いとは思うが。

 本音である。

 さっさと洗って、それからだな。

 

「えっと、ご主人様?」

「なんだ?」

「それで、私は何をすれば」

「まぁまぁ、後で説明するから」

「はぁ……」

 

 困惑気味の奴隷を連れ門をくぐる。

 温泉街を出た。

 季節は冬。

 雪もうっすら積もってる状況で街の外へ。

 予想外だったのだろう。

 俺の行動に余計混乱してる様子。

 

 別にそんなきついことをさせたい訳じゃないよ?

 まぁ、あの状態でケージに入れられてた子を歩かせてる訳で。

 今の状況が十分きつい説もあるけど。

 森の奥までは行かない。

 少し歩くだけだから、許してくれ。

 そこまで行かずとも良さげな場所があったはず。

 仮に上流まで行った所でこの子じゃ火傷するだろうしね。

 

 川が見えてきた。

 少し湯気が出ている。

 気温が低いからお湯とは限らないが。

 近づくと熱気を感じる。

 温泉ほどとは行かずとも温水プール程度の温度はありそう。

 そばに立ち、軽く触れる。

 うん、問題なさそうだ。

 

 ここならいいかな。

 興味があるのか、奴隷っ子が川を覗き込んでいる。

 ……後ろからそっと近づいて。

 ぽんっと押す。

 

「え!?」

 

 そのまま、川に落ちた。

 酷いなこれ。

 ただのいじめである。

 

 いや、ちょっと魔が差しまして。

 

「何をするんですか! って、あったかい?」

「温泉が流れ込んでるからね」

「お、温泉?」

「もしかして初めてか?」

「多分、そうです」

「地面からお湯が湧き出てる、天然のお風呂みたいな物だ」

「……天然のお風呂?」

 

 不思議そうに首を傾げる。

 そうか。

 温泉街にいたのに、温泉の事知らなかったのか。

 まぁ、奴隷だもんな。

 他の街から連れてこられたのだろうし。

 この街に来た時にはすでに商品だったのだから。

 あのケージから出る機会もなく。

 元々いた場所に無ければ知る良しもない。

 考えてみれば当然の話だ。

 

 一体、どれほどの期間。

 今の格好から言って、直近って事はないよな。

 それでここまで汚れはしない。

 買われるまでずっと。

 ケージの中。

 そこから見える世界が全てだったのだ。

 

「ほら、体洗って」

「?」

「今のままじゃどこにも連れてけないだろ?」

「あ……。はい!」

 

 嬉しそう。

 

 ま、気持ち悪かっただろうしな。

 何日も風呂入ってない状態。

 いくら冬とはいえ。

 体は老廃物を出すのだ。

 しかも獣人。

 毛が多かったりと。

 多分、人間以上に不快だったはず。

 

 流されないように様子を見る。

 ま、浅い川なんだが。

 一応念のため。

 あの生活で体力落ちてるだろうからね。

 

 しかし、ぼーっと全体を眺めていた訳だけど。

 しばらくして。

 視線がある一点に引き寄せられる。

 別にトラブルが起こったとかではなく。

 ただ、淡い色のポッチが……

 うっすら透けて見えた。

 獣人もそこはピンク色なんだなと。

 そんな感想を抱く。

 彼女はそれに気づいてないのか気にしていないのか。

 今は目の前の川に夢中らしい。

 

 初めはね、純粋に彼女を心配しての行動。

 邪な思いはなかったんだが。

 これを見るなって方が無理だよね?

 

 ……もはや、透けてるっていうか。

 元々服がボロボロだったのだ。

 川の流れも相まってか、徐々になくなってるような。

 半裸である。

 かろうじて布が少し残ってる程度。

 漫画ぐらいでしか見ないな。

 しかも大事なところが隠れてないし。

 

「ひゃ!」

 

 あ、気づいたっぽい。

 

 咄嗟に胸を押さえて、俺の方を見る。

 視線が合った。

 見られていたのを理解したのだろう。

 頬が真っ赤に染まる。

 そして、川の中にチャポンと全身を沈めた。

 この反応、羞恥心はあるのか。

 健康的でよろしい。

 まぁ、今はそれのせいで恥ずかしい思いをしている訳で。

 むしろ無くなって欲しいと思ってるかもしれないが。

 それだけ健全って事だ。

 なにも悪い事じゃない。

 

 結構元気そうだな。

 精神も、体も含めて。

 あの環境で。

 どちらの意味でも死んでいておかしくない。

 強い子だ。

 獣人だからじゃないな。

 この子だから。

 

 やっぱり、買ってよかった。

 

「よし、綺麗になったな」

「……」

 

 川から上がってきた。

 声をかけたが視線を逸らされる。

 大事なところを手で隠し。

 それに精一杯って感じ。

 

 まぁ、隠しきれてないのだけれど。

 布は全部なくなってしまった。

 どうやらそのまま遊ぶ気にはなれなかったらしい。

 夜の相手もしてもらうつもりだが。

 これ、慣らさないと無理そうだな。

 

 適当に服と布をアイテムボックスから取り出し渡す。

 一応申し訳程度にカバンから出すふり。

 ま、バレてはないでしょ。

 今の彼女を見るにそれどころじゃなさそうだし。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 うん、可愛い。

 これならいけるはず。

 

 やっぱり不潔だと雇ってくれないだろうからね。

 別に、お金は必要ないんだが。

 店に丸投げするのだ。

 世話をしてもらう以上利益は出さないといけないし。

 でも、この容姿なら問題ない。

 獣人というマイナスを補って余りある。

 それだけの魅力。

 

 少なくとも、俺なら間違いなく指名するし。

 ナンバーワンを目指せる逸材。

 押し付けなんてとんでもない。

 むしろ、泣いて感謝されるまであるな。

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