皇帝の友達   作:零課

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 いい忘れておりましたというか、気づいている人もいるかもですが土御門先生の下で調教助手として頑張っている平野くんは ハジケリスト世代だろ! ではナギコ、ミコトの調教師をしている平野調教師の若い頃です。


 できれば早いうちに前田牧場長の前田利褌 も出したいですね。


一緒にクラシックへ向けて準備

 『ぬぉー!! うぉー! もういっちょー!』

 

 

 『ほースピードはあるが・・・まあ、まだまだだな』

 

 

 またルドルフに負けた! くっそー・・・もういっちょ! あ、どうもみなさんサンダーレディです。年末の阪神JFに負けちゃった後、うちのオーナーのセレアさんとシンボリの和嶋オーナーの話し合いの結果シンボリ牧場にちょっとお邪魔することに。

 

 

 なんでって? ただいま坂路をダッシュしてルドルフと練習していたんだけど、シンボリ牧場は錬馬道場というすっごい急勾配の坂のある円形のコースがあるからそこで走っているのよね。

 

 

 放牧も気楽にできるけど当時の美浦トレセンよりも過酷な状況での練習もすぐできる。休憩と鍛錬両方できるってことで厚意に甘えました。

 

 

 「うーん。スピードと安定感はやはりシンボリルドルフが上だねえ。それとやっぱり坂だとパワーの無さがよく分かる。同期の中だと高いほうだけど、レディもしばらくここで調教をしたほうがいいな」

 

 

 「いやー千葉にあるシンボリ牧場様々。ところで先生はなんでここでの放牧を選んだんです?」

 

 

 「うむ。レディの切れ味をマシていく。スピードや持っているエンジンは間違いなく牡馬に負けないほどの物を持っていると私は思っている。だけど、阪神JFでの速度が伸び切る前に負けたのを思うと加速速度自体が鈍い。

 

 

 ヨーイドンでの加速勝負に弱いとなると、今アメリカナイズが進んでいる日本競馬だと古馬になって次世代に挑む時に切れ味で負けたりしたら繁殖牝馬としての評価にも響く。それはもったいないだろう?」

 

 

 「たしかに今はリボー系とかよりもナスルーラ系、セクレタリアト系列がもてはやされつつありますね。マルゼンスキーからのニジンスキー系列もすごいですが」

 

 

 「その中でヒンドスタンの血統ながらあのスピードを持つのは強みだし頭もいいレディだからパワーを鍛えてスピードに乗れるようにすれば化けると思ってなあ。やーオーナーさんには頭が下がるよ。クラシック後期まではぶつからないとはいえルドルフのライバルになりかねない同期とこうして練習させてくれるんだから」

 

 

 ほへー・・・ようは地面を最初に蹴って初速に乗る力を付ける練習かあ。納得。たしかに後半伸びたけど、なーんか変な感じだったし。

 

 

 『お前さんは初GⅠを落としたか。岡崎も悔しがっていたが、まあ次に勝てばいいんじゃないか』

 

 

 『そのつもり! だけど、ルドルフはなんでGⅠいかなかったの? 多分勝てたのに』

 

 

 『なんか、海外のやつにどうたら~~っておっさんが言っていたけどそれじゃないかな。まあ、多分俺を使って一つ騒ぎでも起こしたいんだろうさ』

 

 

 『あ~・・・』

 

 

 あのオーナーさんだもんなあ・・・いや、功績もすごい人だけどね。癖が強いのよ。

 

 

 『ね、ね。走ろー! もっともっと!』

 

 

 『ほーい。岡崎くんももう一本。と言っているし平野くんも乗ってくれるから走ろうかー』

 

 

 で、私と、ルドルフと、一緒に並走していたのがうちの牧場から来てくれましたハスキー犬のヨーコ。

 

 

 オーナー曰く『他所様の牧場に預けるから不安にならないように帯同犬をつれてきますね。いい子ですから』という感じでつれてきてくれた。私も楽しく過ごせていい感じ。ルドルフも案外気に入ってくれているようだわ。

 

 

 『おいお前ら! 俺も混ぜろや!』

 

 

 『シリウスのへっぽこは引っ込んでいろ』

 

 

 『まーまー。シリウスもいいけど、喧嘩はダメよ?』

 

 

 で、そんな中にデビューを控えているシリウスシンボリも来ちゃった。いやーこの馬版範馬勇次郎みたいなエピソード持ちのルドルフに絡みに行けるってすごい度胸だわ。

 

 

 はいはい二頭揃って威嚇しないで。走って発散するわよー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~岡崎くん心の日記~

 

 

 シンボリ牧場の設備は噂に聞いていたが想像以上だった。淀の坂より険しいかもしれない坂路を用いての鍛錬。ルドルフたちのいる美浦トレセンの調教が楽に思えるというのも納得だ。

 

 

 これも海外レースを視野に入れている和嶋オーナーの野心的目標と馬は鍛錬で変えられるという考えもあってこそだろう。ルドルフのあの雄大な肉体と、美しい最高の毛並みはここで鍛えられたのだなとまるで相棒の里帰りについて来れたようで感慨深い。

 

 

 一方でレディの敗因をすぐに見抜いていた先生の慧眼、オーナーの伝手の広さもあってここでレディを鍛えつつ養生の場所として借りることができたのはありがたい。レディは一度の負けで終わる器じゃないのは僕もよくわかっている。彼女の脚の切れ味を上げるために今ここの坂路で研いでいき、ルドルフと磨き上げていけばきっとクリフジのレベルにも行けるかもとウキウキするほどに。

 

 

