陰の実力者で耳かきやマッサージ   作:ごんがんら

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ニューにオイルマッサージしてもらう

「ヤバイな」

「ヤバイですね」

「どうしよっか」

学園の食堂にて頭を抱えるヒョロとジャガと共に貧乏貴族向けの激安定食を食べながら僕は悩んでいた。

「まさか寮が倒壊するなんてビックリだよね」

そう、昨晩どこぞの犬と猫のケンカにより巻き添えになった寮が吹っ飛んだのだ。

吹っ飛ぶ直前に危険を察知した僕はスライムに部屋中の荷物を収納し、脱出したので僕自身は何の損失もなかった。

だが他の寮に住んでいた面々は違う。

「俺とジャガは女子につきまとった罰で昨日はずっと反省室にぶちこまれてたから無事だったけど他の奴らは病院行きらしいな」

「幸い死人はいなかったみたいですけど物騒ですよね。シドくんは昨晩寮にいなかったんですか?」

「あー、僕はちょうど散歩してたんだよね」

ジャガの質問に適当に答える僕。

昨晩の寮の倒壊で死人こそ出なかったが、怪我人は結構な数いるらしい。

 

寮を壊す原因になった猫と犬はぶちギレたアルファが回収していったのでシャドウガーデンの関与はバレていない。

だが、僕らが頭を抱えていた理由は別のことである。

 

「二人は泊まる場所のあてあるの?」

「……ないです」

「あるわけねぇだろ」

そう、僕らは宿なしになったのだ。

寮が倒壊した以上、他の寮に移るしかない。

だがその手続きには時間がかかるし、それまでどこかで宿でも借りなければならない。

スライムを駆使して荷物を持ってきた僕はともかく、倒壊した寮に金も荷物も置きっぱなしにしていた二人はピンチなのだ。

実際今も貧乏貴族向けの激安定食を食べてる僕を恨めしげに見ながら生のジャガイモをかじっている。

……せめて茹でて食べようよ。

「僕は宿取ればいいけど、二人は学園に事情を話して宿直室貸してもらえば?狭いけどヒョロとジャガの二人くらいなら……」

「は?何言ってるんですかシドくん、ダメに決まってるじゃないですか。狭い宿直室で男と一緒なんてむさ苦しい空間ごめんですよ」

「そうだぜシド!、俺は女と一緒がいい!」

僕の提案に全力で拒否する貧乏貴族二人。

もうこいつら見捨てて僕だけとっとと宿取ろうかな?

 

「じゃあどうするのさ?」

「そんなの決まってるじゃないですか。ねぇ、ヒョロくん?」

「……ああ、そうだな。女子をナンパして泊めてもらうしかねえ」

ニヤリと笑い合う貧乏貴族二人。

……無理でしょ。

血走った目でニタニタ笑う二人はハッキリ言って不細工だ、どれだけ女子を舐めているのか知らないがこの顔でナンパは無謀だ。

しかも度重なる女子への嫌がらせのようなナンパとストーカー紛いの付きまといのせいで女子からは蛇蠍の如く嫌われている。

……モブを演じるべくこいつらと友人になったけど、ここまで周りから嫌われてると悪目立ちしそうだしちょっと距離置いた方がいいかな?

