「と、こういう形で現在のウマ娘と人の道路交通法の基礎は江戸時代から整備され、そのための街道もあり・・・」
「ふーむ・・・・」
歴史、もとい公民の授業を聞きつつも、思考の半分は私の今後の生徒会の体制について考えていた。前の生徒会。ハイセイコー先輩らの時代だと基本国内に専念する人達が多かったからすぐに対応できたけど私みたいに海外遠征を長期で行う子が生徒会につくと、どうしても負担が増える時がある。
そうなると、ルドルフの後輩や、私の後釜に考えると・・・・やっぱり素直に人手よね。そうなると会長を増やすのはダメとして、でもある程度の権限と発言権は持たせたい。じゃー
「レディさん? 電話がなっていますが大丈夫ですか?」
「え? はい? え、あっ。失礼しました! あちゃー・・・これ、家のためのやつで・・・失礼します」
集中しすぎていたら先生に声をかけられ、みんなの視線も感じれば電話が。学校内だと基本マナーモード、完全消音にするのが校則なんだけど、私とか、いわゆるお嬢様、名家の仕事にある程度関わる子には許可証を提出して許可すればいわゆる仕事、家専用のスマホをマナーモード無しで使える。
でもまあ・・・・・・・・同時にそれが授業中の学生のほうに完全に聞こえるやつを鳴らすってことはまあ、だいたいロクでもない話が飛び込んでくるのはほぼ確定なわけで・・・
「もしもし。あ、立花さん。どうし・・・・・・・・は? メジロ家の工場地帯の羊蹄山が噴火したせいでメジロ家に壊滅的大打撃!? あ、あそこって・・・近くに・・・」
飛び込んできたのはとんでもないニュース。メジロ家の大打撃。というか、羊蹄山の辺りはほぼメジロの城下町。色々な施設も人も集中していた北海道の観光地、工業地でもあったし・・・うーむむ・・・
「は、はぁ。それで岡山グループと縁の深い私の家も本家のみんなと資金供出のための緊急会議をするから私も来てほしいと・・・・・ああ。なるほど。アラブとか香港の知り合いとの伝手もですね。わかりました」
本家の執事長が分家の小娘の私にまで声を掛ける。こりゃ、相当な事態ね。
しょうがない。今日は早退をして本家に集合だわね。幸い単位は頑張って取っているし。
「来たね。学業を切り上げてまで呼んですまないね。サンダーレディ」
「いえ。ご無沙汰していますヒサトモ会長」
「ヒサトモでいいよ。かわいい顔が固まっちゃ台無しだ」
既に御年100歳を超えているのにシャキッとしている背筋に視線、耳も良ければ眼光も視力も衰えがない。世界に羽ばたくホテルチェーン、財閥の現役会長であるヒサトモ大婆様。相変わらず覇気を放ちつつも、まーゆっくりして行けと
あ、芋ようかん美味しい。
「じゃー・・・じゃあヒサトモおばあちゃん。私の方は何をすればいいんです?」
「うちの方でもだけど最近そっちも土方ちゃんと仲いいだろ? ちょいと建設の依頼をそっちから切り込んでほしくてねえ。あんたのお母さんのセレアちゃんは既にアラブの王族とかにそれとなくこっちに観光をするようにしているよ」
「はい、はい。ええー日本の、アイヌの伝統工芸とか、そういうものも面白いですし、なにより北の大地の車も良いもの多いですよー」
私の馬時代の馬主のセレアさんは私のママになっていて、今は元気に国際電話中。あーそっか。メジロ家。貿易商もやっていたものね。そっちの方での取引やメジロの商品とかを買ってもらったりヴィンテージ品を仕入れてもらうようにか。
・・・・・・・・・・小豆茶とおいしい水を売ればコンテナ単位で売れないかあ。あの国なら。あれ?
「お母さん。ヒサトモおばあちゃん。ケイジは?」
こういう話なら何も言わずに首を突っ込んで助けに行くケイジ。前田家本家直系で、才能と優しさの代わりに頭のネジがなんか外れていそうなあの子。そういえばいない?
「あー・・・・・・あのお転婆はなんかこっちで用意をしてみると言っていてね。まあ、どうせ嫌でも目に飛ぶ内容でくるだろう。私らはその際に微調整をしてやればいいだろうさ」
「あの子は面白いので大好きですし是非会いたいので楽しみですー」
渋面をしてはぁーとため息を吐いて茶を飲むヒサトモおばあちゃんに、私のお母さんは多少のことでは動じないのもあって楽しみと言い放つ。さて・・・今回は何をするのかしらね?