 彼女の優しさには一緒に来てくれた友達のヨーコちゃんも楽しそうに走ってはルドルフ、レディ、シリウスの三頭にも仲良く触れて、皆に愛嬌を振りまいて人馬を和ませている。厩舎によってはウサギを飼って馬たちの癒やしにしたりしているし、猫もいる場所も多い。

 

 

 けど犬はあんまりいなかったが馬と並走できたり、この人懐こさ。野犬、野良猫対策で野犬を厩舎に導入するのはありなのだろうか。ルドルフの身辺警護をするボディガードとしていいかもしれない。少し怖いがそれとなく和嶋オーナーにも話してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ゼハー・・・ゼハー・・・くっそぉ・・・こんどこ・・・』

 

 

 『シリウスちゃんやすも?』

 

 

 『そうよーシリウス。私ももう走らないし、変に気合い入れても大変だし、後私一応バカンスも含めてきているから』

 

 

 『今日はこのくらいで勘弁してやる。おい平野! さっさとリンゴと角砂糖、飯を用意しろ!』

 

 

 「やー皆お疲れ様。さ、まずはシャワーに・・・ああっ! 痛い痛い! やめてルドルフくん噛まないで! 引っ張らないで! あぁあああ^^~~~!!」

 

 

 平野くんがまた悶絶しておられるぞ! というかルドルフウチの調教助手を噛むんじゃない! 岡崎くんも止め・・・ああ、なんか羨ましそうにねっとりとした視線をルドルフに向けている!

 

 

 あ、でもねっとりタッチングでルドルフが落ち着いてきた。あーよかった・・・平野くんの指は・・・無事だね。よし! 青あざはあるけど・・・

 

 

 へばっちゃったシリウスも牧場の人がなんとかしているし、ヨーコがいる手前暴れないから、まあ大丈夫かな?

 

 

 「よーしレディ。シャワー浴びようか。今日は石鹸もしてあげるぞー」

 

 

 『わーい。レモン石鹸がいいなあ』

 

 

 『私も私も!』

 

 

 「ヨーコちゃんもお風呂好きなのかい? あ、そういえば爪切りの方も・・・・」

 

 

 土御門先生がそう言うとピューと逃げていくヨーコ。あー爪切りの方はなあ。ウチのオーナー以外にはさせないくらいだし。だいっきらいだからね。その時の顔芸は見ていて笑えるけど。

 

 

 んまー・・・私がシャワー浴びていればよってくるから爪切りは見せないでね先生?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『んーうまい♪ 北海道の野菜もいいけど千葉の野菜も美味しいわ~♪ 水の方はやっぱあっちかな。あ、おかわりー』

 

 

 『・・・よく食べるなあ・・・』

 

 

 『逆にルドルフそれでよく持つね?』

 

 

 シャワーあの後にあったかい厩舎で食べるご飯は空きっ腹に響く。いやー美味しい。食事の感じも厩舎のそれと変わらないし、さすが名門シンボリ。ちゃんと餌の配分のマニュアルとか備えもあるんだろうなあ。

 

 

 その飼料の中に交じる野菜が千葉産と聞いて興味があったけどこれはなかなか。いつか千葉県の名産品だよね? の落花生も食べてみたいけど馬は落花生ってOKだっけ。

 

 

 で、ルドルフは私よりガタイがいいのに私より少ない餌で満足して、おやつをよこせと壁を蹴るわ吠えるわ厩務員を噛もうとするわでこりゃライオンですわ振る舞い具合。こいつ皇帝じゃなくて暴君じゃないの?

 

 

 『食は最低限、栄養と甘みで満たせばレースのときはその程よい空腹の怒りが力を生むのだ。うーん・・・今日の角砂糖もうまい・・・』

 

 

 『言っていることがプロボクサーのそれだね。あ、私は角砂糖はいらないからそっちに上げる』

 

 

 『お、ありがたく。だが手は抜かないぞ?』

 

 

 平野くんは私の考えがよく分かるようで飼料の中に入れてくれた角砂糖を唇で咥えてルドルフの方を見れば持っていってくれた。

 

 

 で、そっちはお代わりするのか皇帝よ。

 

 

 『いや、私とあんた多分今年の11月くらいまでは最低でもぶつからないよ。ウチのオーナーがキチガイじみた挑戦でもしなければ』

 

 

 『・・・なに? レディとのレースは楽しみだったが・・・お前さんをねじ伏せた時に岡崎はどんな顔するかも含めて』

 

 

 『どんな楽しみ方ジャイ! 後一緒のレースだと下手すると岡崎くん私の方に来る可能性もあるのに』

 

 

 あ、そっかあ。と少し耳を落としてからまあしょうがないと角砂糖をコリコリ食べるルドルフ。本当に負けを考えていない強さと自負があるからこそだなあ。いつか負かしてやりたいわ・・・

 

 

 『わーここのお肉美味しい♪ うーん・・・あ、散歩もいってきまーす』

 

 

 そんな私らの話はどこ吹く風で焼き肉を食べて牧場周りを見に行ったヨーコを見送る。あの子、馴染んでいるなー。でも夏場には北海道に戻さないと暑さでグロッキーになりそうだから私と一緒の時期に戻らないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふーむ・・・バッキバキになったなレディ。いやーこれはいい仕上がりだ・・・」

 

 

 「厩舎に戻ったらプールで仕上げましたししなやかな巨大な筋肉。これはいけますぞ」

 

 

 「よし。チューリップ賞に挑戦といこう」

 

 

 『お~』

 

 

 『はーい』

 

 

 『ヨーコちゃんは走らないよ?』

 

 

 『そんなー!』




 皇帝どころかライオン、暴君扱いのルドルフにこれまた気性難のシリウス。気性難ゆえの負けん気が前進する力になる。というのも説得力あるし愛されるのもわかる気がします。


 次回からクラシックシーズンスタート。
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