えー。やってきました天皇賞・春。日本でも長距離レースと言えば。な有名なレースの一つ。
私も海外遠征で色々賞金を稼いだので出走許可はもぎ取って来たのだけど、うん・・・帰りたぁい。
『今年の春の天皇賞。かつての天覧競馬以上の豪華さ! かの英国の女王陛下に加えアラブ、サウジの首長、王様が来てくださり天皇陛下もご謁見。
誰もがいいます。日本の皇帝と雷鳴を見に来たと。この盛り上がりも納得と言えましょう!』
まずは、なんか海外の皆様からは『ヒンドスタンの血脈から更に生まれた牝馬が海外GⅠを制覇ってマジ? しかも面白いレースする』『え。パーソロン? 未勝利の種牡馬から生まれた馬が日本で無敗の三冠? レディ以上の怪物?』 ということで日本競馬面白そうやん。
ってことで来てくれましたよ。特にアラブの首長さんはモロ・ハァーンさんもいるところだからことさら自国から送り出した名馬の一族が神讃と言われるわその子孫が自国で健闘するわでかなりウキウキ。
ということで今もみんなで日本のおいしい水と各国の酒を味わいつつワイワイ。昔見た絵本のような王様たちが揃いまくりの光景。
『そして我らが皇帝シンボリルドルフと岡崎騎手のコンビ、海外に日本の強さを見せたサンダーレディと田所騎手。ミスターシービーとカツラギエースの後継者たちが今日も元気そうだ!』
「レディ・・・」
『レディ・・・』
「やーこんな舞台で勝てたら、最高だなあ・・・ね。レディ」
『やめろぉ!』
だってのに私はなんか二人と一匹のオスのネットリ視線を感じてドロドロの昼ドラの中に放り込まれた気分。なんで同じ競馬場で華やかな場所とドロドロのヘロド、もといヘドロみたいな場所が出来上がっているのよ! ここは睡蓮のある場所じゃないっての!
『サンダーレディ、何やら落ち着きがない様子。久しぶりの日本の芝にテンションが上っているのか。それとも勝利を目指すと気合があるのか。尾花栗毛の馬体が輝いております』
「レディちゃーん! キャー♡ かわいい~!」
「尾花栗毛っていうけど、金色? ブロンドみたいな色なのね。かわいい~♪ おめめクリクリ」
はぁー・・・お客さん。なんか女性の方もいるし若い兄さんらもいる。その方々の歓声に応えてファンサしましょ。
「牝馬は今回はレディちゃんだけかあ。うーん。馬群の中に飲まれるのは今日はやめとく?」
『あー・・・うーん・・・うん。そうしようかな?』
田所さんの話に、今日のルドルフを見ているとなんか私が牡馬の中に揉まれていると変な威圧出しそうで私も疲れそうなのでそれを了承の意でブルルと鼻を鳴らす。そして田所さんもなんか、いや真面目にホースマン。ホースウーマンは私達の言葉をマジでわかっているようなレベルで理解しているので撫でてくれる。
そしてそれに可愛いとカメラを向ける女性の皆様。なんだろ。オグリブームの前に競馬場に女性が増えているの。私が遠征している間に若い世代の皆さんを取り込むために色々したのかな。それとも、前代未聞の天覧競馬にミーハーも興味本位で来てくれた?
まあ、なにはともあれお客さんにお辞儀をしたりしつつぽこぽこ。ゲートの前に集まってそろそろレース前だ。今日も頑張ろう。長距離でもう一度成果を出せれば私の価値もうなぎのぼり~
『さぁ、各馬ゲートに揃いました。次々とゲートに入っていきます。今回の注目馬2頭もゲートに入ります。春の天皇賞。新春のGⅠの栄光は誰の手に・・・』
しかし、長距離かあ。逃げるのはいいとしてそのペースよね。どこで息を入れるか・・・
『スタートしました! 前に出たのはメイショウミーム。続いてシーカーン。シンボリルドルフは3番手。続いてトウショウバーン。サンダーレディはやや外から遅れて5番手。今日はいいスタートですが少し外から様子をうかがいます』
あ、今日はスルッと行けた・・・? 私比較だと。まーいいや。これなら膨らむ中団とか相手にもうちょい外で走るのは疲れるし今回はベストベスト。
『長いレース。誰が前に出るか、どう動くかと馬群はやや伸びずやや固まりつつ先頭集団が形成。第一コーナーから第二コーナーに入ります。
サンダーレディは4番手。逃げの名馬ですが後から仕掛けるつもりか。前にグイグイ出ない展開に会場もすこしどよめいております』
「まあ、まくり逃げだからねえ。ささ。徐々に行こうかあ」
『逃げなのに前に出れなくても潰れないって改めて異常扱いなのね。ほいさ』
一応レースは4分の1を過ぎたくらい。徐々に前に出て今度はペースを握るくらいにしていくと。
『サンダーレディ前に出る。長い直線でするっと先頭に躍り出た。2番手との距離は1馬身、2馬身。グイグイ伸びて3馬身。さあいつもの戦闘スタイルになった。世界でも通用したその逃げがこの競馬場でも見られるぞ。
シンボリルドルフと岡崎騎手は動じない。同期の皇帝は先頭集団の2番手でまだ様子をうかがう。レースはようやく中盤。ルドルフもレディも、各馬たちも仕掛けていくか。いやまだか。レースが動くぞ』
うーむ。いい感じ。息を入れつつじっくり走る。距離はできればー・・・まあ、少しサボって後半に逃げきる体力がない方が辛いし今は我慢我慢よ。
「ふぅーむ・・・よしよし。ここで。えーとねえ」
あ、田所くんがムチをちょい見せしたから速度を出して。しまったからまた落として。ほいほい。コーナーに入るかな・・・?
