深澄真が女神により、『最果ての荒野』に放逐されて二か月ちょっとの月日が経過した。
現在、彼は巴に澪、トアと彼女の妹であるリノンに、アルケミーマイスターのハザル、ルイザ、ラニーナとツィーゲの地で屋敷を買う事で共に暮らしながら冒険者として活動している。
裏では元ツィーゲの冒険者筆頭であったライムを雇い、密偵のようにして自分とは別に地球からの異世界に女神により、転移させられた二人の男女の情報を探らせるなどもしている。
真が感謝し、尊敬し、信仰している恩神こと月読から二人の事(異世界では勇者となっている)を気に掛けてほしいと頼まれているからだ。
更にリミア王国で活動している勇者は自分と同じ高校で先輩である音無響であった事から、特に彼女の動向に気を配ったりもしていた。
冒険者の活動としてはツィーゲから荒野まで広範囲に仕事を受けながら励んでおり、更に荒野攻略の前線基地とも言えるベース、『絶野』でやっていたようにほかの冒険者の仕事を手伝ってもいる。そもそも誤解からツィーゲで一番の大商会である『レンブラント商会』と敵対していた冒険者のそれを解消しているのもあって、冒険者達との仲は良好だ。
冒険者としての活動をする一方で亜空で製造した希少物や薬品、武具などを『レンブラント商会』を通して売らせていたり、相場が崩れないように『レンブラント商会』と相談して荒野の魔物から剥ぎ取った素材を市場で売ったりもして稼いでいた。
そんな日々の中、荒野全域の把握のためもあってオルトに乗って駆けまわっていると……。
「蟹にしても随分とデカいな」
戦闘用装備としてエルダードワーフが製造した一品にして相当な量の魔力を要求する代わりにあらゆる攻撃、あらゆる属性の攻撃魔術に耐性があり、更に攻撃を受ける度にその攻撃に対する耐性を身に着けるフルフェイスの兜に全身鎧を身に着けた真は、この世界における『ガインクラブ』という魔物と遭遇した。
只、ギルドカードの魔物図鑑で閲覧できるものより遥かに巨大であった。
「まあ、良い。相手をしてやるから来い」
真がガインクラブを手招きするとガインクラブは真に向かっていき、鋏を振り下ろした。
「うん、やっぱりエルダードワーフは良い仕事をする」
「!?」
ガインクラブの攻撃は真にまったく通用しないどころか、真の兜に触れたガインクラブの鋏が砕け散る。
「へぇ、地属性の精霊を何体か食べている……成程、何者かが実験したのか。もっとも成果は失敗だったんだろうけど」
『解析能力』を付与した界によってガインクラブの全てを解析し、把握してみせた。
「次はこっちの番だ」
そして、そう告げると強化の魔法と界を使用しながら瞬時にガインクラブに接近しながら拳撃と蹴撃の暴嵐の如き乱打を叩き込み、絶命させた。
「さて、亜空に持っていくか」
そうして真はガインクラブの死体とオルト共に霧の門を通って亜空へと行く。
「あ、お帰りなさいませ若様」
「ただいま、
亜空に行くと長い金髪に肉付きの良いグラマースタイルにして恰好は巫女を思わせる服装をした清楚な雰囲気の美女が出迎える。彼女こそはとある特殊な方法を用いて巴や澪のように支配の契約を結んで人間の姿になったハイランドオークのエマこと凪である。
「うむ、ふちゅ、くちゅ……若様の方こそありがとうございます」
真は凪に自分がいない時に亜空での事を管轄する役割を与えている。そんな彼女を労うが如く、口づけし凪は満足そうに笑みを浮かべて言う。
真は巴に澪を始め、亜空の皆へとガインクラブを大きな鍋で煮る事で蟹料理を食べるのであった。
因みに真は度々、数時間は亜空を訪れて開拓や調査、真用の邸宅兼集会所を建設、希少物に薬、武具の製造をしている者達の報告や相談を聞いているし、一日や二日は亜空に滞在できるようにもしていた。
巴に澪も亜空に戻っては真の記憶から使える要素を抜き出すなどしているがその傍らで真の記憶から巴は時代劇やその要素、澪は真が父親や親友から見せられたアニメと特撮の要素を鑑賞して楽しんだりしている。
『美味しい』
巨大な分、中身もたっぷり詰まっていたガインクラブの味に舌鼓を打って笑顔を浮かべる皆。
「(後でこのガインクラブのような奴がいないか、確認しないとな)」
真は食事をしながら、ガインクラブに妖精を食わせて強化の実験をしたなら他の魔物でも同様の実験をやっている可能性は高いのでそうした物を重点的に探そうと思考するのであった……。