ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者   作:哀上

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学祭 2

 にしても……、そうか。

 割引、か。

 予定通りトーナメントの方は見に行くのだが。

 そのためにわざわざ王都まで来た訳だし。

 ただ、それは別として。

 割引と言われると。

 ちょっと、惹かれるものがある。

 

 実際、トナメまで少し時間あるんだよな。

 他はどうしよっか。

 それがメインイベントってだけで。

 学園祭自体は結構早めの時間からやってるらしい。

 ノアに聞いた。

 もうそろそろ開始時刻だろうか?

 

 祭りって雰囲気は好きなんだけど。

 在学中に経験出来なかったし、興味はある。

 でも、学園祭だからなぁ。

 おそらくお酒とかは飲めないだろうし。

 大学とかなら話は別なのだろうが。

 祭りの雰囲気って酒あってこそみたいな所ある。

 まぁ、仕方ないんだけどね。

 メスガキを始め。

 小学校高学年程度の子も結構いるから。

 

 どちらにしても、時間はあるのだ。

 トーナメント中は酒飲めなくなるのだしここで……

 うん。

 我慢は体に良くないからね。

 昨日も一昨日も飲んではいたのだけど。

 それはそれ、これはこれ。

 俺の様な人間がこの誘惑に耐えられるはずもなく。

 というか耐える気もない。

 なら、初めからこっちきてない訳だし。

 

「トードーの串をひとつ」

「ん? お前さん、今日も来たのか」

「まぁね」

 

 すっかり常連客だ。

 王都に来てからひと月も経っていないのだけど。

 屋台のおっちゃんに覚えられてしまった。

 しょっちゅう来てるからね。

 そりゃ、こうなる。

 

「そういや、ここ数日屋台出してなかったけど何かあったのか?」

「……ちょっと体調崩しちまってね」

「もう大丈夫なのか」

「なんの。少し休めばしっかり元通りよ」

「それは良かった」

 

 別に毎日来てる訳じゃないが。

 本当よ?

 毎日の様に来ては居たが、毎日来ていた訳ではない。

 って、そんな事はいいのだ。

 これまで休んでるの見たことなかったからね。

 店が出てないのを見た時は結構驚いた。

 

 1人で切り盛りしてるし。

 悪化して商売できなくなったらそれこそ一大事だからね。

 休めば日銭は入らなくなる訳だが。

 目先のことばかり考えるのも問題だ。

 その判断も当然か。

 俺としてはおっちゃんの串がなくてちょっと寂しかったけどな。

 まぁ、元気そうでなにより。

 完全復活って感じ。

 とても数日前まで体調崩してた様には見えない。

 

「そういや今日は学園祭だな」

「だな」

「お前さん、本当に行くのか?」

「まだ疑われてたの? ちょっとショックなんだけど」

「やめといた方がいい、捕まっても知らんぞ」

「冗談」

 

 捕まるって。

 まぁ、いいイメージ持ってない庶民は多いか。

 学園にと言うよりは貴族に。

 身分がしっかりある世界だからね。

 文字通り住む世界が違う。

 普通はあまり気にしないものだが。

 考えても仕方ないしね。

 でも、王都にいると結構目に入るのだろう。

 特に今回見たいのがあると。

 意識はさせられるか。

 

 にしても、何故ここまで疑われるのか。

 なんとなく察しはつくけど。

 多分、ちょっちゅう飲み歩いてるのが原因なんだろうな。

 とても伝がある様には見えない。

 実際有ってない様なものだしな。

 ノアの勘違いが繋いだものだ。

 本来存在しないもの。

 そういう意味じゃそこまで的外れでもない。

 

 串をつまみに酒を呷り屋台を回る。

 

 流石に、少し早めに行っといたほうがいいか。

 なんとなくそう思ってきた。

 外もこれだけ楽しんげな雰囲気なのだし。

 メインイベントに入れるのだ。

 酒が無いとはいえ、その権利を使わないのは損だろう。

 

 貴族街の方。

 なんだかんだ、こっちは久しぶりだな。

 特に用事もなかったし。

 

 俺の服装だと浮く。

 少し前、スラムでも浮いたが。

 こっちは別の意味で。

 普通の服着てるんだけどね。

 極端なのだ。

 

「……招待状のご提示お願いします」

 

 学園の方に行くと、門の所で止められた。

 招待状の提示を求められる。

 そこにいるのは兵士。

 ガチガチだ。

 本当、学園祭とは思えないな。

 

 受付とか、生徒がやるものな気もするが。

 場所が場所だからね。

 生徒を守る為に、警備を厳重にしているのだ。

 確認作業を生徒がやるのは。

 確かに、本末転倒もいいところである。

 

 訝しげな視線。

 出した招待状を繁々と確認している。

 他はそこまで厳しくない。

 サッと見てる程度なのだが。

 服装のせいだろうな。

 

「身分証を確認してもよろしいでしょうか?」

 

 明か疑われてますね、これ。

 本物なのだが。

 盗んだものだとでも思われたのだろうか。

 分からんでもない。

 冷静に対応してるし。

 仕事できる人なんだろうけど。

 

 でも、ちょっと嫌な予感が……

 

 一応、身分証を出した。

 と言っても、俺の身分を証明するものなんて冒険者カードぐらい。

 しかもDランクの。

 こんな場所で信用に足る訳がないんだよな。

 偽造とかではなく。

 単純に本物を手に入れる難易度すらバカ低いのだから。

 

 顔が険しくなる。

 雲行きが怪しくなってきた。

 

 周りもヒソヒソと。

 だんだんと視線が集まってくる。

 普通と違うのは。

 人だかりにはならないって所か。

 むしろ距離を取られる。

 

 他に出せるものなんて学生証ぐらいしかないが。

 とっくに有効期限切れの。

 しかも卒業生でもないし。

 さらに面倒なことになるのが目に見えている。

 

「……あっ」

 

 学園の中から声が聞こえた。

 なんとなく聞き覚えのある声。

 見ると、メスガキ。

 

 助かっ、……ているのか?

 ふと最後の記憶がフラッシュバックした。

 絶望したかのような表情。

 どうしよう。

 ここで有る事無い事吹き込まれたら。

 まずい。

 そのまま牢屋まで一直線である。

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