「というわけでシドくん、ナンパ行きましょう」

「適当な女子に声かけて泊めてもらおうぜ!」

二人が僕の肩を叩きながら言う。

まあ、二人を置いていっても後が面倒だからついていくけどさ……こいつら何でナンパが成功するの前提なんだろう?。

「んで?誰に声かけるのさ?」

「そうですねぇ……」

ジャガはキョロキョロと辺りを見回し、とある女子を見つけると満面の笑みを浮かべた。

「僕はあの子です!最近後をつけて調べたところによると彼氏と別れたばかりで体をもて余してるはず!そこを僕というイケメンが声をかければイチコロですよ!」

ジャガが指さしたのはスラッとした体つきの美人な少女だ。

……さらりとストーカー発言したなこいつ、あとお前は不細工だ。

「いやいや、あっちの巨乳美少女の方がいいだろ!」

ヒョロもジャガに負けじと別の少女を指差す。

そちらには巨乳で愛嬌のある可愛らしい少女がいた。

「マジおっぱいデケェ、まるっきりメロンだぜあれ!」

ヒョロの呟きに思わず吹いた。

人の多い食堂で何言ってんだこいつ、デリカシーなさ過ぎてびっくりだよ。

「シドくんはどっちがいいと思います?」

「おいおい、今回は俺が先に見つけたんだぜ?だから俺に譲れよ!」

……こいつら本当に反省してないな、もう見捨ててどこかで昼寝しようかな。

僕がバカ二人を見捨てようとしたその時……

「あー、もう我慢できねぇ!そこのメロンちゃん!!俺と一夜のアバンチュールを過ごそうぜ!!」

「そこのお姉さーん!!彼氏と別れて寂しい体を僕が慰めてあげますよー!!」

「……うわぁ」

マジで最低なセクハラ発言と共に女子二人に突撃していくバカ二人。

思わずドン引きして後ずさってしまった。

 

キャー!!チカンヨー!!

エッチガッ!グフゥッ!!

コノクズマタヤリヤガッタナ!

カコメカコメ!イキテカエスナ!

 

ヒィッ!タスケテ!ストーカーデス!サイキンズットツケラレテタノ!!

ナニイッ!!?オイソコノジャガイモアタマ!!チョットコイヤ!!

ナンデスカ!?ボクラハアイシアッテイルンデス!カンケイナイヒトハヒッコンデテクダサイ!!アッチョッマッ!!?

ストーカーカクホー!!

ヨシ、ソッチノチカントモドモキシダンニツキダセ!!

 

……さて、うるさい馬鹿二人が消えたことだしそろそろ真面目にどうするか考えよう。

 

学園の男子生徒にボコられて連行される二人を見なかったことにして僕は思案する。

姉さんは別の寮だが成績優秀者と高位の貴族だけが入寮できる高級寮住みだ。

モブを心がけている僕としては姉さんのところに泊まって悪目立ちするのは避けたい。

……あと単純に姉さんと同じ部屋に寝泊まりするのは怖い。

 

他に泊めてくれそうなのは……アレクシアは論外。

王女様の部屋に泊めてもらうとか悪目立ちするなんて次元じゃない、それにアレクシアの部屋とか首輪やら拷問道具とか置いてそうだしやだ。

 

 

「うーん、どうしたものか……」

僕が悩んでいると、ふと一人の女子が話しかけてきた。

「ここ空いてますか?」

さっきまでヒョロが座ってた席を指差しながらいうのは栗毛色の髪をお団子にした少女だった。

「あ、うん空いてるよニュー」

僕は反射的にそう答えてしまったが、彼女は特に気にした様子もなく僕の向かいに座った。

「また生徒に扮して潜入してたの?」

「いえ、今日はデルタ様とゼータ様のケンカでシャドウ様のお住みになられている寮が倒壊したと聞き馳せ参じました」

「あー、うん。デルタとゼータどうなった?」

昨晩暴れに暴れてアルファに連行された二人について尋ねる。

「アルファ様に連行されて今は反省室で謹慎中です。シャドウ様の住居を破壊したことでアルファ様がぶちぎれてらっしゃるのでしばらく出てこられないかと」

「昨晩見たことないくらいキレてたからね」

二人を回収したときのアルファは怖かった。アルファに連れて行かれる二人は半泣きで助けを求めてくるし、アルファは二人を半殺しにしようとするしで大変だったのだ。

「寮の方はミツゴシで修理することになりましたので1週間もすれば直るかと」

「はやっ、流石ガンマたち、仕事が早いね」

思わず素で反応してしまった。

完全に倒壊してたけど一週間で直るものなの?

「お褒めに預かり光栄です」

ニューはぺこりと頭を下げる。

「それでシャドウ様、今夜はどこに泊まるご予定で?」

「うーん……それがなかなか決まらなくてさ。適当に宿でも探そうかと思ってたんだけど」

僕がそう言った瞬間、彼女は満面の笑みを浮かべて言った。

「よろしければこちらをどうぞ」

そういって彼女が取り出したのは一枚の紙、そこに書かれていたのは……

「ミツゴシ温泉ランド優待券?温泉ランドなんて作ってたんだ?でもなんでこれを僕に?」

「僭越ながらシャドウ様は今回の騒動でお困りなのではないかと判断させていただきました、そのチケットがあれば一週間と言わず半永久的にミツゴシ温泉ランド内の高級ホテルに無料で泊まれます」