そこは落として。ゆる~い中間の方で加速すると。了解。
『サンダーレディがより前に出た。ぐいっと伸びて第3コーナーに入っていくぞ。先頭集団は仕掛けない。仕掛けないのか! 気を抜くとサンダーレディが逃げ切るぞ! おおっと先頭集団もしかけ始める。しかしルドルフ仕掛けない。ルドルフ仕掛けない!
サンダーレディは第4コーナーを抜けて最終直線へと伸びていく!』
よしよし。呼吸もいい。最後の直線でドーン! と! 目指せ芝の長距離レースゲットー!!
『そう来るよな。読んでいたぞ』
『・・・え?』
『先頭集団追いつけない! レディの末脚が京都競馬場にもさくれ・・・ああっとルドルフと岡崎騎手が飛んできた! 先頭集団が膨らんだ合間を縫って追いついてきたぞ!』
ウッソでしょ! 私はまだしも田所さんらが仕掛けて、それを追いかけようとしていた先頭組が伸びた間に入り込んできたってこと? そりゃ岡崎くんが競馬を教わったと言われる戦術だこと。でも、こっちのリードはまだ、まだ・・・!
『サンダーレディとの距離ももうない! 叩き合いだ! 最内を走るレディと側を走るルドルフ! やはり最後はこの2頭に絞られた! 2頭の勝負に誰も入り込めない! レディかルドルフか! レディか! ルドルフか!』
あぁーん! あっという間に距離が詰まっている! この理不尽の権化が! そりゃ競馬をさせれば最強と言われるわ! こんなに頑張っているのにー!!
『ゴールまでもう少し、もう少しだ! ああっとルドルフが僅かに抜けた! ルドルフが先にゴール! 1着はルドルフだ! 頭一つ抜けてのゴール!』
負けたぁ・・・かなりいいレースをしたはずだけど、2着。いや、むしろGⅠで2着はいい具合と考えよう。
『レディは強い。だからこうするだろうなっていう最高の動きをした。だから読みやすかった。いい走りだったぞ』
『ありがとうルドルフ。でもその御蔭で貴方に負けちゃったからちょっと複雑よぉ』
くはぁーまあまあ・・・ひとまず掲示板も入った。そして皇帝からの称賛ももらえた。これで良しとしよう。悔しいけどさぁ。でも、でも悔しいとなってももう勝負は決まった。何も起こらないからねえ。
女王陛下たちもみんなこの勝負を楽しんでいたみたいだし、拍手も称賛もいただけたからこれでよし。うん。そうしよう。
田所さんもありがとう。一番悔しいはずなのに私を労ってくれて。それとムチも使わずの動き。イキイキできてよかったよー。
~岡崎くん心の日記~
ルドルフが見事に次の戴冠をした。しかも天覧競馬という。天皇陛下のみならず数カ国の王族が来賓してくれた天皇賞で。だ。この時に手にする春の盾。シンボリのオーナーさんもとても嬉しそうで、そして僕もとても誇らしかった。皇帝ルドルフは日本のみならず世界のホースマン。しかも国でレースを開けるほどの大富豪であり権力者にも認められたのだ。嬉しくないわけがない。
ただそれでも僕の心には暗い影が差す。サンダーレディ。海外のGⅠに3つ挑み、2つを制覇。サウジカップは田所くんがやったか・・・それでも、海外のGⅠ。日本競馬の悲願をたった数ヶ月で叶えてきた女傑を僕は天皇賞で負かした。僕と一緒に香港を制覇した彼女が2着。
僕とルドルフが彼女に敗北の泥をつけたのだ。競馬は過酷だ。勝者は常に1頭のみ。それはわかっているつもりだしわざと負けるつもりは毛頭ない。ルドルフとなら負けないと思っている。だけど彼女が負けるのを見るのは、負けるのは悲しい。
彼女は賢い。負けたのをわかってる。落ち込む彼女の美しい肌に田所くんが触れて優しく慰める光景に胸が締め付けられる。ああ。レディ。君がそんな男と一緒にいて、そんな顔をするべきではないのに。僕が間違っていたのかい?
『あー・・・ちかれたぁ』
「レディ、ぐったりしていますねえ・・・一応食欲はあるんですが」
「初めての胃薬を使ったほどだからなあ。長距離はあまりせずに、肉体よりもストレスを考えて少し休ませつつレース調整をしようか」
えーレース終了後の流し運動と疲労抜き。いやー・・・胃薬でケアをしてもらったけどお馬さん用の胃薬すごい。だいぶ楽になった・・・
あ、それと平野さん。土御門先生。大体原因はレースの疲労ってより気苦労だからレース選びは・・・ルドルフと被らないってなるのは・・・無理だよねえ・・・私がGⅠあんまりでないって多分叩かれるだろうし。で、ルドルフもでない理由がない。
セレアさんは「今回は最高のレースを見せてもらったわ。ありがとうレディ」とウッキウキだったしで。多分私の鞍上問題はつきまといそう。
「とりあえず、夏前まではゆっくり休ませつつ調整をしよう。2月からいままで激戦続き。ここまで頑張って成果を出した名馬を労わなければな」
「ですねえ。じゃ、レディもちょっとしたら美味しいりんごやみかんをあげるからお腹の調子を治すんだよぉ~」
『あ、それは嬉しい。わーい』
次はできればGⅡにして。ルドルフとレースは嬉しいけど疲れるわぁん。
海外遠征のほうが気分的には楽じゃね? となりはじめるレディ。国内だと昼ドラになりかねないので致し方なし。
改めてテイオー時代辺りまでのレースを見ると結構注目馬以外は実況でも名前を言ってくれなかったりクセがあるかたもいて面白いですね