相棒が不憫すぎて草生えたので、バグゴーストがやり返します   作:睡眠中の人

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ピッコマのやつに応募しようと思ったけど間に合わないので供養



プロローグ

 人間は死ぬことで違う姿になると信じられてきた。

 しかし、それは人間に限った話ではない。動物、魚、植物、微生物。その全てがこの世に生まれ、そして死んでいく。

 

 それまでの前世の行いによって転生先が変わるとされ、人間から犬、アリから鳥へなど、その道筋は多岐にわたる。善い行いをしていれば好きな生き物になれるだろう。

 

 しかし、実際に生まれ変わるには死ぬしかない。科学で姿を変えようとしても、今の人類には人間に翼などを生やすことはできないし、類人猿に退化させることもできない。

 

 生まれ変わることは想像の中でしか存在しないもの……だったのだ。

 

 それを実現させることができたのがこのフルダイブ型VRMMORPG「リボーンズ」である。

 

 VRの世界は、実際に体を動かす感覚で動けるのが醍醐味であるが、人間に存在しない器官はどうしても再現不可であった。尻尾を動かそうにもそのような筋肉はないし、翼を広げることも腕の感覚とは全く違うものだった。

 

 しかし、この「リボーンズ」では想像の中での感覚をAIが補助することで可能にしたのだ。

 例えるなら自転車の補助輪のようなものだ。AIが脳に知識ではなく感覚として、尻尾が動かせるものだと覚えさせ、次第にその補助を外していくことで無意識に動かすことも可能にすることができた。

 

 ベータテスト前には全く話題に上がらなかったこのゲームも、そのまったく新しい技術により大きく注目されることになった。

 

 だが、もう一つ注目される点がある。このゲームはファンタジーの世界なのである。

 RPGのゲームであるならファンタジーの世界は当たり前かもしれないが、この生まれ変わりになると話が大きく変わってくる。

 

 プレイヤーたちはこの「リボーンズ」の世界に転生することで、さまざまな生物として生を受けることができる。人間のような哺乳類だけでなく、猫や魚になることはもちろん、植物や蚊のような生物にだってなれるのだ。それにファンタジーが追加されると、その生物は今まで想像してきたものではなくなる。ドラゴンやスライム、ゴーレム、ピクシー、ユニコーン等々、人間とはかけ離れた存在になることができるのだ。

 

 この情報に人々は熱狂し、さまざまな要望が制作会社に寄せられた。

 

「美形なエルフになってちやほやされたい」

「フェンリルになって、強いけどかわいい存在になりたい」

「サキュバスになってエロいことしたい(いろんな人の性癖を破壊したい)」

「ゴーストになって、ホラーみたいないたずらしたいwww」などなど、色々な性癖があけすけにSNSにも挙げられていたが、公式が出した答えは「可能な限り応えていきたい」との前向きな返答により「リボーンズ」の熱はさらに高まっていくことになった。

 

 

 

 

 

 とてつもなく高評価で終わったベータテストから半年、ついに「リボーンズ」が配信される今日。学生マンションの一室で深く絶望している男が一人、俺、板垣 剛である。

 

「結局、昨日も新情報無かったし、要望通らなかったみたいだなぁ」

 

 俺はホラーグッズに囲まれた一室でスマホ片手に、配信開始時間まで情報収集に徹していた。俺の願いは一つ、「リボーンズ」の種族の中に、ゴーストまたは幽霊を実装してほしかった。ベータテストの話題からこのゲームを知って以降、要望を運営に送り続けていたが実らなかったようだ。ゾンビや妖怪などはすでに実装されたのが決定しているのだが、それでは俺のいたずら心には刺さらなかった。

 

「テレビからのそっと出てきたり、ポルターガイストごっこしたり、他人に乗り移ってみたりしたかった」

 

 ホラー好きとしては、様々な人と驚かして嗜虐心を満たしたかったが、それは叶わず気を落としていた。

 VRゲームならではの自由さが現実に近づいているとはいえ、実装されていないものはどうすることもできない。俺は諦めるしかなかった。

 

