陰の実力者で耳かきやマッサージ   作:ごんがんら

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学園テロの数日前くらいの時間軸です。


シェリーの肩とか背中を揉む。

窓から夕陽が差し込み、廊下が赤々と染まる夕暮れ時、学園の廊下を僕は歩いていた。

 

「んー、何か陰の実力者的に面白いことでもないかと思ったけど今日は空振りかなぁ」

 

最近はシャドウガーデンを名乗る偽物が現れたり、武神祭の予選で満足のいくモブムーヴができたりとイベントが盛りだくさんだった。

 

だから今日も何か起こらないかと日が暮れるまで学園を散策してたけど特に何も起こらなかった。

 

「お腹も空いたし今日は帰ろうかな?……ん?」

 

階段に差し掛かった時、上に人の気配を感じた。

 

「こんな放課後に誰だろ?」

 

階段を登るとそこには僕のよく知る顔があった。

 

たくさんの本を抱えながら危なっかしい足取りの女の子。

 

シェリー・バーネット。

 

学術学園副学園長の養女にして学生ながら天才研究者として名を馳せる才女だ。

 

おっちょこちょいな所がありよくドジを踏んだりするけど、それを補うように頭が良くて、アーティファクトの研究を頼まれたりするらしい。

 

今も何かのアーティファクトを研究してるらしいからあの大量の本はその資料かな?

 

「うわわ、あぶなっ」

 

あと少しで階段を登り切るという所でシェリーが足を踏み外した。

 

あっ落ちる、そう思った僕は瞬時に飛び出し、落ちてきたシェリーを抱き止める。

 

「おっと……大丈夫?」

 

「あたた……大丈夫です。すいませんありがとうございます、あっ!?シドくんですか!?すいません重いですよね!?すぐ退きます!!」

 

シェリーが僕の顔を見るとわたわたと慌て出す。

 

「危ないから暴れないで」

 

「あぅ、すみません……」

 

僕がシェリーを降ろすとしゅんとした表情になる。

 

 

「大丈夫?どこか怪我してない?」

 

「あぅ……すみません、大丈夫です。……あの、ありがとうございます」

 

シェリーは顔を真っ赤にしながらぺこりと頭を下げた。

 

「いいよいいよ気にしないで、それよりその本重いでしょ?半分持とうか?」

 

「ふぇ!?いいですよ!そんなのシドくんに悪いですよ!」

 

両手をパタパタと振るシェリー。

 

「いいよいいよ、ついでだし。それでどこに運ぶの?」

 

「あぅ……ありがとうございます、じゃあお言葉に甘えて……」

 

僕はシェリーから半分の量を受け取る。

 

なかなかにズシッとくる重さだ。

 

「それでどこに運ぶの?」

 

「えっと、私の研究室です、こっちです」

 

シェリーはトコトコと歩き出す。

 

僕はその後を付いていく。

 

「あの、シドくんはどうしてここに?もう放課後ですよ?」

 

「ん?あぁちょっと暇つぶしにね、そしたらシェリーが階段を登ってたから」

 

「そうだったんですね……その、ありがとうございます」

 

「いいよ別に」

 

そんな会話をしながら僕たちは歩く。

 

そしてしばらく歩き、僕たちはシェリーの研究室までやってきた。

 

「あ……すみません。散らかってて……」

 

研究室の中は本やら資料やらが散乱していた。

 

陰の実力者的にはこういういかにもな研究者の部屋はテンションが上がる。

 

なんかカッコいいよね。

 

「うん、わかった。そこら辺の本に気をつけてね」

 

僕は散乱した資料を踏まないようにして部屋に入る。

 

「あぅ、すみません……」

 

そして部屋の奥にある机に大量の資料を降ろすとシェリーがぺこりと頭を下げた。

 

「それで?そのアーティファクトの研究は進んでる?」

 

「それがなかなか上手く行かなくて……でももう少しで完成しそうなんです!」

 

シェリーはぐっと拳を握る。

 

小動物を思わせる可愛らしい仕草だ。

 

「そっか。頑張ってね」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

シェリーはにぱっと笑う。

 

そんな様子を見て僕はふとあることが気になった。

 

「そう言えばシェリーっていつもここで過ごしてるの?」

 