「え?マジで?」

「はい、シャドウ様がよろしければ是非お使いください」

僕はニューから渡されたチケットをしげしげと見つめる。

僕の知らないところで温泉ランドなんて面白そうなもの作ってたのか。

内緒で楽しそうなもの作ってたのは不満だが、チケットがあるならありがたく使わせてもらおうかな。

「うん、ありがたく使わせてもらうよニュー。色々とありがとう」

僕がそう言うと彼女は恭しく頭を下げながら言った。

「シャドウ様のシモベとして当然のことをしたまでです。では、ご案内させていただきますね」

ニューは立ち上がると僕の手を引いて食堂の出口へと歩いていく。

周りの人らがニューを見てざわついているが、彼女は気にした様子もなく歩いていく。

「あのー、ニュー?僕は自分で歩けるから手を繋がなくても大丈夫だよ?」

これ周りからカップルに見られてるよね?

モブとしては変装してるとはいえ美人さんのニューと付き合ってると噂されるのは困るんだけど。

「いえ、シャドウ様は私の主人ですから手をお引きするのが当然です」

「いやいや、そんな……」

「シャドウ様?」

ニューがニッコリと笑う。

……うん、美人さんの笑顔って迫力あるね。

「……はい」

僕は黙って彼女と手をつなぎながら歩く。

周りからの視線に居心地の悪さを感じながらも僕はニューに連れられて食堂を後にした。

 

 

 

 

ミツゴシ温泉ランド。

ガンマの知恵とイータの技術力、そしてミツゴシ商会の金に物を言わせて建設した温泉施設。

最近作られたこの施設は男女別の大浴場や各種マッサージコーナーなど充実した施設であり、オープンしてから間もないが、すすでに国内外から多くの人に高い人気を誇る観光名所らしい。

そんな温泉ランドの中に僕はいた。

「いやー、いい湯だった」

温泉を堪能した僕は温泉ランド備えつきの浴衣姿で上機嫌で広い通路を歩きながら言った。

「シャドウ様にお喜びいただけて幸いです」

お団子をほどいて髪を流した浴衣姿のニューが僕の数歩後ろで恭しく頭を下げる。

「……ずっと僕について回ってるけど、ミツゴシの仕事はいいの?」

「問題ありません、本日は有休をいただきました」

僕の疑問にニューが答える。

そっか、なら問題はない……って有休?

「はい、シャドウ様のお世話をさせていただくために本日は有休をいただいております」

ミツゴシって有休制度まで導入してるの?

異世界だというのに前世の有力企業並みの福利厚生が整ってそうなんだけど。

「シャドウ様のお世話をする以上当然のことかと」

さすがにもっと有意義なことに使った方がいいんじゃない?

わざわざニューに有休を使わせたことに若干の罪悪感を覚えながらも、僕たちは談笑しながら歩いている。

「シャドウ様、温泉の次はマッサージなどいかがでしょうか?、ミツゴシが誇る最新マッサージで最高の癒しをご提供できますよ?」

「あー、じゃあお願いしようかな」

ニューに勧められるままに僕はマッサージコーナーへと足を運ぶ。

……なんかニューの押しが強い気がするんだけど気のせい?

 

促されるまま全個室になっているマッサージルームに入る。

広めの部屋の中には柔らかそうな椅子と見るからにふかふかのベッドが置いてある。

壁際の棚にはオシャレな瓶に入ったオイル等がインテリア代わりに置かれている。

わずかに香るアロマらしき匂いも僕の好みにドンピシャだった。

「すごいね、思ってたより本格的だ」

「ありがとうございます、シャドウ様。本日は私が担当させていただきますね」

ニューに促されるまま僕は浴衣を脱いで短パン一丁になるとふかふかのベッドにうつぶせになる。

「それにしてもニューって変装とか得意だけどマッサージまでできるんだ?すごいね」

「シャドウ様のためならばこのようなマッサージを覚えるのは朝飯前です」

そういいながらニューが僕の背中にポカポカに温まった蒸しタオルを乗せてくる。

僕の背中がすっぽりと覆えるサイズのバスタオルは先ほど入った温泉よりも少し熱いくらいで、じんわりと僕の背中を温めていく。

「せっかくのお風呂上がりですし湯冷めしないよう温めながら施術させていただきますね」

「あー、いいねえ……」

思わずこぼれた僕の本音にニューはクスリと笑う。

「それでは始めますね」

そう言ってニューは蒸しタオル越しに僕の背中に手を当てる。

ぐいぐい押してくるのではなくじっくりと僕の背中を押していくニューの手。

蒸しタオルと相まって彼女の体温が僕に伝わってくるかのようにじわじわと温められていく背中。

 

