海外ウマ娘は日本文化に心を奪われました   作:あーふぁ

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スレ「外国人の和んだ話。」を元に書いたもの。


4.タイキ、うどん屋で喜ぶ

 7月の終わり。トレセン学園は夏休みに入り、学生たちは学業から解放されて好きなように走ることが増える時期。

 気分が開放的になるウマ娘たちは門限をよく破るようになるため、学園のトレーナーや教官、職員たちが交代制で夜の街を見回ることになる。

 俺もそれをすることになり、自作した紙ハリセンを持っては門限破りやそれぞれのトレーナーたちの指示を守らないウマ娘たちの尻や背中を叩く。

 その対象にはタイキやタイキを夜のランニングに誘った、友人であるサイレンススズカやメジロドーベルなんかも入っている。

 静かな夜に、ハリセンの音が響くのはトレセン学園の風物詩だ。

 仕事を終え、日付が変わる頃に自宅へ戻ってパソコンを立ち上げるとグラスからメッセージが届いていた

 

グラス:カップ麺のおいしい食べ方はありますか?

マト :カップうどんなら10分の時間をおけば、麺がすべすべでおいしくなるとかそういう系?

 

 そう返事を返してから、学園関係での連絡事項が来てないのを確認してからシャワーを浴びる。

 20分ほどして、スーツから寝巻に着替えるとメッセージが戻ってきていた。

 

グラス:さっそくうどんを10分置いて食べたら、すべすべしておいしかったです!

マト :そっちの時間は深夜に近いだろ。食べたら体に悪いぞ

グラス:ふたくち食べてから、残りは妹に食べさせました

 

 ……まぁ、それならいいか。夜遅い時間にご飯を食べると太るからな。妹なら問題はないな。

 もったいないから捨てることもできず妹に強引に食べさせるグラスの姿が想像できてしまう。

 あの子はおしとやかで清楚な雰囲気はあるものの、その心に秘めたものは暴れん坊な気がする。仲がいい友人相手には気兼ねなく、無理を押し付けるというような。

 

マト :カップ麺を取り出して鍋で煮込んで食べるのもうまいぞ

 

 そうメッセージを送ってから寝る前にインスタントのノンカフェインホットコーヒーを作り、牛乳を混ぜてから時間をかけて飲む。

 寝る前に返事がないことを見てから、部屋の明かりを消して寝た。

 

 翌日のトレセン学園では担当ウマ娘であるタイキシャトル、エイシンフラッシュ。あとは担当でないものの、アイルランドの王族であるファインモーションのトレーニングを見る。

 ファインモーションとはカップ麺の関係で仲良くなってしまったが、まぁ深い話を思い出すのは後にしよう。

 今日はトレーニング以外にも大事なことをタイキに教えることがあるからだ。

 

 それはご飯についてだ。

 先日にファミレスへ連れて行って以来、タイキはよく通っているらしい。具体的には2週間毎日。

 それにサイレンススズカやメジロドーベル、マチカネフクキタルが付き合っているが、彼女たちのトレーナーからなんとかしてくれと言われた。

 タイキと一緒に行くことでたくさん食べるから体調管理がしづらいという苦情だ。

 時々ならいいが、毎日ともなると栄養管理には困ると言われて。

 

 俺も困ってはいるが、俺から教えたことだし強くは言えない。

 だから今日はファミレスよりヘルシーなご飯を出すうどん屋に連れていこうと思う。

 それでうどん屋が気に入れば、うどん屋へ通うようになりファミレスへ行くのよりもはいいだろう。

 放っておいてもお金がなくなって行かなくなるかもしれないが、2か月ぐらいは先になるだろうし。

 

 そもそもとして1度気に入ったら、そればかり食べるようになるのはタイキだけじゃなくアメリカ人の特徴だろうか。

 グラスもカップ麺ばかり食べているし。

 考えてみれば、担当ウマ娘でないアメリカウマ娘たちはその傾向が強い。

 他のトレーナーたちに出身国の違いによる食事の傾向を聞いておこうと思い、午前の練習が終わりだとウマ娘たちに伝える。

 練習が終わり、30分ほど経ってからタイキが学園のシャワーで汗を流したあとに合流場所である正門前へとやってくる

 正門近くに車を置いた俺は正門の壁に寄りかかり、日陰で涼んでいるとタイキは離れていてからも俺に両手で手を大きく振っては駆け足で走ってきた。

 

「トレーナーさん、おまたせしまシタッ!」

「練習後に時間がかかるくらい俺は気にしないよ」

「ノン! 時間がかかるごとにお店が混んでしまいマース!」

「あー、じゃあ行こうか」

「ハイ! トレーナーさんがオススメするお店、楽しみデス!」

 

