「あぁぁぁぁぁ~、極楽だねぇ」
寮が壊れてしばらくミツゴシ温泉ランドに泊まることになった僕はマッサージチェアに座っていた。
風呂上がりに見かけたマッサージチェア。
おそらくイータの発明品だろうがどんなものか気になって腰かけたのだ。
そしたら想像以上。
全身を揉み解されて、至福のひと時を過ごしている。
「イータもすごくいいもの作ったなぁ、寮が直ったら僕の部屋にも一つ置いてもらおうかな?」
「……マスターの頼みなら、オーケー……」
一人ごとのつもりだったがいつの間にかとなりのマッサージチェアにイータがいた。
不覚にもマッサージチェアに夢中になってて近づいてきたことに気づかなかった。
「……びっくりしたぁ、イータもマッサージ?」
「そう……、マスターが気持ち良さそうにしてるのを見て、私も座りたくなった。我ながら良くできてる……」
無表情ながらドヤ顔なイータ。
背もたれに体重をかけてリラックスしている。
だけど僕には一つ気になることがある。
「ねぇイータ?何でバニー服なの?」
そう、バニー服である。
イータが今着ているのは温泉ランドにふさわしくない、むしろカジノにいそうな白と黒のウサミミに赤いレオタードのバニー服だ。
肩も腋も太ももも丸見え。
胸なんかもしっかり谷間が見えている。
普段研究ばかりで全然運動してないだろうにやたらとスタイルのいいイータにはよく似合っている。
そんな格好でマッサージ機に座られたら、目のやり場に困るってもんだ。
陰の実力者になるにあたって性欲を切り捨てた僕じゃなければ、欲情しかねない。
「スライムスーツに色をつけれるようにしたから試しにバニーにしてみた……。似合ってる?
……あとすけすけにもなる。」
「似合ってはいるよ、でも目立っちゃうから部屋に戻って着替えた方がいいと思うな。あとすけすけはやめとこうか」
実際周りのお客さんがちらほらこっちを見ている。
イータもエルフだけあってかなりの美少女だから男たちのいやらしい視線がすごいことになっている。
「……マスターが一緒にきてくれるなら、着替える」
「えー」
正直もう少しマッサージチェアを堪能させてほしかった。
風呂上がりの温まった身体を絶妙な加減で揉み解すマッサージチェア、冬のこたつのように何時間でも座っていたい。
だが正直周囲の目線がそろそろヤバイ。
僕をイータの彼氏かなにかだと思っているのか男共が血走った目で僕をにらんでいる。
中には血涙まで流して呪詛を呟いているやつもいる。
うん、超こわい。
ホラー映画で怪異役をやれそうな男たちの醜い嫉妬を浴びて身の危険を感じるので、もう出ることに決めた。
「はぁ、解ったよイータ。それでどこに行くのさ?」
「マッサージルーム……、マスターももう行ったって聞いた」
マッサージチェアから立ち上がった僕にイータがついてくる。
「ああ、マッサージルームか。うん、行ったよ」
ミツゴシ温泉ランドに宿泊を開始した初日にニューにつれられて行った部屋だ。
ニューがしてくれたオイルマッサージは気持ちよかったなぁ。
怖い顔したアルファに引きづられてったけどあの後どうなったんだろう?
「……ニューはアルファ様にお仕置き部屋にぶちこまれたらしい。デルタやゼータと一緒でしばらく出てこれないと思う」
さらりと心読んだ?
「マスターの考えてることならだいたいわかる。あとニューは自業自得」
「そうなの?じゃあ仕方ないか」
考えを読まれているのは納得できないがニューに関してはイータが自業自得というならそうなのだろう。
実際昨日は身の危険を感じたし。
「それじゃ、マッサージルーム行こうか。」
「了解、マスター」
なんか今日のイータはテンションが高い気がする。
無表情なのにどこかウキウキしているようなそんな感じだ。
日頃僕を実験体にしようとするイータのことだし何か企んでるのだろうか?