「ふぅ・・・・・・・私の方も来たけど、一体何をするのかしら?」
お昼のニュースで知ったメジロ家の大打撃。これに関して今トレセン学園はもちきりで、バカなマスコミたちがメジロ家の学生たちにもインタビューをしようとして容赦なくしばき回されてむしろ記者たちの倫理観のなさを生中継する様をしたりと色々あった。
その中でケイジが何かをしようということで呼ばれたが、何をするのだろう?
「おー来たねヴィルシーナ。ありがとー」
「ん? ヴィルもきたのかあ」
「あ、ヴィルシーナさん元気ですー?」
待っていたのはケイジ、ゴルシ、ジャスタウェイ。と、謎のカメラ・・・・・・
「さーて。ではマックちゃんの家が大変なことになっているみたいなので今から助けるためにおままごとをします。みんなぬいぐるみは持ってきたな」
「「もちろん」」
「なんでおままごと!!?」
いきなりのトンデモ発言に思わず突っ込む。なんで!?
「かわいいで癒やしつつメジロを応援するんだよぉ! さあ、ヴィルシーナのぬいぐるみを出しな!」
「持ってきてないわよそんなもの!」
「なんですと!? 今どきの女の子ならカバンに付ける可愛いストラップのぬいぐるみとかあるでしょ。じゃー私がたくさん持っているから。はい」
色々支離滅裂な発言からカバンをあさって取り出すのは
(それバトエン!!)
ぬいぐるみではなくバトエンであった。いやだからなんで!?
「母さんよ、余った唐揚げをかけていざ勝負・・・」
そして私の困惑をよそに始まるおままごと。を、ゴルシが無言でバトエンを取り上げて放り投げる。
「ああ! ママ鉛筆ー!!」
「なにやってんの。ほら、私のぬいぐるみも」
二人のバカなやり取りをよそにとジャスタウェイが見せたのは・・・・・・
「なにこの・・・なにこのやる気のないこけし? みたいなもの!?!?」
「いやいやヴィルシーナ。ジャスタウェイはジャスタウェイ。それ以上でもそれ以下でもねえよ」
ジャスタウェイが取り出したそのこけしもどきはジャスタウェイのようだ。ええ・・・・どういうことなの?
「いやーエロいなあ。いい出来栄えじゃねえの」
「えへへ~自慢の一品だよー。これなら最高のぬいぐるみヒロインでしょ!」
ヒロインなの!? これがヒロインなの!? どう見ても出来損ないのこけしもどきなんだけど!?
「そう! まさしくジャスタウェイは最高のヒロイン! ジャスタウェイの古今ところがこうなって、ジャスタのJASがスタンバって、ウェイはまさしくウェイクアップップのUP AND DO」
「ラリってんじゃねー!!」
「ぐぼべし!」
何やらジャスタウェイでラップ、あるいは呪文を刻み始めたゴルシをぶっ飛ばすケイジ。そしてジャスタウェイ(こけし?)を見事キャッチ。
「うぇへへへへ。これはまさしく平成のプリンセス・プリ◯プ◯ン・・・さぁ、ここはどうなっているのかなぁ~?」
「あ、ちょっ。ケイジ! だめ、そこはだめなのぉ!!」
「何が!? 普通に平らな場所じゃないの!!」
そしてよだれを垂らしてギン目でジャスタウェイ(こけし?)の下を舐めるように覗き込むケイジとそのケイジを止めようとするジャスタウェイ(ウマ娘)。なにこの・・・なに!? なんで美少女フィギュアのパンツを覗き込もうとしている小学生男子を止めようとしている女子みたいなやり取りをこのこけしもどきでやってんのこいつら!?
「なおさらに覗きたくなるじゃねえか! さぁ、オープンセサミ!」
「あ、だめ! ケイジそこはだめええ~~♡ 爆破スイッチを押したら」
「ぽちっとな~」
「爆破スイッチ!? あ、ちょ! けい・・・・」
銀色のこけしもどきは、どうやら爆弾だったようだ。何を持ち込んでいるのよこの芦毛フェチ!? ケイジも遠慮なく台座の下にあった蓋を外してスイッチをポチり。あ・・・まず・・・
ドカーン!!
「「ええ!? お前が爆発すんの!!?」」
爆発したのはまさかのゴルシのほう。ジャスタウェイと私は驚いていたがその爆風と一緒に大量の煙が。
「けほっ、けふほ・・・! な、なんなの・・・!? 煙・・・はふ・・・ちょ、ゴルシ、ジャスタウェイ、ケイジ! だいじょ・・・・
いやなんで!!?」
煙が晴れると、セクシーなドレス姿のゴルシをお姫様抱っこしている武者鎧姿のケイジと、それを泣きながら祝福しているジャスタウェイ。・・・・・・・?????