 目を輝かせてキラキラの視線を俺に向けてくるのが少し辛い。

 前回のファミレスは相当気に入ったようで、今回もすごく期待しているようだ。

 だが、今回は和食だがどうなるかわからん。今いく店がきっかけでヘルシーな食事に興味を持ってもらえれば嬉しいんだが。

 

 トレセン学園から10分ほどの近さに着いたのはうどん屋のチェーン店だ。業界内最大手ということで人気が高いから安心できる。

 車がたくさんある駐車場に止め、降りたタイキの反応はどうにも悪い。

 店には高級感がそこまでないから、前回のファミレスと違って第一印象はいいと思うのに。

 木材の質感がある上品な店構えにうどんの品名が店の壁に書いてあるだけだ。

 

「ここ、高いお店デス?」

「いや安い店だよ。そもそも俺が高い店に連れてこないだろ」

「言われるとそうですネ。トレーナーさんは薄給ですから」

「よし、ドラッグストアに行って栄養補助食品を買おうか。あのショートブレッドのような硬いやつ」

「ノー! 謝りますから行きましょう、このうどん屋へ! Let's hurry up!」

 

 慌てて俺の手を引っ張り店へと向かうタイキに苦笑しながらついていく。

 うどん屋は行列ができていて、店の外でタイキと一緒に並ぶ。

 タイキは店の外からでもドアや窓越しに見える店内の様子を見て楽しんでいる。

 店内は調理をする場所が店の中心にあり、その周囲に客席があるという構造だ。

 

 製麺やゆでる工程を見れるのはタイキにとっては新鮮なはずだ。普通は料理する光景を眺めるのはあまりないだろうし。

 行列ができて並んでいても、うどんが作られる速度は速く、行列は進んでいく。

 

「すごくいい匂いがシマス! これ、何の匂いですカ?」

「あー……めんつゆ? いや、うどんのつゆだな。スープだ」

「Oh! 学食のとは違いますネ! うどんは見たことがあるだけですから、食べるのが楽しみデース!」

「お前、日本食にはまったく手を出してないのな。あ、うどんは何が食べたい?」

「わからないのでお任せしてマス」

 

 タイキの食べず嫌い、いや違うな。好奇心……は足りている。気に入れば同じものを集中して食べるから、まだうどんにまで行っていないだけか。

 偏食に近いのかと考えながら、店員さんにかけうどんの大をふたつ注文する。

 そうしてからタイキにお盆を持たせた。

 

「さて。タイキは食べたいてんぷらはあるか?」

「てんぷらは高いと聞きましたが、いいんですか?」

「アメリカと違って日本のは安いんだよ。えび天は190円で、いか天は170円だ」

「Oh……そんな値段で出せるなんて。ミラノ風ドリアより安いじゃないですカ!」

「あっちとはジャンルが違うだろ」

 

 店員さんからできあがったうどんを盆で受け取り、てんぷらが置いてある場所へと進んでいく。

 タイキは受け取ったうどんに感嘆の声をあげるが、俺が先に行ったことに気づくと慌てて近づいてくる。

 

「ほんとに値段が安いですネ」

 

 たくさん並べられているてんぷらを見て、感心するタイキ。

 あちこちに視線をやっているタイキをよそに、俺はてんぷら用の皿を取ってえび天といか天を乗せていく。

 

「タイキは気になっているのはあるか?」

「お肉はありますカ?」

「かしわ天っていう鶏肉だな」

 

 トングでかしわ天のふたつを皿によそい、ついでにかぼちゃやさつまいもの天ぷらをタイキのお盆に乗せる。

 てんぷらを取ったあとはそして他の客に邪魔にならないよう先へと進む。

 俺とタイキ、ふたりぶんの会計をするがこれでも2000円にはならない。この安さにはお世話になっている。

 学食だとウマ娘に混ざって食べるのは辛いことがよくあるし。食堂にいると海外ウマ娘たちが俺へとレースの助言を求め、あわよくば担当になろうとアピールしてくるのが面倒だから。

 ただ純粋に俺と話をしたい子もいるのは嬉しいが、面倒のほうが上をいく。

 会計を終えてテーブルに行く途中、飲みものの水と薬味を好きに取れる場所の前を通りかかる、

 

「次は薬味だな。ネギとてんかすは好きに取れる」

「これ、お金はどれくらいかかるんですかネ」

「無料」

「無料? これが!? 採算は取れるんデスカ!?」

 