「ゴースト実装されるまでは悪魔とかやっとこうかな。不利な契約持ち掛けて無理やり契約させたろ」

 

 前言撤回。俺はどんな形であれ、自分の欲望のまま動くのみである。

 そんなことを考えるうちに配信時間の正午12時ちょうどになった。「リボーンズ」は金曜日配信なので、普通の学生であるなら学校に行っているが、俺は違う。というか単純に授業をすべてオンライン授業にしていたので、後回しにしているだけである。

 

「よっしゃあ!! 待ってろ新世界!!」

 

 ゲームの中に思いを馳せながら、というか溜まった授業の提出物から現実逃避しながらゲームの世界へと旅立つのであった。

 

 

 

 

 [ You dead now.]

 

 気が付くと真っ暗な世界に白い文字が浮かんでいる。英語で書かれているが俺は日本語のパッケージでゲームを買っているので、演出の一環なのだろうと推測した。しかし、死ぬの早すぎね。

 

 [welcome to “reborns”]

 

 文字が切り替わると、その文字がどんどん大きくなっていき真っ暗な世界を白く塗りつぶしていった。朝起きたように目を瞬きさせ、目を光に慣らしていく。すると今度は日本語で、種族を選ぶように指示が来た。

 

「なるほど。生まれ変わるっていうくらいだから、最初は死なないと変だもんな。死因まったく分らんけど」

 

 気が付いたら現実でも死んでるとか嫌だなと思いつつも、そんなことはほぼない。周りに人を検知したら通知が来るし、その時の周囲の写真が送られてくる。知り合いかどうか確認して、知らなかったらすぐにゲーム内からでも通報できる。寝たきりだから無防備だと思うかもしれないが、今のフルダイブ型ゲーム機はカプセル型が主流だ。銃弾も通さない透明な強化ガラスに覆われてるから、こちらから開けない限りはほぼ安全である。ヘルメットだけの機器も昔はあったがいろんな犯罪が起こりすぎて無くなっていった。

 

「さて、悪魔はどこにあるかなっと」

 

 思考がとっ散らかったが、種族選択に戻る。ホラーの定番は幽霊であるものの、悪魔などの存在を忘れてはいけない。彼らは狡猾で残忍な生物なので、俺のいたずら好きな性格も満足できる能力を持っているはずである。

 

「一応ほかの種族も軽く見ていくかって……あれ?」

 

 五十音順で種族が並んでいるので、下の方を見ようと指をスライドした瞬間、違和感を覚えた。今日まで何回も見返したその種族リストの中に、一つだけ見慣れない文字があるのである。

 

「……ゴーストってなかったんじゃなかったっけ? えっバグ?」

 

 今までは追加が見送られていた、念願の種族があることに喜びはあるものの、まだ心の底からは喜ぶことはできない。運営のサプライズの可能性はあるが、当日になって増やしましたは、購入を悩んでいるプレイヤーにはさっさと発表しておけとクレームが入るだろう。かくいう俺もしばらく購入するか悩んでいた時期があった。

 

「今が夢ならこれは悪夢だ。こんな希望を見せつけるなんて、なんて残酷なんだっ……」

 

 俺は深く絶望した。きっとゴーストの種族を選んでも、エラーメッセージがでるか、中身の種族は違って妖怪になってしまうに違いない。一瞬でも運営に感謝しそうになった自分が恨めしい。とてもとても……

 

「参考になりますなあ」

 

 いやー、ホラーの定番ですよね。ようやく逃げれたっていう希望を持たせて絶望に落とすっていう。映画の最後に演出入れて、観客にもやもやさせるっていうのもいい。

 

「ていうことでやってみましょー」

 

 いい学びを得たところで、今度は迷いなくゴーストを選択する。すると自分の体が淡く光っていき、新たな姿へと切り替わっていく。どうやらエラーメッセージではなかったようである。進んだといいうことはキャラクタークリエイトの時間である。

 

 光が収まっていくと、自分の姿がはっきりとしてくる。キャラクリ前なのでデフォルトの姿なのだろうが。これは……

 

「薄いというか、透けてる!? まじで!?」

 

 あわててコマンドから全身を確認するものを探す。当たり前だが、VRゲームなので自分の目では体全体を見ることはできない。関係のありそうなものを選び、3人称のカメラ機能を見つけることができた。監視カメラのように後ろから自分を映した画面が表示される。

 

 茶髪で中肉中背の男だが、明らかに全身が透けている。体を動かせば画面の姿も動いているので自分のキャラで間違いないだろう。まさかこんなサプライズしてるとかマジで神運営かよ! 