「ふぇ?そうですね……ここの研究室が私の家みたいなものなので……」

 

「ふーん」と相槌を打ちながら僕は部屋の奥にあるベッドを見る。

 

部屋の奥にあるそのベッドはシーツが少し乱れており人が寝ていたような痕跡がある。

 

「シェリーっていつもここで寝てるの?」

 

「!?なんで分かったんですか!?」

 

「ん?あぁ……あのベッド、なんか乱れてるなって思って」

 

僕がベッドを指差すとシェリーがあわあわと慌てる。

 

「あぅ……シドくん、あのそこは見なかったことにしてください!お願いします!」

 

ぺこりと頭を下げるシェリーを見て僕はニヤリと笑う。

 

「どうしよっかなー、じゃあ僕のお願い聞いてくれる?」

 

「ふぇ?……えっと私に出来ることなら頑張りますけど……」

 

シェリーは不思議そうに首を傾げる。

 

「大丈夫大丈夫、難しいことじゃないから。シェリーにして欲しいのは……とりあえずベッドに座ってよ」

 

「あっはい……分かりました」

 

僕がそう言うと、シェリーは素直にベッドに座る。

 

僕はベッドに座るシェリーに近づくと彼女の肩に手を当てる。

 

「ふぇ……あの、シドくん?」

 

突然のことにシェリーは戸惑いを見せる。

 

僕はそのまま彼女の肩をグイッと押すと彼女は抵抗することなくベッドに倒れた。

 

そして僕はうつぶせになった女の上に覆い被さるような体勢になる。

 

「あの、シドくん?これは一体……」

 

「ん?シェリーが僕のお願い聞いてくれるって言ったから」

 

「ふぇ!?確かに言いましたけど……でもこんな……」

 

シェリーは顔を真っ赤にしもじもじと太ももを擦り合わせる。

 

僕はそんな様子にニヤリと笑う。

 

「じゃあ早速だけど服を脱いでくれる?」

 

「……ふぇ!?」

 

僕の発言にシェリーは驚きの声をだす。

 

「ふぇ……あの、服を脱ぐって……」

 

シェリーは顔を真っ赤にしながら目を泳がせる。

 

どうやらいきなりのことで戸惑っているようだ。

 

「うん、肩ガッチガチに凝ってるでしょ?だからマッサージしてあげるよ」

 

さっき階段でシェリーを助けた時、彼女の肩に触れたのだが酷く凝っていた。

 

これはおそらく日常的に彼女が肩こりに悩まされている証拠だろう。

 

まるで岩のような硬さだった。

 

彼女はおそらくこれから起こるであろう陰の実力者ムーヴイベントにおいて重要な役割があると思われる人間。

 

疲労で倒れるとかあってはならないのだ。

 

「ふぇ……?マッサージ?…………!!?///」

 

シェリーは僕の言葉をしばらく咀嚼すると、ようやく意味を理解し顔をさらに赤くする。

 

なにやら「エッチなことかと思っちゃった」とか「でも肩こりのマッサージは普通だよね、私ったらなんて想像を……」とぶつぶつと言っているが気にしない。

 

よく聞こえないので無視して僕はシェリーの服に手をかける。

 

「ふぇ!?シドくん!?あの……その……恥ずかしいです!自分で脱ぎますから!」

 

「いいからいいから、僕に任せて」

 

僕は抵抗するシェリーの手を押さえながら服を脱がしていく。

 

ローブと制服の上着を剥ぐと、白いワイシャツだけになる。

 

少し汗ばんだシャツはシェリーの肌に張り付き、彼女の身体のラインを浮かび上がらせている。

 

「シドくん……恥ずかしいです……///」

 

シェリーは消え入りそうな声で呟くが僕は気にせずに彼女の肩をさすっていく。

 

ここまでガチガチだといきなり揉むのは良くない。

 

まずは優しくマッサージをして血行を良くする所から始めよう。

 

「あぅ……、くすぐったいです……」

 

シェリーは肩をビクビクと震わせる。

 

僕はそんな彼女の肩の凝りをほぐすように優しく丁寧にさすっていく。

 

サスサス……

 

僕の身体は幼い時からの肉体改造により内臓の位置を変えたり血のめぐりを遅らせたりすることができる。

 

