ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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奴隷 8

 用事も済ませたし、もう街の方に戻るか。

 外で長居する理由もないしね。

 

 獣っ娘はお礼を言って着替えたっきり、俯いている。

 押された事を怒ってるのか。

 裸を見られたのが恥ずかしかったのか。

 どっちかだと思うんだけど。

 いまいち何を考えてるのかよく分からない。

 

 因みに、怒らせる意図は無かった。

 ただ、なんと言いますか。

 ついつい、揶揄いたくなってしまいまして。

 気づいたら手が伸びていたのだ。

 まぁ、目は合わないけど。

 普通に俺の後ついてきてくれるからね。

 問題はないって事で、ヨシ!

 

 しかし、服を渡した訳だが。

 女の子用の服なんて持ってるはずもなく。

 俺のを渡した。

 当然、ブカブカである。

 彼シャツってやつ?

 素晴らしいシチュエーションな訳だけど。

 それ以上に。

 下を向いているのと身長の低さ。

 それが相まって、チラチラと。

 首元の辺りから素晴らしい景色が見える。

 

 川での事といい。

 この娘はよく分かってらっしゃる。

 いや、天然なんだろうけど。

 だからこそより良いって言うか。

 

「それで……」

「ん?」

「私はこれから何を」

 

 顔がまだほんのり赤いまま。

 恐る恐るといった様子で聞いてきた。

 まぁ、そこ気になるよね。

 奴隷を理由なく買う人間なんてあんまりいないし。

 特に高いのは。

 

 真面目に働かないと。

 期待はずれだって売り飛ばされかねない。

 中古は値段が落ちるのだ。

 って事は、店での扱いも悪くなる訳で。

 なかなか酷い扱いだったが。

 それ以下になる。

 どんな羽目に遭うか、想像もしたくない。

 

「何の為に買われたと思う?」

「えっと、私は獣人ですし狩猟のお供とかですか? ご主人様は森に詳しいようですし」

「自信あるの?」

「嗅覚には自信が。……もしかしたら、少し衰えてるかもしれませんけど」

「あの店、それに君も匂い強かったからね」

「で、でも! すぐに勘を取り戻して見せます!」

「やる気出してくれてるとこ悪いけど、残念」

「え」

「ハズレだ」

 

 この子に言われて今思い至った。

 そういうのもあるのかと。

 狩猟とかやるなら、嗅覚ってかなり便利だもんな。

 獣人にしかない利点だ。

 人間の奴隷じゃこうは行かない。

 猟犬とかなら嗅覚という点では劣らないのかもしれないが。

 言葉通じないからね。

 使い勝手が悪い。

 差別されてたとしてそのメリットがなくなる訳じゃない。

 この国じゃ一般的な購入理由か。

 

 ま、俺の場合は魔眼があるし。

 そもそも狩猟もあまりやらないからね。

 奴隷をそれ目的で買う事はないな。

 

「仕方ない、ヒントをあげよう」

「ヒントですか?」

「俺は男で君は女だ。分かるか?」

「はい」

「よろしい。つまりそういう事」

「……え?」

 

 キョトンと、惚けた顔。

 

「私と、ですか?」

「うん」

「獣人ですよ?」

「ケモ耳って可愛いよね」

「……」

「どした?」

 

 驚いたような表情。

 そのまま、固まってしまった。

 あれ?

 想定外の反応だ。

 

「この国の人って、獣人はそういう対象にならないんじゃ」

「多数派とは言わないけど、そんな事ないでしょ」

「そうなんですか?」

「まぁ、少なくとも俺は一目惚れして買っちゃったしね」

 

 てっきり嫌悪感を示されるかと思ったが。

 そんな感じではないな。

 胸の前に手を当て。

 上目遣いで俺を見つめるような形。

 

「そういうのは嫌?」

「……嫌じゃ、ないです」

「あ、そうなんだ」

「何でご主人様の方が驚いてるんですか?」

「こんなおっさんに求められても嬉しくないでしょ」

「そんな事」

「?」

「私とする為にお金払ってくれたんですよね?」

「そりゃ、奴隷を買った訳だしね」

「求められるのは、価値を認められるのは嬉しいです」

「そんなもんか」

 

 正直意外だ。

 奴隷な以上、断ったりとかは不可能だが。

 それでも感情は本人の自由。

 もっと嫌がられるかと。

 そうでなくても、微妙そうな反応されるのが普通。

 まさか喜ばれるとは。

 変わった子である。

 ま、嫌われてないならそれでよし。

 好かれて悪い事はないからね。

 

「不良債権だと。ずっと言われてました」

「……あそこの店で?」

「はい」

「ま、あの扱いだしね。想像はつく」

「長い間売れ残ってしまって。それで」

「いつからあそこにいたの?」

「よく覚えてません。でも、冬は初めてです」

「そっか」

 

 一年はいなかった。

 と言っても、奴隷は在庫持ってるだけで経費が半端なくかかるしな。

 売れどきもある。

 基本的には仕入れ直後が一番売れる。

 それ以降は心身共に衰えるから。

 経費はかかるのに価値は落ちていくという有様。

 

 多分、そこそこの値段で仕入れたはずだ。

 それで売れなくて。

 経費が利益を圧迫し。

 結果あの扱いにつながっていたのだろう。

 キツかったな。

 あまり救世主的な目で見られても困るが。

 まぁ、あそこより環境が悪くなる事はない。

 そこは保証しよう。

 

「ところで、どこに向かってるんですか?」

「ん? 娼館」

「へぇ……。え!?」

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