 

「ゴースト実装されてるとか俺得すぎるだろっ!!」

 

 飛んだり跳ねたり、騒ぎまくりたかったが、自分の体に違和感を覚えた。足の感覚がないというのと、体中が軽すぎて逆にどう体を動かせばいいのかパニックになっている。足の感覚がないのは、ゴーストのアバターに足が無いからという理由だと思う。しかし、体はどうなっているのだろうか。

 

 しばらく動いてみると、色々分かったことがあった。体が軽すぎるのは、重力の影響がないせいである。ほかのVRゲームでもあったが宇宙にいるような感覚である。体を移動させるには水中を泳ぐように手で掻き分けると進めるようだった。それと触覚である。空気に触れる感覚が希薄というか、自分の体に触れても微妙に触れているような感覚だ。

 

「ここまでできるとか手が込んでるなぁ」

 

 ゲームの製作者たちに深い感謝と畏敬の念を感じながら、さっさと進めようとキャラクリに戻るとする。どうやら、デフォルトの顔が何個かあってその中から微調整できるようである。項目は髪や眉毛、目の形まで様々というか、体の一部だけ大きくとかもできるようだ。

 

「ドラゴンとか自分の好きな姿にしたいもんなぁ。アニメのキャラとか再現したいだろこれ」

 

 かくいう自分もホラー作品のキャラを再現するつもり満々なのだが、はてさてどんなキャラにしようか。俺はいろんなホラーを見てきたが、リアルすぎるのは違うかなと思っている。

 例えば、ホラーでよくある仮面などで顔が隠れた殺人鬼。比喩無しでその作品の顔となるその裏には殺人鬼の本当の顔が存在するが、その顔が恐ろしい形相だったり、グロテスクだったり、その人物の歩んできたストーリーが作中などで明かされたりする。だが、俺はあまり好まない。リアルなのは結構なのだが、今までオカルトチックだったものから現実に戻された感覚がして少し冷めてしまうのである。仮面に隠された謎があるからこそ、恐怖が際立つのである。

 

「そこにロマンがあるのさ」

 

 ということで顔を仮面っぽくしよう。口は……三角で親しみある感じ。目はまん丸の黒目、鼻は無くします。これでこの顔も仮面なんですよー感が出せるね。体はヒョロ長にしといて、こいつなんてパワーなんだ!? っていうギャップで驚かせよう。

 

「アクセサリーにマントあんじゃーん!!」

 

 全身を隠せるようなマントを真っ黒にして、顔だけのぞかせれば完成じゃ。作成完了を押せば「チュートリアルを開始しますか?」の文字が。ようやくゲームの開始である。

 

 

 

【かつてここは平和なせk】

 

 

 

 ストーリーなど後から読めばよいと、スキップじゃとスキップボタンを連打する。どうせ他のプレイヤーの実況とかでさんざん見る羽目になるのだから、はよゲームさせてくれ。

 

 空から眺めていたような視点から、自分の周囲が一瞬にして移り変わり、神殿のような場所へと移動する。自分の目の前には、4人の人物がいてそれぞれ特徴が違う。一人はフルプレートの鎧に豪華な剣。勇者っていう感じである。あとは三角帽子の魔法使い、フードを被った僧侶、道着を纏った武闘家ってところだろうか。

 

 

 そしてメッセージが現れて「蹂躙開始!!」の文字。なるほど、この4人と戦うのがチュートリアルという訳だ。メッセージの下のOKボタンを押して、早速いこうk「パァン!」

 

 

 

 という破裂音とともに俺は最初の死亡を迎えるのであった。

 

 




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