それの応用で血流を早めることで体温を上げることも可能だ。

 

「あっ……シドくんの手なんだか暖かくなってきた気がします。これが肩こりに効くんですか?」

 

「そうだよー」

 

今の僕の体温は39度くらいだろう、ちょっとぬるめのお風呂くらいの体温をした手で肩を摩られシェリーは気持ちよさそうにしている。

 

「……すごいです、さっきまであんなに辛かったのに肩をさすってもらうだけで軽くなっていく感じがします……」

 

「それは良かった」

 

血行が良くなってきたのか岩のようにガチゴチだったシェリーの肩は、大分柔らかくなってきた。

 

これならもう少し刺激を与えても平気かな? 僕はシェリーの両肩にそれぞれ手を置き、ゆっくりと力を込める。

 

「あっ……んっ……」

 

僕の手の圧力に反応してシェリーの唇から吐息が漏れる。

 

「あぅ、シドくん?なんだかちょっと痛いです」

 

「ん?あぁごめんね」

 

どうやら力を入れすぎたみたいだ、もう少し優しくしよう。

 

七陰のみんなや姉さんみたいな魔剣士と違ってシェリーは小動物みたいにか弱いからね、力を入れすぎると壊れちゃうかもしれない。

 

僕はシェリーの両肩に置いた手にゆっくりと体重をかけていく。

 

「そんなにゆっくりだとマッサージにならないんじゃ……」

 

「いやいや大丈夫、このくらいのペースがちょうどいいんだよ」

 

肩を圧迫する僕の手がシェリーの肩にくい込み彼女の肌に沈み込んでいく。

 

まるで粘土をこねるように肩の上で手を動かすと、柔らかい肉に指が沈む感覚とそれに合わせて彼女の口から吐息が漏れる。

 

筋肉の奥をじっくりと揉みほぐすように優しく、それでいてしっかりと彼女の肩を圧迫していく。

 

「んっ、はぅ……あう……なんか不思議な感じです」

 

シェリーは少し頬を赤らめながら呟く。

 

その表情からは不快感はなくむしろ心地よさそうだ。

 

僕はしばらく彼女の肩をマッサージし続けた後、ゆっくりと手を離す。

 

指で肩を押してみるとさっきまでガチガチだったのが嘘のように柔らかい感触になった。

 

「どう?だいぶ楽になったと思うんだけど?」

 

「はい!すごく軽くなりました!肩もポカポカして気持ちいいし、なんだかスッキリしました!」

 

「それじゃあ首も揉んでくね」

 

「へっ?首もですか?」

 

僕はそのまま手をスライドさせて首筋を解していく。

 

「肩だけじゃなくて首とか背中も一緒にほぐすと肩こりが大分ましになると思うよ、筋肉がつながってるからだっけかな?」

 

前世のニュースか何かで見たうろ覚えの知識をそれっぽく言う。

 

「なるほど、そうなんですね……あっそこっ……すごくいいでふぅ……」

 

シェリーは快感を我慢しきれないのか時折甘い吐息が交じる。

 

ちなみに今は首を後ろから湯飲みを持つように掴んで揉んでいる。

 

指先に少しだけ力を込めながら筋肉を揉みほぐしていく。

 

くにくに……くにくに……

 

「あぅ……そこっ……コリがほぐれて……すごく気持ちいいです……」

 

シェリーは顔を真っ赤にしてもぞもぞと身体を動かす。

 

彼女の口からは熱い吐息が漏れ、額からは汗が流れる。

 

どうやらかなり効果が出ているようだ。

 

僕はシェリーの首の付け根あたりを親指を使って強めに刺激してやる。

 

グイグイッ……グリグリ……グリィ!

