陰の実力者で耳かきやマッサージ   作:ごんがんら

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姉さんに耳かきされる。

「シド、いるかしら?」

 

寮の部屋でアレクシアのポチをやって稼いだ金貨を数えていたら突然、僕の姉ことクレア・カゲノ―が部屋に入ってきた。

 

……ノック位はしてほしいものだ。

 

やり過ごそうと一瞬で金貨をスライムの中に取り込みつつ、ジャンプして天井に張り付いた僕は気配を殺して姉さんの様子を窺った。

 

「あら? シド、そんなところでなにしてるのよ?」

 

あっさりと見つかった。

 

「いや……別に」

 

「? まぁいいわ、ちょっと話があるから降りてきなさい」

 

「……いいけど」

 

僕は天井から降りると姉さんの正面に立つ。

 

 

 

前はこれでやり過ごせていたが、姉さんが中二病に目覚めてからというものやけに勘がよくなったのかすぐに見つかってしまう。

 

前に聞いてみたら私の右手が教えてくれるとか訳の分からない事を言っていたが……

 

「それで、話ってなに?」

 

「ちょっと耳かきさせなさい」

 

「えぇ……」

 

「なによ? お姉ちゃんに耳かきされるのが嫌とでも言うの?」

 

「うん」

 

この世界では耳かきはあまり一般的ではない。

 

耳かきというか耳垢取りは基本的に地球の西洋圏のように医者や医療関係者の仕事だ。

 

一部の変わり者や綺麗なお姉さんが働いてるお店で膝枕して貰いたいという人たち位しか耳かきの存在自体知らないだろう。

 

何故姉さんが知っているのかというと、幼い僕が耳かきのためにわざわざ医者のところに行くのが面倒だと思い、スライムで耳かき棒を作り耳かきしていたところを姉さんに見られたからだ。

 

あの時は大変だった、姉さんからすれば耳に謎のぼっこを幼い弟が突っ込んでいるのだからそれはもう大騒ぎだ。

 

幸いそばに人がいなかったため姉さんをなだめて耳かきの説明をすれば落ち着いたのだが、姉さんが耳かきに興味を持ったのか僕に耳かきをやりたがってしまったのだ。勿論最初は断ったが、駄々をこねた姉さんに無理やり膝枕させられて耳を掃除された。

 

……幼い時は本当に下手くそ過ぎて痛かったなぁ。

 

なんせ姉さんはゴリゴリと力いっぱい耳かきを突っ込んでくるものだから、耳垢と一緒に鼓膜まで持っていかれるかと思ったものだ。

 

「ほら、早く」

 

姉さんがベッドに腰かけて膝をポンポンと叩く。

 

……まぁ、昔より上手くなったし姉さんに耳かきされるのも悪くないか。

 

僕は諦めて姉さんの膝に頭を乗せて横になった。

 

高すぎず低くすぎず、丁度いい高さの膝枕に頭を置くと姉さんが僕の耳たぶをふにふにと触ってきた。

 

「相変わらず柔らかいわね」

 

「耳なんてみんな柔らかいんじゃない?」

 

「シドのは特に柔らかいのよ、ほら」

 

姉さんが耳たぶをつまんで軽く引っ張ってくる。

 

「いたたたた」

 

「こんなに伸びるもの」

 

姉さんが手を放すと引っ張られていたところがジンジンと痛んだ。

 

……本当に大丈夫だろうか?

 

 

 

「さ、始めるわよ」

 

姉さんが僕の頭を少しだけ傾けて角度を調節すると耳の外側の溝に耳かきを這わせていく。

 

カリ……カリ……

 

耳かきが僕の耳垢を掻き取っていく。

 

「うん、外側だけでも結構溜まってるわね、ちゃんと洗ってないでしょ?シド」

 

「お風呂に入るとき一応洗ってはいるけど」

 

「洗えてない、ほら、こんなに汚れてるわよ?」

 

姉さんは白い布の上に取った耳垢を僕に見せつけてくる。

 

「とれたてほやほやだ」

 

まだ耳の外側だけしか掻いてないのに結構な欠片が集まっている。

 

どうやら自分が思ってたより汚れてようだ。

 

「溝の部分に思ったよりこびりついてるわね、一応あれ用意してきてよかったわ」

 

「あれ?」

 

何のことだろう?

 

そう思っていたら姉さんがどこからかポットとタオルを取り出す。

 

……わざわざここまで持ってきてたの?