 この店というよりも日本人すげーっていうふうに驚きはじめるタイキ。

 ネギやてんかすをうどんに乗せながら、アメリカだと無料サービスのものはどれくらいあるんだと気になる。

 グラスとの話題作りにも調べておくか。

 タイキは今回が初めてだから、と味が変わらないよう何も乗せなかった。

 うどんへの準備が終わるとカウンター席の空いているところへ行き、ふたり並んで座る。

 

「それじゃあ食べようか」

 

 そう言って俺は自分が選んだえび天とイカ天をうどんへ乗せる。

 カリカリとした衣はうどんのつゆへ沈めると、水分を吸ってしんなりとなる。

 てんぷらを箸で持ち、数度沈めていると横から視線を感じた。

 

「どうした、タイキ」

「てんぷらはうどんに入れればいいんデスカ」

「普通に食べてもいいし、俺のようにしてもいいし。好みだね。はじめてなら別々に食べてもいいと思うけど。野菜のてんぷらはいいものだよ」

 

 俺がそういうとタイキは箸を持つと、てんぷらをじっと見つめてからさつまいもののてんぷらを取る。

 しょうゆも何もかけずにひとくち食べ、時間をかけて食べていく

 

「……トレーナーさん」

「あー、口に合わなかったか」

「Delicious!!!!!!」

 

 目を輝かせ、大声を出したタイキに店内にいるお客さんたちの目が集まった。

 でもお客さんたちはおいしそうに食べているタイキを見てほほえましく見守っている。

 

「なんですか、これ!? ふかしたさつまいもは食べたことがありましたが、ふんわりとしていて別物ですヨ!? 油で揚げているのに油っぽさがないデース!

「しょうゆをかけてもおいしいよ」

「しょうゆ? しょっぱくなるだけでおいしなるとは思えませんネー」

 

 席に置いてあるしょうゆボトルを手に取り、しょうゆを4滴たらしたあとにまたさつまいもを食べるタイキ。

 

「おぉー! これ、こんなにおいしいだなんて! こんなにおいしいとわかっていたら食堂でドリアばかり食べるんじゃなかったデス!

 

 タイキが日本食を好んでいないから、食事の調整は洋食ばかりだった。だとしても厳しく管理しているわけじゃないから、多く食べてもいいように余裕は作っていた。

 おそらく初めてのてんぷらを食べ、おいしいとしか言わないタイキを見ていると嬉しくなる。

 

「こんなにおいしいならアメリカで高級品扱いになるわけですネー……」

 

 すごく感心しながら、今度はかしわ天を食べては感激している。

 それを見ながら俺は自分のうどんを食べていく。

 

「この鶏肉の天ぷら! 味がないと思ったんですが、すっごくおいしいし、焼くのと違ってお肉が固くないだなんて! もうすごくすごいデース。

 もうお肉大好きです。毎日これを食べましょう、トレーナー!」

「毎日てんぷらなんて嫌だよ、俺。そんなことをしたら太っちゃう」

「一緒に走りまショウ!」

 

 料理の感想に語彙力が下がってしまっているタイキだが、ものすごくてんぷらに感動したらしい。

 だけど毎日はやめてくれ。日本食はヘルシーなのが多いんだが、てんぷらは別だ。タイキのことだからあと1か月くらいはてんぷらを食べ続けてしまいそうだ。

 

「てんぷらもいいけど、うどんを食べてくれ」

「ワタシ、てんぷらだけあればいいですケド」

「ダメ。バランスが大事だし、嫌いなら嫌いでいいから食べてみて」

「トレーナーさんがそう言うのなら……Wow!! こののどごしツルーンでもちもちした麺! あぁ、なんですか、これ! スパゲティとは全然違いますヨ!?」

 

 スパゲティとうどんは小麦粉でできているけど、食感がすごく違うのは驚きだよな。同じ材料なんだから日本でもスパゲティが作られていてもおかしくないよなぁと思ったことはある。その逆もだ。

 1か月ぶりに食べるうどんをおいしく食べているが、タイキは一口食べるごとに感激の声を出している。

 今はうどんのつゆについて語り始めている。

 それを聞きながら食べているが、タイキの箸の使い方は悪くない。ドーベルに厳しく教えられたと言っていたから、その成果が発揮されている。

 今度バーベキューをやるときはドーベルに肉を多めに焼いてやろう。

 タイキの成長に喜び、ドーベルへ感謝の心を持つ。

 

 タイキはうどんを食べるのに20分ほどかけ、満足してから一緒に店へと出る。

 今日以降、タイキの外食や食堂で食べるメニューにうどんが増えた。

 前回と同じように、しばらくの間は集中して食べるのは変わらない。




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