そんなことを考えつつ僕とイータはマッサージルームへむかったのだった。
後ろから感じる男たちの怨嗟と憎悪に満ちた視線を浴びながら……。
うーん、男の嫉妬ってやっぱり超こわい。
※※※
「……ここがマッサージルーム」
「昨日も来たけどやっぱり設備すごいよね、ここ」
イータに案内されて来たのは昨日もきたマッサージルーム。
アロマの漂う清潔感溢れる白を基調とした部屋だ。
「けど何でマッサージルームにつれてきたのさ?」
研究以外に興味のないイータがマッサージルームに用なんて無いだろう。
だから僕は疑問を口にした。
「マスター、ゼータに耳かきしたって聞いた。」
「うん、そうだけど?」
「……それを聞いたガンマが耳かき専門店を作るってはりきってる……。それで私に耳かきする設備を作って欲しいって言ってる、けど私は耳かきどころか医者に耳垢取ってもらったことすらない……」
「マジか」
「マジ」
商魂たくましいガンマなら耳かきを商売にするのはまぁわかる。
僕の前世知識を僕の知らない間に活用してミツゴシ商会なんていう国一番の大商会を作るくらいだ。
耳かき専門店を開くくらいやりかねない。
「いくら私でも全く知らないものは作れない、だからマスターに耳かきして欲しい。それで耳かきに必要な道具と設備を憶えて作る」
「ああ、そういうことね。確かにここなら耳かきにも使えそうなマッサージの道具いろいろあるし、納得かな。」
耳かき棒はスライムで作ればいいし、他に必要そうな綿棒やタオルなんかはこの部屋に置いてあるものを好きに使えばいい。
お風呂から上がったばっかりでやることもないし、珍しく解剖以外のイータのお願いだし聞いてもいいかな。
「オッケー、解ったよイータ。それじゃミツゴシでやるなら膝枕より椅子に座りながらやった方がいいかな?」
「……?、耳かきは膝枕でやると聞いたけど座りながらでもできるの?」
「うん、まぁやってみようか」
ミツゴシでやるなら夜のお店みたいなお姉さんに膝枕してもらう感じより、前世のイヤーエステみたいな感じの方がいいよね。
そう考えて僕はイータをふかふかのリクライニングチェアに座らせた。
「じゃあ始めるから動かないでね、イータ」
「……わかった、マスター」
リクライニングを若干倒して楽な姿勢になったイータは無表情ながら少し不安そうだ。
今まで耳垢を取ったことがないと言っていたし耳を触られたことさえないのかもしれない。
リクライニングチェアの横に椅子を持ってきてそれに座った僕はイータの耳をそっと触る。
「っ!」
「あ、ごめん痛かった?」
「……痛くない。ちょっとびっくりしただけ」
「そう?なら続けるね。まずは耳たぶのマッサージからするよ。」
部屋に置いてあったホットタオルをイータのエルフ耳に被せて、ほぐすように、それでいて痛くならないように注意しながら揉んでいく。
ぎゅっ、ぎゅっ
「ん……」
エルフの耳は人間の耳より固い感じがする、耳の先っぽが尖ってる分支えるために固くなるように進化していったのかな?
特にイータの耳はゴリゴリに凝っている。
研究で引きこもることの多いイータは休息も睡眠も適当にしか取ってないらしい。
たまに睡魔に負けて道端で寝てることもあるとか。
そんなんじゃなかなか疲れも取れないだろうし耳が固くなるのも納得だ。
「イータの耳めちゃくちゃ固いね、ちょっとマッサージして解すから」
「……ん、おねがいマスター」
そう言って耳を揉まれるイータは無表情ながら気持ち良さそうだ。
指先で耳を挟んで小刻みに動かしてやる。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅ~っ、ぎゅ~っ
「ん……ふぅ」
ホットタオルと僕の指の温かさが気持ちいいのかリラックスしているイータに僕も少し和む。
そのまま耳たぶを揉んでいく。
人間のように丸みはないが確かに存在する耳たぶ、そこを摘んだり引っ張ったりしてマッサージしていく。
むにっ、むにむっ、もみゅもみゅもみゅ~っ