僕が時々やるわりと適当なマッサージとは大違いな丁寧さだ。

「シャドウ様、力加減はいかがでしょうか?」

「うん、ちょうどいいよ」

僕の反応にニューは嬉しそうに笑う。

……なんか今日ずっと彼女に流されてるな。

いやまあ、温泉もマッサージも気持ちいいからいいんだけどさ。

「では次はオイルを塗っていきますね」

そう言ってニューはタオルをどかすと、背中が冷める前に温まったオイルを僕の背中に垂らしていく。

人肌程度の温かさのオイルがゆっくりと背中全体を濡らしていく。

ふわりと香る花のような香りはリラックス効果がありそうだ。

「いい香りだね、ニューこれって何の花の香り?」

「当施設自慢のラベンダーです。アレキサンドリアにて栽培したもので、通常のラベンダーよりもリラックス効果があるものをホホバオイル等と混ぜております」

へぇ、そんな効果があるんだ。

確かにこの香りを嗅いでると心が落ち着く気がする。

そのオイルを塗り広げるようにニューの手が僕の背中を滑っていく。

ゆっくりと僕の背中全体を撫でまわすように手を動かすニューの手はただ表面を滑らせるのではなくて背中に圧を加えながら僕の背中を揉みほぐしていく。

 

 

 

彼女の手が動く度に僕の背中のコリが解されていくのがわかる。

「それにしてもシャドウ様のお身体普段は着痩せして見えますが、実際はがっしりとした体つきをしていらっしゃるんですね」

ニューは僕の身体を揉みながら楽しそうに言う。

 

頑張って服を着たらモブに見えるように筋肉が肥大しすぎないよう肉体改造したからね。

前世では一時期筋肉を鍛えすぎて某世紀末覇王みたいな体型になって悪目立ちしてしまった。

その時の失敗を教訓に僕は今世では肉体改造により前世並みの筋肉を持ちながら細マッチョに見えるくらいまで筋肉を凝縮させることに成功したのだ。

これにより服さえきていればモブに見えるようになった。

「シャドウ様の肉体は素晴らしいです、まるで良質な鋼のよう…」

ニューはうっとりしながら僕の背中を撫でまわす。

……なんか今日のニューはやけにグイグイ来るな。

実は筋肉フェチだったとか言わないよね?

若干の寒気を覚えるがニューの手は止まらない。

粗方オイルを塗ると今度は体重をかけた手のひらで僕の背骨の両横を腰から首の辺りまで押し込んでいく。

ぐっ、ぐーっ。

老廃物を流すようにニューの手が僕の背中を行ったり来たりする。

「シャドウ様の身体、とても素晴らしいです。この筋肉のつき方、肩甲骨周りの盛り上がり、まるで彫刻のような肉体美……はぁ……」

なんかニューがウットリしながら言ってるけど気にしないようにしよう。

僕はマッサージに集中して彼女の手が動く度に訪れる心地よさに身を任せる。

 

ある程度背骨付近をほぐし終えると彼女は今度は肩甲骨に手のひらを当て、オイルで滑りのいい手を円をかくように動かしながら僕の肩甲骨周りを揉みほぐしていく。

ぐっ、ぐっ、ぐっ……

筋肉の筋をほぐすようにニューの手が肩甲骨周りの筋肉を押す。

僕はただその気持ちよさに身を委ねる。

……あー、なんかめっちゃ気持ちいいわ。

思わず声が出てしまうくらい気持ちいいマッサージに僕の身体から力が抜けていく。

「シャドウ様、お加減はいかがですか?」

「うん、最高だよ。ニューってマッサージ上手なんだね」

いや、本当に上手い。

普段ミツゴシの店員やりながらシャドウガーデンとしても活動してるのにいつマッサージなんて習得したんだろう?

