ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

71 / 267
王都 13

 店内もやたら高級そうな内装。

 至る所に、絵やら彫刻やらの美術品が飾ってあったり。

 レストランにそれ必要か?

 正直落ち着かない。

 俺みたいのが普段からくるような場所ではないな。

 場違い感がかなり強い。

 

 今更だが、ドレスコードとか大丈夫なのだろうか。

 普段着なんだけど。

 それも冒険者の普段着。

 庶民が身につける服の中でも上質とは言えない類。

 心配だ。

 俺だけお断りとかされかねない、よな。

 

「先輩、どうかしましたか?」

「いや服装とかこれでいいのかなと」

「気にしなくて大丈夫ですよ」

「そうか?」

「考えすぎです。ただの飲食店ですから」

 

 まぁ、そう言われればそうなのだが。

 この店の内装や外装を見るとね。

 俺もちゃんとしないといけないんじゃないかと思わされる。

 ノアが大丈夫っていうなら多分そうなのだろう。

 俺よりよほど詳しいだろうし。

 

 昔王都にはいたんだけどね。

 あの頃は子供だったし。

 そもそも、前世含めてずっと庶民だったから。

 この手の店には無縁なのだ。

 学園で完全に浮いてたしね。

 友達となんて機会もなく。

 経験は皆無である。

 ノアを信じる以外の選択肢はない。

 

「いらっしゃいませ」

 

 店に入ると、こちらから声を掛けるでもなく店員らしき人が声を掛けて来た。

 下品ではない程度の上質そうな服を身に纏っている。

 シンプルなデザインながら生地の質と仕立てが良さそうな感じだ。

 服なんて詳しくないからね。

 あくまでただの予想。

 まぁ、こんな店の店員だしこの予想が間違ってるって事はないだろうけど。

 

 謎の既視感。

 ……あぁ、娼館の店員か。

 似たような服装をしていた気がする。

 それは失礼か。

 いや、失礼ってのも失礼か。

 

「2名様でご予約頂いていたノア様ですね」

 

 ……予約?

 

 ノアの方を見ると、目があった。

 ニコリ。

 微笑まれた。

 

 レストラン行くのって俺から提案した気がするんだが?

 確かに店選びは任せたけど。

 誘った時、結構驚いてくれてませんでしたっけ。

 もしかして初めからその予定でした?

 かなり自然だった。

 ノアって実は演技の才能もあるのでは?

 天才だな。

 いや、自分が予約してたとしても相手が誘ってきたら驚きはするか。

 特に俺なんてこれまでそんなことしなかったし。

 誘うとしても大抵が居酒屋だ。

 うん……、これは俺が悪いって方向に帰結するのでは?

 よそう。

 突っ込んでもよろしくない方向に行く気しかしない。

 それに、そういう話は野暮って物だろ。

 

 今日俺がくることは予め分かってただろうしね。

 ドラゴン便用意してくれたのもノアだから。

 多分、このレストランに行くことも含めて予め予定に入れてたのだろう。

 俺から言い出したのを予想してたかは知らないが。

 元から行きたかったのならむしろ。

 俺の選択肢は間違ってないってことだし、いい事だよな?

 

 完全に手のひらの上で踊らされてる気はするけど。

 エスコートをお任せしたのも含め、結果オーライって事で。

 

「料理楽しみですね」

「だな」

 

 店員に案内され、席につく。

 人気店なのだろう。

 他の席は結構埋まってる様子。

 

 ノアはそんな事をいってニコニコしている。

 予約の件に触れる気はないらしい。

 ま、いいや。

 実際助かったし。

 すぐ座れたのは予約のおかげだろうから。

 

 テーブルの上にはカトラリーにナプキン。

 お品書きらしき紙。

 後、謎の花。

 まぁ、最後のはただの飾りだろう。

 

 カトラリーも高そうではあるが、さりげなくお品書きが人数分置いてある。

 そういう所からもこの店が高級店なんだなって。

 前世じゃ別にそこまで高くなくても当然のように置いてあったけど。

 ほら、この世界じゃ紙が高いから。

 紙一枚でも案外バカにならない値段になる。

 再生紙みたいな物ならそこまでではないが。

 これは白が綺麗。

 結構品質の良さそうな紙だ。

 いや、高級品と言っても金とかミスリルとかと比べられるほどじゃないんだけど。

 かと言って気軽に使えるような物でもない。

 それを惜しみなくこうやって置いてる時点でなんとなく察する所がある。

 

 予想通りコース料理らしい。

 ほぼ経験ないぞ。

 前世を含めて数えるほど。

 それも結婚式とかだし。

 こんな高そうなお店は初めてだ。

 

 マナーも全然知らない。

 いや、前世のはかすかに知識があるんだが。

 それでも曖昧だけど。

 なんだっけ?

 ナプキンは膝の上。

 カトラリーは外側から使うんだっけか。

 これぐらいのうっすい知識だ。

 

 ただ、これは曖昧以前に前世の知識である。

 異世界のマナーはちんぷんかんぷん。

 冠婚葬祭的なの無いからね。

 いや、あるにはあるんだが。

 庶民は無関係。

 この手のマナーは必要に駆られて覚える物だからね。

 前世でもだいたい付け焼き刃だったけど。

 式場の前でスマホを見たりとか。

 それぐらい。

 しかし、この世界じゃその機会すら無かった訳で。

 そもそも覚えるきっかけが存在しない。

 

 もしかしたら学園で教えてくれたのかもしれないが。

 すぐ辞めちゃったし。

 一緒に食べるのがノアなのが救いか。

 大体の事は許してくれそう。

 まぁ、恥をかきたい訳でもないから一応気をつけるけど。

 ナプキンは畳むなとか。

 それ系の意味不明なマナーもあるからね。

 知らない時点でもはやどうしようもない気もしている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。