現代日本において深澄真という日本人の高校生が居た。短めの黒髪だが頂点に所謂アホ毛を生やしていて平坦な顔つきである。
しかし、日本人男性の平均的身長の体格ながら鍛え抜かれているので筋肉は相当に引き締まっている。
家の教育方針によるもので三つ年上の姉である雪子と二つ下の真理と共に家事全般を叩き込まれると共に格闘技系の習い事をさせられた結果だ。
特に真は生まれつき超人的な身体能力と運動神経を持っていたからか最初に習った弓道の先生を通じて色んな古流武術の先生を紹介され、技術を叩き込まれた事で弓術から居合、空手等々何でもできるようにもなった。
因みにその中で一番得意なのと真自身気に入ったのは弓道で高校も弓道部に入った。あまりの技術に弓道の先生と弓道部の先生から試合に出ないのも含めて色々と制限は設けられたが……。
ともかく、高校生活を送っていた真だが夏休み近くの頃、一つの転機が起きた。
「先輩、ずっと憧れていました。好きです、私と付き合ってください!!」
部員たちの練習が終わった後、本気で練習をしていた真だが声をかけられる。その声の主は黒髪のサイドテールで身長は175cm以上と真よりも背丈が高く、スタイルも抜群で十分に美少女な容姿の後輩、長谷川温深であった。
「……い、いきなり言われても困る……その、今まで誰かに告白される事も無ければ、付き合う事を考えたりもしなかったからな。だから、まずは友達としてって事で頼む」
「……はい、それじゃあ夏休みは友達としていっぱい遊びましょう」
「ああ」
こうして真は温深と友達から関係を始め、彼氏と彼女の関係になりながら彼女を出来る限り、幸せにしていこうと誓いながら日々を過ごしていたのだが……。
『そういう事で真殿には悪いが、異世界に行ってもらわなければならない』
ある日……不思議な空間で真は神秘的な雰囲気とやはり、神秘的で美しい見た目の男にして日本における神様の一柱、月読と出会い異世界転移をしなければならないと言われた。
なんでも真の両親は実は異世界の者でその異世界の女神との取引で今の世界に来たのだとか。そして取引というのが『いつか大切なものを一つ捧げよ』というものである。
なのでその取引の対象となるのが真、あるいは真の姉である雪子、真の妹である真理であるとの事。真が断れば雪子か真理のどちらかが行かねばならないとの事だった。
「……分かりました。僕が行きます」
『本当にすまない』
そうして真は異世界に転移する事を了承し、せめてもと月読は声を記録して伝えたり、夢枕を使って両親に姉妹、彼女である温深へ伝言する事を提案したが、真は手紙だけ残す事にした。
流石に温深に対する手紙を書くのは時間がかかっていたが……。
因みに今は異世界の女神が呼ぶのを待っているのだが、女神が異世界へと転移させる前に『これくらいの役得はな』と月読から力を授けられた。
更に言えば地球というのは外から常に圧力がかけられているので人間なら誰もが持っている魔力が封じられている状態、肉体にも超重力下にいるような極めて強い負荷がかかっているため、異世界に行けば地球の極限的環境から解放される事により魔力は使えるし、身体能力や機能も凄まじい程に上昇するとの事だ。
『んなっ!? 私に挨拶もせずにつれていくのか、あの馬鹿娘はっ!!』
ともかく、そうして女神の呼び出しを待っていたがなんと月読にすら挨拶せず、真は強制的な召喚をされ……。
「無理、無理よあり得ないわ。何だってあの二人からこんな不細工が生まれるのかしら。娘二人は合格なのに……」
女神の間とも言うべき場所で真の姿を見た女神は速攻で拒絶した。
「それはすみませんでした」
真はやけくそで顔を見せないように敢えてひれ伏してやった。
「まったく……あんたの召喚に乗じてちゃんと私好みの子を二人確保しといて良かったわ」
「じゃあ、それに免じて異世界での人々との会話や文字の読み書きが出来るくらいの慈悲はくれませんでしょうか」
「……はぁ~~、魔族や魔物と話せるようにヒューマン以外の言葉を理解できるようにはしてあげる。ただし異世界の人間、つまりは私のヒューマンに近づいたりしないでね。低位のオークやゴブリンに交じって暮らすのよ。他の二人の邪魔をしないようにね。じゃあ、行け」
そうして女神は真を自分の間から落とし……。
「くたばりやがれ、この糞女神ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
間際、怨嗟を込めた咆哮と中指を立てながら真は落下をしていった。
『真殿、このような事態だ。もう遠慮はいらぬ。月読の名において許す。汝、深澄真よ。新たなる世界での自由を認める。好きにせよ』
月読は真の異世界への落下速度を緩めながら、女神が強引に転移させた二人の身を気に掛ける事を頼みながら、異世界での自由行動を許したのであった。
異世界に
降りたら そこは
荒野かな
――深澄真 心の川柳――
真は異世界の荒野に月読のお陰で無事、降り立つ。
「待っていろよ糞女神……必ずお前を……」
女神への復讐を誓いながら、真は荒野を歩き出したのであった……。