 

「ひゃぅ!?そ……そこっ……!」

 

肩と首の筋肉の境目あたりを親指で揉むようにしながらマッサージをする。

 

シェリーはビクンと身体を跳ねさせ、甘い声を上げる。

 

グイグイッ……グリグリ……グリィ! 僕はそのまま親指に力を込めながら筋肉を揉みほぐしていく。

 

いい感じだ、マッサージの効果でシェリーの首回りの筋肉が柔らかくなっている。

 

「うん、だいぶ良くなったね。研究が大変なのはわかるけどたまにはストレッチくらいしないとダメだよ?」

 

僕はシェリーの首から手を離す。

 

「は……はい、気をつけます……」

 

シェリーの顔は上気しており息も荒い。

 

「よし、じゃあ次は背中だね」

 

「ふぇ……?……ひゃっ!?」

 

僕はうつぶせに寝転ぶシェリーにまたがるようにのしかかる。

 

そして彼女の背中に手を当てる。

 

「シ……シドくん?この体勢は……?」

 

シェリーが戸惑いながら聞いてくる。

 

「うん?、今度は背中をマッサージしようと思ったんだけど」

 

「そ……そうですか……ありがとうございます……」

 

シェリーは少し恥ずかしそうに言う。

 

男が背中の上にいるのが嫌だったのかな?

 

僕はそんな彼女の背中に手を置き、ゆっくりと体重をかけて押していく。

 

ぐいっ……ぐいっ……ぐいっ……!

 

背中全体を押しながら筋肉をほぐす。

 

「あっ……んくっ……!」

 

シェリーは顔を枕に押し付けて声を押し殺しているが、それでも漏れ出してしまうようだ。

 

背中全体に張り巡らされた筋肉を丁寧にほぐし、血流を良くする。

 

「やっぱり背中も凝ってるね、すごく硬くなってるよ」

 

「ぅっ……すいません……」

 

シェリーは恥ずかしそうに謝る。

 

「大丈夫大丈夫、ちゃんとほぐしてあげるからね」

 

僕はそう言いながら彼女の背骨の両脇を親指で押していく。

 

ぐっ……ぐっ……ぐ~っ……!

 

ゆっくり長めに圧をかけ、背骨に沿って指を動かす。

 

ゴリゴリと固まった筋肉がほぐれていくのを感じる。

 

机仕事や長時間の勉強で肩が凝りやすい人は、背中の筋肉もガチガチになっていることが多い。

 

特にシェリーの背中はこりが酷いみたいで、凝りの塊とも言えるほどガチガチだ。

 

僕はその凝り固まった筋肉を揉みほぐすように指圧を続ける。

 

ぐっ……ぐぐぅ……!

 

「あぅっ……ふーっ……ふぅ……」

 

シェリーは枕に顔を埋めて声を押し殺しているが、時折熱い吐息や小さな声が聞こえる。

 

僕はそんなシェリーの背中を重点的に揉み解す。

 

「あぅ……シドくん……なんだか身体がぽかぽかしてきました……」

 

「うん、血行が良くなってる証拠だね」

 

筋肉がほぐれたことで血液の流れが良くなっているのだろう。

 

僕はそのまま背中全体を揉みほぐし終える。

 

「よし、じゃあ次は肩甲骨の辺りをやろう」

 

「はい……お願いします……」

 

僕はシェリーの背中に手を置き、肩甲骨に沿って指を滑らす。

 

ぐっ……ぐっ……!

 

「あっ……!」

 

シェリーがピクンと身体を跳ねさせる。

 

「痛い?」

 

 

「いえ、ちょっと驚いただけです……」

 

シェリーは枕に顔をつけながら答える。

 

どうやら大丈夫なようだ。

 

「じゃあ続けるね」

 

肩甲骨に沿って指圧を加えていく。

 

ぐっ……ぐっ……ぐぐぅ! 力を入れ過ぎず弱すぎずに注意しながら凝りを揉みほぐす。

 

肩甲骨のキワのあたりは特にこりが酷いのか、かなり凝っているようだ。

 

「あっ……!そこっ……!」

 

シェリーは身体を跳ねさせる。どうやらここが特に気持ちいいみたいだ。

 

僕はシェリーの反応を見ながら重点的に凝りを揉みほぐしていく。

 

ぐっ……ぐ~っ!ぐりぐり……!

 

肩甲骨に手のひらを当て、左右に押し広げるようにこね回す。

 

「あぅ……!」

 

シェリーは枕に顔を埋めながら小さく声を上げる。

 

背中と肩甲骨の凝りがだいぶ取れてきた。

 

もうそろそろ仕上げかな?

 

「じゃあ肩甲骨はがすね」

 

「あっはい、お願いしま……え?はがす?」

 

僕の言葉の意図がわからず、疑問を浮かべるシェリーを尻目に僕は彼女の肩甲骨と筋肉の隙間に指を埋める。

 

ぐっ……ぐっ……ぐ~っ……!