「よし。という感じでメジロ商事のCM、宣伝のショート動画を投稿してと・・・」
「私のお父さんのところにも掛け合ってみるね~」
「いよぉーし! じゃ、私はマックちゃんのところに行ってくるぜ」
え、まさかのこれがCMに使われるの!?
「いや絶対ムリだよこの方向!! 宣伝にすらならないって!!」
こんなシッチャカメッチャカの映像とかでなんの宣伝をするのよ! 火薬でも宣伝するの???
~~~~~~~数日後~~~~~~~~~
どうやらこの動画は世間で評判になってメジロ家の商品の宣伝に多いになったそうだ
「ねーメジロブランドのあの商品買った?」
「かわいいよねージャスタウェイ」
「マジで!!?」
世間であのメチャクチャな動画を小学生女子が談笑しつつあのこけしもどきやらいろんなものを自慢し合う光景に私はツッコミを抑えきれなかった。
「はぁ・・・・あの人の一族は本当に・・・」
羊蹄山一体に壊滅的被害を受けてしまい一時メジロ家の解体、取り潰しもあり得たほどの大惨事。それをさせないと前田家が2兆円の無利子、返済期限も30年内に返せばいいという条件で貸し付けたと思えば、分家筋たちからも5000億の経済支援。
そのうえで国内最大手ゼネコンの岡山グループや中川グループ、秋山コンツェルンという世界規模の財閥も動いてくれた。間違いなく前田家の手回しだろう。
お陰でメジロ家は以前よりもより強く、確かな経済網と自力を手にしたうえで返済の目処もたった。
「この年になっても、師匠の背中は大きく、追うのが大変なものですね・・・・」
本当にあの人が興した名家を落ちぶれさせることはさせなかった。が、それはすでに100の齢を越えた私の師匠の手助けあってこそ。本来なら恩返しをして、そして老いてなお問題ないほどの女性であるという姿を見せるのが教え子である私のやるべきことなのに、まだ追いつけないとは。
「着きました大奥様。大丈夫ですか?」
「ご苦労さまです。ええ、では、そちらもしばし休んでくだされば」
執事が降ろしてくれて大きな日本庭園もある屋敷の前。前田の表札が目立つその屋敷の門を通れば、火の匂い。騒いでいる様子もなければこの屋敷にも女中も執事もいる。焼き芋でもしているのであろうか。
「ヒサトモ先生。返済の目処が立ちましたのでご報告と顔を見せに参りました」
「おお? 来たか。ちょうどいい。ちょいと焼き芋を焼いていてねえ。久しぶりにこういうおやつを食べるのはどうだ?」
「あら。それは是非いただ・・・き・・・」
女中たちに頭を下げつつ勝って知ったる庭に向かえば予想通りヒサトモさんが焼き芋を焼くために砂利の上で集めた落ち葉と小枝で芋を焼いている。私が学生時代にたまにこうして振る舞ってくれていたのを思い出す。
名家の令嬢だからこういう庶民のものを食べるのははしたないだの何だのとそういう変なことばかりを気にする人を気にせずに良いと言って焼いてくれた美味しいお芋・・・・その・・・その芋を焼く火の中に見えた文字に思わず年甲斐もなく飛び出してしまう。
「ひ、ヒサトモ先生!? 証文が! ちょ、離してください!」
「あーほら危ない危ない。やけどしちゃうよぉ。いやーちょうどいい火種を作るのにやっぱああいう紙はインクもあってよく燃えるわ~」
「言っている場合ですか!!」
私をヒサトモさんはガッチリと、万力のような力で抑えて離さずに縁側に連れて行く。あ、あれが燃えきっては私達が借りた2兆円以上のお金のやり取りの証、証拠が・・・!
眼の前でその証文が完全に燃え尽き、パチパチと火の粉から灰となって空へと舞い上がる。
「あぁあ・・・・証文が・・・これがないと私がお金を返しても、変な形になって・・・」
「いいじゃないの。あのお金はメジロ家、メジロ商事という日本有数の大財閥が消えるのを防ぐための投資と思えばいい。大財閥が倒れるっていうのはその金額以上の影響を周りに与えるからねえ。いずれあんたらのお陰でこっちも今回の金の分以上に儲けられるからねえ。
さ、メジロ復活祝の焼き芋だよ。そろそろうちの孫、ひ孫たちもくる。あんたらメジロ家のライバルで戦友との顔合わせも楽しみな」
そう言ってカラカラ笑いつつやかんに入った麦茶と焼き芋を味わいつつ縁側での談笑。肩肘張らず、格式もマナーも気にせず過ごせる時間。本当に、この人には叶わないものです。
ケイジのギャグシーンを思いついてやりたかったのでついでにと。お付き合い感謝します。