 

そしてポットからお湯を出し、タオルを湿らせていく。

 

ああ、蒸しタオル作ってるのか。

 

「これで耳をふやかしてくわ、ちょっと熱いけど我慢しなさい」

 

「はーい」

 

姉さんが僕の耳をタオルで包んでいく。

 

「あ~……これいいね」

 

熱いといっても姉さんが手に持てる程度の丁度いい温度だ。

 

普段入るお風呂より少しあったかい位のタオルが耳全体を包み込みじんわりと耳が温められていく。

 

蒸しタオルなんて前世でもあまり使わなかったがこれはいいものだ。

 

「……気持ち良さそうにしちゃって、マッサージしてくわよ」

 

姉さんがそう言って蒸しタオルの上から耳を揉んでくる。

 

ぎゅっぎゅっと耳たぶを摘まむように揉まれて、何だか気持ちいい。

 

気持ち強めに揉まれた後に、今度は耳の上の部分を摘まんで軽く引っ張られる。

 

「あだだ……姉さん、それ痛い」

 

「我慢しなさい」

 

有無を言わさずに耳たぶも引っ張られる。

 

……これ絶対痛いだけだと思うんだけどなぁ。

 

しばらく耳を引っ張られていると痛いだけあり血行がよくなったのか耳の穴が痒くなってきた。

 

「こんなものかしら?そろそろ耳の中を掃除するわね」

 

蒸しタオルを耳からよけて耳の中を見られる。

 

「うわ、結構溜まってるわね、掃除し甲斐があるわ」

 

最近は陰の実力者ムーヴができる機会が多かったためはしゃぎすぎて細かいところがおろそかになってた自覚はあるため、耳垢が溜まっているのは仕方ない。

 

姉さんが耳かきを僕の中に入れてくる。

 

「思ったより詰まってるわ、痛かったら言いなさい」

 

「……言ったら途中で止めるの?」

 

「止めるわけないじゃない、無視して続行よ」

 

言う意味ないね。

 

姉さんの傍若無人な言葉に呆れながらも、僕は姉さんの耳かきに身を任せた。

 

カリ……カキ……コリッ

 

「ん……」

 

姉さんが僕の耳の中を掻いていく。

 

自分でやるときとはまた違った感覚だ。

 

耳垢と耳壁の間に竹の耳かきが入り込んでから、カリカキと小刻みに動かされ耳垢が少しずつはがれていく。

 

竹のしなりが丁度いいのか、耳垢がぺりぺりとはがれていくのが気持ちいい。

 

「この耳かき、昔シドがプレゼントしてくれたのよね」

 

「あれ?僕が作ったのを奪われたような……」

 

姉さんが僕に耳かきをするようになってからしばらくして、日課の山賊狩りをやってた時に竹の群生地を見つけたのだ。

 

テンションが上がってサムライみたいに竹の試し切りとかやってるうちに切った竹で耳かきをいくつか作ったのである。

 

そして家に帰ったら目ざとく耳かきを見つけた姉さんに奪われて、僕の耳かきは姉さんの物になったのだ。

 

「あの時は嬉しかったわ、耳かき棒を作っちゃう位シドも私の耳かき好きだってわかったもの」

 

「あっ、プレゼントされた体でいくんだ」

 

僕の話を聞かない人筆頭である姉さんはご機嫌に耳かきしていく。

 

「そろそろ大きいのがあるんだけど……シド、奥まで入れるから動かないでね」

 

そう言って姉さんが僕の頭を片手で押さえて耳かきを奥に向けさせる。

 

そして次の瞬間 メリッ!グチュリ!と激しい音と共に耳に凄まじい違和感が走る。

 

「っ!?」

 

自分の耳からとんでもない音が聞こえて思わずビックリした。

 

痛みはないのがまた怖い。

 

「えっ、姉さんこれ大丈夫なやつ?なんか凄い音したんだけど」

 

「大丈夫なやつよ、けど耳の中でかさぶたみたいのが耳垢に引っ付いてるわ。あんた耳の中掻きむしったりした?」

 

「あー」

 

多分山賊とかの返り血が耳に入ったんだと思う。

 

姉さんに素直に言うわけにもいかないので適当に誤魔化す。

 

「うん、そうなんだー、前にちょっと耳が痒くなって指でほじっちゃった」

 

「はぁ、仕方ない子ね、そういう時はお姉ちゃんを呼びなさい」

 

姉さんが僕の頭を撫でながら耳垢に竹の耳かきを入れて剥がしていく。

 

かりっかりっ、かりっ

 

耳壁全体に張り付いているのだろう、一ヶ所に耳かきを入れたら抜き、また耳かきを入れて剥がす。

 

それを何回か繰り返すと、やっと耳垢が剥がれてきたのだろう、姉さんが耳かきに耳垢を引っ掻ける気配がある。

 

「よし、取れたわ。じゃあ剥がすわよ?」

 

姉さんが耳垢をのせる位置を確認してから耳かきを動かすとベリッ、グリリッ……バリッ!!と凄い音が響いた。

 

そして僕の耳に先程とは比較にならない程の痒みが走る。

 

「いっ!?」

 

耳垢が剥がれたところに新鮮な空気が入ったからか、痒みがダイレクトに来る。

 

拷問されても余裕で耐えてモブの演技をする僕だがこれはきつい。

 