「……おお、気持ちいい」
耳たぶを揉まれるのが気にいったのかイータが惚けたように呟く。
無表情で無感情なイータだが耳たぶを揉まれるのは気持ちいいらしい。
よし、このままもっと気持ちよくしてやろう。
僕はスライムで手元にマッサージ用オイルを引き寄せると、手にオイルを垂らして、そのままイータの耳たぶを揉みはじめた。
にゅるっ、もみゅもみゅ、むにゅむにゅ~っ
「……?これはなに?ニュルニュルする」
「マッサージ用のオイルだよ、昨日ニューにやってもらったんだけど気持ちよかったから試しにイータにもやってみようかなと思って」
「……耳かき店のメニューに使えるかもしれない、マスターお願い」
「了解、僕のやり方でやっちゃうけどオイル使うのは初めてだから痛かったり気持ち悪かったら言ってね?」
「わかった」
イータの了承を取れたので早速耳たぶに追加のオイルを垂らしていく。
「っ!」
「大丈夫?」
「……驚いただけ、続けて」
一応人肌に温めてから垂らしているので冷たくはないはずだが、それでも慣れないことだから驚いたのだろう。
「それじゃ続けるね」
むにっ、むにゅんむにゅ~っ、こりっこりっ
「ん……はぁ……」
イータの耳たぶを揉みながらオイルを馴染ませていく。
森の香りとでも言うのだろうか?清涼感のある瑞々しい香りのするオイルがイータの耳たぶに染み込んでいく。
その際に耳の窪みにたまった耳垢にもオイルが染み込ませてふやかしていく。
見ただけでは解りづらいが触ってみたら窪みに結構な耳垢が溜まっていたのだ。
「マスター、なんか耳の窪みのとこムズムズする」
「あ~、それは多分汚れだよ、窪みに耳垢が貯まってるからオイルでふやかしてから綿棒でぬぐってあげるよ」
「……耳の外側にも耳垢って貯まる?」
「うん、わりと貯まるものだよ。お風呂入った時とか気をつけて洗ってみるといいよ」
実際最初マッサージするときに使ったタオルは黄色く汚れている。
あまり細かいとこまで身だしなみを気にしないイータなら汚れが溜まるのは仕方ない。
この前デルタの髪を洗った時の汚れよりはよっぽどマシだろう。
そんなことを考えながら耳をマッサージしているといい感じに耳の窪みの耳垢がふやけてきた。
イータも痒そうに目を細めている。
「それじゃ、耳の窪みに綿棒入れるよ」
「……ん、おねがいマスター」
僕は綿棒にオイルを染み込ませるとイータの耳の窪みに滑らせる。
ニュルっ、すーりっ、ゾリッゾゾゾ……!
「あ……はぁ……」
綿棒が窪みの耳垢を絡め取っていく。
そのたびにイータの口から心地よさげな声があがる。
窪みを一筋なぞるだけでゾリゾリと耳垢が取れる。
「お~、結構取れるね。オイルのお陰で耳垢もふやけてるし、溜まってるとこ全部掃除しようか」
「うん……」
イータの了承を取ったので、綿棒を窪みの奥に入れては窪みに溜まった耳垢を取り除いていく。
ニュルるっ……すりっ、ズズズッ
「はぁ……ふぅ……ん」
窪みを綿棒が擦るたびにイータの口から心地よさげな吐息が漏れている。
普段からローテンションで表情がほとんど変わらないイータがこんな反応を示すのは珍しい。
けど、まだ外側しかやってないんだよなぁ。
「イータ、そろそろ中もやってくけど大丈夫そう?」
「……ん、平気。もっとしてほしい」
そう言ってイータは目をつぶった。
余程気持ちいいのだろう、すっかりリラックスモードだ。
背もたれに身を預けてのんびりと目をつぶっている。
そんなイータを見つつ、僕はひっそりと不安に思っていた。
耳をマッサージしてるときに気づいたのだがイータの耳は耳垢でふさがっているのだ。
耳垢栓塞というやつだろう、ワインのコルクのようにすっぽりと耳の穴に耳垢が詰まってしまっているのだ。
これを無理やり出すとかなり痛いと思う。
綿棒でツンツンしながらどうしたものかと思案する。
「……おお、耳が響く」
「あ、ごめん」
耳垢をツンツンしているとイータが驚いたので綿棒の動きを止めて謝る。