「お褒めに預かり光栄です、教団のクズ共を拷問してるうちに人体の的確な壊し方が解ってきたのですが、自然と的確な人体の癒し方も解ってきまして、こうしてシャドウ様のお役にたてたのなら拷問してきた甲斐がありました」

「……そっかー」

にこやか笑顔で言うニュー、いや怖すぎるんですけど?

教団のクズ共を拷問してきたって……、スッゴいいい笑顔でとんでもないこと言うねこの子。

僕もよく盗賊をぶっ殺して金品を頂戴してるけど拷問とかはやらない。

陰の実力者らしくないし別に僕はサディストでもないからね。

今僕は拷問で培った技術を受けてるのか……。

ニューのヤバさを感じながらも僕はまぁ気持ちいいからいいか、と深く考えないことにした。

 

「ではシャドウ様、肘でお背中をほぐしていきますので力を抜いてください」

そう言ってニューは僕の肩甲骨に肘を当てるとグリグリと筋肉をほぐすように力を加えていく。

ぐっ、ぐっ……肘が僕の身体を開くように動く度に心地よい痛みが僕の肩甲骨から伝わってくる。

人体で最も硬い肘が僕の筋肉を解していく。

 

肘でマッサージされるのなんて初めてだけど固くなった筋肉をゴリゴリとほぐされるのは癖になる。

オイルの滑りのよさのお陰か結構な圧がかかっているにもかかわらず痛みもあまりなく、むしろ心地よさを感じるくらいだった。

ぐっ、ぐっ……ぐーっ!

肘をグリッと動かしながらニューが僕の背中をほぐしてくれる。

背骨の横の筋肉を内から外にゆっくり肘で圧をかけていく。

ぐっ!ぐっ!

段々肘にかかる圧が強くなっていく。

 

肘で行うことで手では難しいであろう背中の奥にある筋肉まで圧をかけることができるのだろう。

「肘でマッサージされるのって初めてだけどいいもんだね、手でやるのとはまた違った気持ちよさがある」

「シャドウ様は筋肉の密度が段違いなので肘の方が効くと思ったんです、ご満足頂けているようで何よりです」

絶妙な力加減とリズム感で一番効果的な部位を刺激してくれるため実に気持ちよい。しかもオイルの効果なのか凝っている場所だけでなく全身の疲労も一緒に癒してくれているような不思議な感覚だ。

んー、これはハマるかも。

そう思っていると、ニューの肘が僕の腰の方に滑り降りてきた。

ぐっ、ぐっ……ぎゅっ! 腰をニューの肘で圧をかけられる。

さっきよりも更に強い力で腰の中心にある筋肉がグリッと解されていくのがわかる。

 

「シャドウ様、腰もだいぶ固くなってらっしゃいますね」

「そうかな?」

 

ぐっ……ぐーっ! ぎゅっ、ぐーっ!!

固い筋肉をほぐす為に彼女は体重をかけながら肘でグイグイと僕の腰を圧していく。

端からみたらエルボードロップを食らってるような絵面だろう。

「ぐっ!かなり効くね」

筋肉の凝りがゴリゴリと解されていくのがわかる。

腰は人体の要、ここが凝り固まってしまうと腰痛やギックリ腰の原因にもなるし、姿勢も悪くなる。

 

身体のケアはいつでも陰の実力者ムーヴできるように万全にしていたつもりだが、やはり自分では手が届かないところも出てくる。

こうして誰かに身体を労ってもらうとそれをより実感する。

 

こうしてニューに解してもらえるなら定期的にお世話になるのもありかな?

そんなことを考えながら首を動かしてニューを横目で見ると……

ニューの目は獲物を目の前にした肉食獣のようなギラついた目をしていた。

 

あれ?なんかヤバい?

 

「シャドウ様、折角ですからマッサージの仕上げにお尻

の筋肉をほぐしますね」

「え?いや、ニューさん?そこは別にやらなくても……」

「何をおっしゃいますかシャドウ様!ここは特に念入りにほぐしておかなければいけません!」

ええ……

妙に熱の入ったニューに僕は困惑する。

「シャドウ様、お尻の筋肉が凝り固まっていると腰痛等の原因になります。ですので念入りに揉みほぐさせていただきます!!」

ニューは僕のお尻に手を沿えると力を込めていく。

ぐっ、ぐーっ!!ぎゅっ!