思わず姉さんのスカートの裾を掴んだ。

 

「姉さん、耳がすごく痒い、悪いけど掻いてくれる?」

 

「あら、そんなに痒いの?わかったわ」

 

姉さんは僕の様子から本当に痒いことを察して僕の耳の中に耳かきを入れる。

 

「……あ~……」

 

耳垢があった場所にカリカリと掻かれる感覚が気持ちいい。

 

痛痒い感じで、思わず声が出てしまう。

 

「なんか耳の中、耳かきで掻いてると傷つきそうな位真っ赤ね。綿棒に変えるわ」

 

そう言って姉さんが耳かきを抜いて綿棒に交換する。

 

今度はあまり痛くない。

 

さっき蒸しタオルに使ったお湯を染み込ませてあるのかじんわりあったかい綿棒が僕の耳の中を優しく撫でていく。

 

綿棒で痒い所を撫でられるのも心地いい。

 

しばらく姉さんに綿棒を動かされるのに身を任せていると、またバキ!バリバリバリ!という大きな音が耳の中を駆け巡った。

 

「ん゛っ!?」

 

思わず身体が跳ねてしまうほどの痛みが走る。

 

どうやらまた大きいのがあったようだ。

 

「あ~……これね、鼓膜の近くのやつ今取ったから大丈夫よ、さっきのやつもだけどすごく大きかったわ、見る?」

 

「遠慮しとくよ」

 

さすがに返り血混じりの耳垢なんて見たくない。

 

「そう、じゃああとは細かいのを綿棒で取って終わりね」

 

お湯で濡らした綿棒で僕の耳の中を拭いていく姉さん。

 

ペタッ……ペタッ……

 

少しお湯が多かったのか、時々耳の中で水滴が音を立てた。

 

「はい、これでこっちの耳はおしまいよ。逆の耳やるからごろんってしなさい」

 

「はーい」

 

姉さんの膝枕で寝返りを打って反対側の耳を見せる。

 

姉さんのお腹側に顔がいくわけだがここで問題がある。

 

魔剣士学園の制服を今姉さんは着ている。

 

製作者はエロオヤジだと思うくらい短いスカートがデフォルトの制服をだ。

 

そのスカートは膝枕の体勢になると僕の目の前に来てしまうのだ。

 

……つまり何が言いたいかというと、姉さんが動く度に短いスカートから下着が見えそうになってしまうのである。

 

「?どうしたのシド?」

 

「……なんでもないよー」

 

さすがに身内の下着とか見たくないので目をつぶって姉さんのお腹に顔を押し付ける。

 

「ちょっと、くすぐったいわよ」

 

姉さんが笑いながらまた蒸しタオルで僕の耳を拭いてくれる。

 

ぐにぐにと蒸しタオル越しに耳の溝をなぞるように揉む姉さん。

 

温まったタオルで耳のマッサージ、普通に気持ちいい。

 

「こっちは逆側ほど汚れてないわね、耳垢もさっきより少ないし、綿棒で軽く拭くだけで済むわ」

 

そう言ってくいっと見えやすいように耳たぶを引っ張ってくる。

 

「ん」

 

僕は姉さんが耳垢を掻きだしやすくするために、首を上に向けた。

 

少し体勢を変えると姉さんのお腹に顔を深く押し付ける形になる。

 

……まぁいいや。

 

「じゃあ始めるわよ」

 

そう言って姉さんが僕の耳に綿棒を入れてくる。

 

かりっ、かりっ、こりっ……コリッ! さっきと同じように痒い所を掻かれていく。

 

「ん~……」

 

逆の耳と違って大きい耳垢がないのでスムーズだ。

 

細かいのが取り除かれて痒みが取れていく。

 

耳壁全体をなぞって、耳たぶを綿棒で軽く叩いてくる姉さん。

 

「よし、これでおしまいよ」

 

最後に耳にふぅ~っと息を吹きかけられて僕はビクッ!と身体を震わせた。

 

これ昔からゾワッとして苦手なんだよなぁ。

 

「何よ、もう痒くないでしょ?」

 

「姉さんの息がゾワッてした」

 

「耳かきで掻いてたからでしょ?ほら、終わったわよ。起きて」

 

耳かきが終わったので姉さんのお腹から顔を離す。

 

 

明らかに耳かき前よりも聞こえが良くなっている。

 

耳かきの後のこのスッキリ感は結構好きだ。

 

「ありがと、姉さん」

 

「はいはい、また耳垢溜まってきたらお姉ちゃんに言うのよ」

 

そう言って姉さんは僕の頭を優しく撫でる。

 

……まぁ、たまにならやられてあげてもいいかなぁ。

 

「痛くしないならね」

 

「生意気ね、またやってあげるから覚悟しなさい」

 

僕の耳たぶを引っ張りながら姉さんが笑う。

 

……地味に痛いからやめてほしいんだけどなぁ。

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