音が響くというのなら鼓膜近くまでこの耳垢は詰まっているのかも。
「……大丈夫。それよりマスター、耳垢取って欲しい。ツンツンされてたら痒くなってきた」
「うーん、それじゃぁまた耳垢ふやかすから動かないでね?」
ここまでぎっしりと詰まっていると簡単にはとれなさそうだ、一度耳垢を柔らかくするために水分を含ませたい。
普段なら水で濡らした綿棒でふやかすところだが、せっかく色々なオイルがあるのだしそっちを使っていこう。
僕はスライムで細いスポイトを作り中に温めたオイルをいれる。
そのスポイトの先っぽを耳の穴と耳垢の間にいれてオイルをゆっくり注入していく。
ちゅぅぅぅ、じわぁ、じわぁ
「~っ!!」
耳の中に温かいオイルが入っていく感覚にイータが声にならない悲鳴を上げる。
固まった耳垢にオイルが染み込んで柔らかくなったことで痒みが倍増しているのだろう。
ひくひくと眉が引きつって苦しそうな表情をしている。
「大丈夫?」
「……か、痒い。マスター早く……」
耳の中にオイルを染み込ませたイータは早く痒みから逃れようと息も絶え絶えだ。
早く耳垢を取り除いて欲しいと訴えてくる。
いい感じに耳垢もオイルでふやけてきたし要望通り早く取ってあげよう。
「りょーかい、じゃあピンセットで一気に引っこ抜くよ」
スポイトを抜いてイータの耳穴にピンセットを入れる。
金属のひんやりとした感触に一瞬イータが身を強張らせるが、僕がゆっくりと耳垢に差し込むのに合わせて力をぬいてリラックスしていく。
スポイトでオイルを染み込ませた耳垢は粘度が高くなって柔らかくなっている、これなら痛むこともなく引き抜けそうだ。
しっかりと奥までピンセットを差し込み、耳垢をつまむ。
「それじゃいくよ」
「ん、お願いマスター。一思いに……」
覚悟を決めたイータの言葉に合わせて一気に耳垢を引き抜く。
ズズズッ……べりっ!!スポンッ!!
「~~~っ!!!」
引き剥がす際に生じた衝撃にイータの全身が強張るが、すぐに弛緩する。
どうやら痛みはさほどなかったようだ。
どこかとろんとした表情で脱力している。
「こんなの耳の中に入っててよく聞こえてたね、イータ」
ピンセットで引き抜いた耳垢を見ると耳の穴の形にそのまま沿って固まっていた。
見た目耳栓のようなそれは耳の穴をぴったりと塞いでいたことがよく解る。
こんな状態でもイータは普段と変わらずに研究していたのか……。
イータ自身も取れた耳垢を見て、驚いたような顔をしている。
「……驚いた、私の耳にこんな大きい耳垢があるとは」
「うん、僕も驚いたよ。研究が忙しいのは解るけどたまには耳垢取った方がいいよ?」
そういいながらイータの耳に綿棒を差し入れて残った細かい耳垢と余分なオイルをぬぐってあげる。
「ん……わかった、次から耳が気になったらマスターにお願いする」
「え、僕?そこはミツゴシで耳かき店作るんだしお店で取ってもらったら?」
僕は陰の実力者になるべく普段から鍛練や面白そうなイベントを見過ごさないようにしてるから忙しいのだ。
「ん、マスターにお願いする。」
「いやだから……」
「ダメ……?」
イータが無表情で小首を傾げながら僕に聞いてくる。
世の男たちを一瞬で虜にしそうだが、とてもイータがやりそうにない仕草に思わずぽかんっとしてしまう。
「……はぁ、解ったよ」
「マスターありがとう」
無表情で無感情なイータだが、よく見ると嬉しそうにしている気がする。
無表情だけどなんとなくそう感じたのだ。
(……ま、いいか)
そんなイータに僕はそう思うのだった。
「……けどさっきの仕草どこで覚えたのさ?イータのキャラに合わなくない?」
「……あれはベータが『この仕草でお願いしたら世の男共は大抵いうこと聞いてくれるから覚えておくといいわよ』って言ってた」
「うーん、腹が黒いなぁ」
正直納得した。
こんなの教えるのベータ位だよなぁ。
ベータって表向き人気小説家らしいけどこういう男を惑わすテクニックで上り詰めた訳じゃないよね?