強く指が沈むが決して痛くない絶妙な力加減だ。

筋肉が密集しているお尻の筋肉を的確に捉えていくニュー。

一応短パンをはいているがさすがに恥ずかしい。

ぎゅっ!ぐっ、ぐーっ!!

「うぁっ」

いい感じにゴリゴリと尻を揉まれて思わず声が出てしまう。

「はぁ、はぁ、シャドウ様のお尻、なんて素晴らしいのでしょう。筋肉のつき方といい張りといい最高のお尻です」

褒めているつもりなのだろうが嬉しくない。

いや、子供の時から肉体改造して鍛え続けた肉体を褒められるのは嬉しいんだけど、息を荒げて僕のお尻を揉みしだくニューにちょっと恐怖を覚える。

普段ミツゴシで働きながらシャドウガーデンとしても頑張ってくれてるのはいいんだけどストレスでも溜まってるのかな?

 

ミツゴシはともかくシャドウガーデンの方は僕の陰の実力者ムーヴに付き合わせてるからだし、彼女のストレス解消にもなるならうちょっと付き合ってあげた方がいいのだろうか?

「ニュー、ちょっと痛いからもうちょっと力弱めてもらえるかな」

「申し訳ありませんシャドウ様、ですがこの素晴らしい感触をもっと堪能していたいのです!」

僕の言葉を無視してニューは僕の短パンを下ろそうとしてくる。

いや!?それはさすがにまずいよ!?

「ニューさん!ストップ!ストッープ!!」

僕は思わず叫ぶが彼女は止まらない。

もうダメだ……と諦めかけたその時だった。

「……何をやっているの?ニュー?」

聞き慣れた声がしてマッサージ中のニューが凍りつく。

声のした方に首を向けると、マッサージルームの入り口に仁王立ちでヤバイオーラを放つアルファが立っていた。

「アルファ様……これは……」

青ざめた表情で弁解をしようとするニューに、氷のように冷たい表情をしたアルファが言う。

「ニュー?このクソ忙しい中有休取ったかと思えば、何故貴方はシャドウにセクハラしているのかしら?」

 

アルファの絶対零度の雰囲気にニューは白目を向いて今にも気絶しそうだ。

正直ちょっと怖かったので助かった。

それにしてもアルファ昨晩デルタとゼータを連行していった時と同じくらい怖い顔してるんだけど、なんかあったのかな?

「これはシャドウ様がお疲れのようだったのでマッサージを……」

震える声でニューが言う。

アルファは僕を見るとにこりと満面の笑みを見せる。

いやその笑顔超怖いんですが、普段は笑っても微笑むくらいなのに滅多に見せないにこやかな笑顔が逆に恐怖心を煽るんですけど?

「そう、シャドウの疲れを癒そうとしてくれたのね、なら今から私の部屋に来てちょうだい。お礼をしてあげるわ」

アルファはニューの腕を掴んでずるずると引きずっていく。

万力のような力で掴まれているのだろう。

ニューの腕がミシミシと悲鳴をあげている。

「お、お待ちくださいアルファ様!私はシャドウ様にマッサージをしていただけでやましいことは何も……!!?」

「あら?私はやましいことなんて一言も言ってないけれど?」

「」

「ニュー?返事は?」

「……はい、アルファ様」

「そう、なら良かったわ。それじゃシャドウ、貴方はゆっくりしてなさいね。寮の方もなるべく早く直るように手配しておくわ」

「あ、うん」

アルファはニューを引きずったままそう言って部屋を出ていった。

引きづられながらも助けを求める目でニューにみられていたがあの状態のアルファには逆らわない方がいいのでそっと目を反らし見なかったことにした。

 

ばたんっと閉じる扉を前に僕はとりあえず温泉に入り直して今あったことを忘れようと温泉に向かうことにする。

 

昨晩も思ったけどやっぱりアルファは怒らせちゃ駄目だね。

デルタとゼータと同じくお仕置き部屋に行くであろうニューに心の中で手を合わせながら僕はそう思った。

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