 

「えっ?あっ!?ひゃっ!」

 

自分の身体に指が埋まっていく感触に驚き、シェリーは声を上げ身体を跳ねさせる。

 

「しっ……シドくん!?何を……」

 

「肩甲骨って筋肉に引っ付いてるだけだから隙間があるんだ、肩こりの人はここをほぐしてあげるといいんだよ」

 

「そっそうなんですか?すいません無知で……」

 

シェリーは申し訳なさそうに言う。

 

「気にしなくていいよ、僕はマッサージ師じゃないから正しいやり方とか知らないし」

 

ぶっちゃけなんとなくでやってるだけなんだよね。

 

肩甲骨の裏側から揉むように指をぐにぐにと動かして筋肉の内側から刺激を与える。

 

するとだんだんと固く凝り固まった筋肉が柔らかくなっていくのがわかる。

 

「あっ……すごいです……なんだか肩が軽くなっていくような気がします……」

 

普段自分では絶対に触れない場所の筋肉を刺激され、シェリーは戸惑いながらも快感を感じているようだ。

 

僕はそんなシェリーの声をBGMに、黙々と肩甲骨周りの凝りをほぐしていく。

 

ぐいっ!ぐ~っ!ぐりぐり……

 

ぐ~っ!

 

「あっ……ふぅ……」

 

シェリーは枕に顔を埋めながら小さく吐息を漏らす。

 

肩甲骨周りの筋肉がほぐれてきたことで、彼女の身体から力が抜けるのがわかる。

 

「いい感じだね、このまま深呼吸してみて」

 

「は……はい……」

 

シェリーは僕の言葉に素直に従う。

 

そして大きく息を吸い込む。

 

「すぅー……はぁーー……」

 

「吸って―、吐いて―、吸ってー、吐いて―」

 

僕の言葉に合わせてシェリーは呼吸を繰り返す。

 

一呼吸ごとに緊張が和らいでいくのを感じる。

 

だんだんと身体から力が抜けていき、リラックスしているようだ。

 

そんな彼女の背中に両手を当てる。

 

「すぅー……はぁーー……すぅー……はぁーー……」

 

「吸って―、吐いてー、吸って―、吐いてー……!!」

 

深呼吸の最後、シェリーが肺の中の空気を出し切った瞬間背中を一気に押して圧をかける。

 

ボキボキボキッ!!ゴリッ!ボキボキッ!コキッ

 

「ひぎぃ!?」

 

突然背中を押しつぶすような強い力をかけられ、シェリーは悲鳴を上げる。

 

「しっ……シドくん!?今背中がベキッて……!」

 

「大丈夫大丈夫」

 

「でもすごい音がしたんですけど……」

 

確かにすごい音がしていた、深呼吸で体が弛緩しきった瞬間に圧をかけ、背骨の関節から音が鳴らしたのだ。

 

何故かはわからないけどボキボキ鳴らすと体が楽になって気持ちいいのだ。

 

整体とかでもやってるらしいし、多分大丈夫。

 

「じゃあ続けるね」

 

「えっ?あのっ……ちょっと待っ……」

 

僕はシェリーの制止を無視して首の根本を抑えながら頭に手をやり、クイッと頭部を横にひねる。

 

コキッ!

 

軽い音が首の骨から鳴り、シェリーが「あぅっ!」と声を上げる。

 

そのまま逆側にも首をひねる。

 

コキコキッ!

 

「あっ……またっ……!」

 

音はすごいが痛がる様子はない。

 

僕はそのまま頭を時計回り、反時計回りと回転させ、シェリーの首の骨をバキバキッ!ゴキゴキッ!っと鳴らす。

 

「あっ……あぁ……」

 

関節のゆがみが矯正されていく快感と、首を回転させていることによる浮遊感にシェリーは戸惑いながらも気持ちいいようだ。

 

「気持ちいい?」

 

僕がそう聞くと、彼女は枕に顔を埋めたままコクコクッと小さく頷く。

 

ストレートネック気味だった彼女の姿勢は大分矯正されたように見える。

 

最後に軽く首を揉んだあと、シェリーの首から手を離す。

 