僕は部下の腹黒っぷりに少し不安になりながらもそう思うのだった。
「それじゃあマスター、耳かきの続きして欲しい」
「え、まだやるの?」
「ん、逆の耳がまだ。座りながらの耳かきは覚えたから今度は膝枕でやって欲しい」
リクライニングチェアから立ち上がったイータがベッドの方に移動し、僕を呼びながらぽんぽんと枕元を叩く。
どうやら膝枕で耳かきをして欲しいらしい。
「はぁ……ま、いっか」
なんかここに来る前にも似たようなシチュエーションあったなと思いつつも僕はベッドに移動し、膝枕をしてイータの頭を乗せた。
「……結構固い、ガンマやアルファ様みたいな柔らかさがない?」
「そりゃ男だからね、というかイータあの二人に膝枕してもらったの?」
「……前に寝心地のいい枕の研究のために七陰のみんなに膝枕してもらった。ガンマとアルファ様のは寝心地よかった、けどベータにしてもらったら柔らかすぎて首痛くなった」
「ふーん、ベータの膝枕はお気に召さなかったんだ?」
「……あれはもう枕じゃない、肉」
無表情で無感情なイータだが心なしか少しげんなりした顔をしている。
肉に例えられる膝枕ってどんなのだろう?
脳裏にベータの太ももが浮かぶがふと気になったことがある。
「あれ?他の三人はどうしたのさ?どうせなら全員にしてもらえばよかったんじゃない?」
「……デルタは膝枕してもらおうとしたけどじっとしてくれなくてダメだった。イプシロンにはすぐに逃げられた、ゼータにいたっては気づいたら消えてた」
「あー」
納得である。
落着きから遠くかけ離れたデルタが膝枕しながら大人しくできるはずが無いのだ。
イプシロンは胸だけじゃなく全身をスライムで盛ってベータばりのプロポーションを作ってるから研究者のイータに触られてバレるのを警戒して逃げたのだろう。
ゼータは気分じゃなかったとかかな?
「マスターの膝枕は適度に固くて寝心地がいい、ガンマやアルファ様に負けず劣らず」
「それはどうも。けど、それ二人に言っちゃ駄目だよ?」
男の膝枕と同等とか二人が聞いたら傷つきそうだ。
「ん、言わない。言ったらマスターに膝枕してもらったことで怒られる……」
「うん、賢明な判断だよ、それじゃあこっちの耳もマッサージから始めようか」
もう完全に僕の膝に頭を預けている体勢になっているイータはもぞもぞと動いて耳を上に向ける。
膝に乗ったイータの頭の重さを感じながら僕は耳かきを始めることにした。
ホットタオルでまずは窪みの周りを優しく撫でるように擦っていく。
逆の耳と一緒で結構汚れていたようで軽く擦るとポロッと耳垢が取れていくほどだ。
「おお~、こっちもけっこう溜まってるね~」
そう言いながら僕はくるくると円を描くようにして丹念に拭いていった。
すーっ、むぎゅっ!ぐりぐり~!
ちょっと強めに窪みの周りをなぞって耳のコリをほぐすように揉み込んでいく。
「ん……あぅ……
マスター、気持ち良い……。もっと強くても大丈夫……」
「はいはい、こんな感じ?」
少し力を込めて耳全体をグリグリと指圧していく。
こっちの耳もかなり凝ってるみたいだ。
ホットタオル越しにもコリコリとした感触が伝わってくる。
「……ちょうどいい力加減、やっぱりマスター上手……」
「そう?気に入ったなら良かったよ……?、イータ?」
不意にイータの反応がなくなったので顔を覗き込む。
するとイータはいつの間にか寝ていた。
寝息をたてて気持ちよさそうに寝ている。
僕の膝を枕にしてあどけない寝顔を浮かべて眠るイータを見つめる。
まだ耳掃除の途中だけど仕方無いか。
寝ているイータの耳をいじりながら僕はそう考えるのだった。
それにしても……
「結局バニー服から着替えなかったなこいつ」
そう、イータはマッサージチェアで出会ってからここで耳かきしてる間もバニー服のままだったのだ。
マッサージルームに来たら着替えると言う話だったが、着替える暇もなく僕に耳かきを頼んだのでバニー服のままだ。
「うーん、このまま誰かに見つかったらあらぬ誤解を受けそう、どうか誰も来ませんように……」
七陰の誰かに見つかったら確実に誤解される。
そうなっては困るので僕は祈る。
すーっ、すーっ
そんなことは知ったことかとばかりに僕の膝で眠るイータ。
起きてるときも表情の乏しいイータだが眠っている今はどこか気分良さそうに見える。
「ぐっすりだけどどんな夢見てるんだろ?僕を解剖する夢とかじゃなければいいんだけど……」
人の膝で熟睡するイータのほっぺたをつつきながら僕はため息をつくのであった。