「はい終わり」

 

「……ふぇ?」

 

突然身体を解放されたことに疑問を感じているのか、シェリーは間抜けな声を上げる。

 

僕はそのままシェリーの背中から降りてベッドの横に立つと、シェリーを仰向けにひっくりかえす。

 

「わわわっ!?」

 

突然身体の向きを変えられてシェリーは驚いた声を上げる。

 

しばらくアワアワしてたがボクと目が合うと、その状況を理解したようで恥ずかしそうに顔を赤くして手で顔を隠す。

 

「しっ……シドくん!?私いまとっても変な顔をしてると思います!見ないでください!」

 

顔を真っ赤にしながら足をバタバタさせるシェリー。

 

マッサージが心地よかったのかよだれのあとや涙のあとがくっきりと残っており、顔も少し火照っている。

 

「大丈夫だよ、全然変になってないし」

 

そう言って僕は彼女の目元に手を当てる。

 

自身の血流の流れをさらに早め体温を40度くらいに上げる。

 

「ふわ……あったかい……」

 

人力ホットアイマスクである。

 

前世でよく使い捨てホットアイマスクを使っていたので自分で再現できないかいろいろ試してできた技だ。

 

ただ自分の体温を上げているので僕自身にやっても手と目元の体温が一緒なのであまり効果はなく、他人にしか使えないボツ技である。

 

今役に立ってるからいいけどね。

 

目元をあっためると急激に眠気が襲ってくる。

 

ただでさえお疲れの身体をほぐされたばかりのシェリーから寝息が聞こえてくるまでそう時間はかからなかった。

 

「ん……すーっ……すーっ……」

 

「シェリー?寝ちゃった?」

 

彼女の口からは静かな寝息が聞こえてくる。どうやら完全に眠ってしまったようだ。

彼女が寝入ったことを確認すると僕は目元から手を離す。

 

「……よし」

 

そのまま研究室から静かに出る。

 

これでマッサージは完了だ、あれだけリラックスして眠ってるなら明日には元気になってるだろう。

 

「ふぁ~……」

 

僕もすっかり眠くなってしまった。

 

外を見ればすっかり日も落ちかけている。

 

今日はいろいろあったから僕も疲れてしまったみたいだ。

 

「帰るか」

 

早く部屋に戻って寝よう……。

 

 

もうすでにシェリーは夢の中だろう、僕も今夜はぐっすり眠れそうだ。

 

女の子を夜の学園に置いていくのはダメだろという人もいるかもしれないがそれは大丈夫。

 

「隣の部屋の護衛の人達、結局最後まで出てこなかったな……」

 

僕はそう呟きながら寮へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣の部屋にてシェリーの護衛を務める紅の騎士団の二人は意気消沈していた。

 

「……グレン副団長、俺出歯亀になった気分です」

 

「言うなマルコ、俺とて学生の甘酸っぱい青春を覗き見した気分だ」

 

二人はシェリーの部屋をのぞいていた。

 

普段は研究の邪魔にならないよう別室に待機しているが、護衛する以上、何があってもいいようにと扉には小さな穴が空いておりそこから中を覗くことができる。

 

先程まで部屋の中では少女が少年にマッサージされており、今は気持ちよさそうに眠っている。

 

「あの少年がベッドにシェリー殿を寝かせた時は押し入ろうかと思いましたが辞めてよかったです」

 

「ああ、結局マッサージだけでいかがわしいことは何もしなかったからな。押し入っていたら若者の恋愛を邪魔するお邪魔虫になっていただろう」

 

「ですね、それにしてもあの少年……なかなかのやり手です。マッサージでシェリー殿を骨抜きにしてしまうとは……」

 

「ああ、しかもその後シェリー殿の寝顔を見て満足気に帰って行ったからな。あれはもう脈ありだろう」

 

「ですよね、……はぁ、俺も彼女欲しいです……」

 

「……ひとり身のおっさんにそれは言うなよ……はぁ」

 

エリート騎士団所属のくせに浮いた話の無い青年と中年はそろってため息をつくのだった。




アニメ見直してたら七話のシェリーがチョコ食べるシーンがエッチすぎた。
何故口元をアップしたのか。
スタッフさんありがとう。
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